見出し画像

リチウム価格が9倍に上昇、米国の海外鉱物資源への依存が浮き彫りに!

1.はじめに

最近、中国のコンサルから、「EVに使うリチウム塩の価格が高騰している。昨年、80K RMBであった炭酸リチウムの値段が、今年は400K RMBと5倍になった」という話を聞いていました。

ここでご紹介するのは、米国で発行された白書に記載があった内容です。
「コバルト、リチウム、ニッケル、クロム、亜鉛に対する需要が、埋蔵量の100%以上になる可能性」を議論しています。

「対岸の火事」と眺めていては、不味い状況だと思います。

 https://www.theepochtimes.com/with-lithium-prices-up-ninefold-report-underscores-u-s-dependence-on-foreign-minerals_4397391.html

 

2.鉱物の価格上昇

https://cresforum.org/wp-content/uploads/2022/03/CRES_WhitePager_CriticalMinerals_03212022_v1.pdf

CRES (Citizens for Responsible Energy Solutions)フォーラムが発行したレポートには、脱炭素に伴うエネルギー転換について鉱物の供給に関する課題があることが示されている。EVの需要増に伴い、使用される材料コストが上昇する中、このレポートは、政策立案者にタイムリーな警告を与えている。

The Epoch Times(以下同様)

 リチウム、炭酸リチウム、水酸化リチウムの基準価格は、ここ数カ月で急速に上昇している。2020年9月に1トン当たりわずか115.80ドルで推移していたリチウムの基準価格は、2022年3月には1トン当たり1045.90ドルにまで急騰した。9倍以上の上昇である。

 北米金属価格専門家は、結果としてEVのコストが上昇する可能性が高いと述べている。2021年11月の米国における新型電気自動車の推定平均取引価格は56,437ドルであった。

 また、「風力タービンに使われるレアアース金属ネオジムなど、他の主要鉱物の価格もここ数カ月、数年で急激に上昇する傾向にある。」

 「EVのコストアップに直接関係する原材料はリチウムだけではないので、今後数カ月間で想定されるコストアップのうち、リチウムに起因するものを正確に解析することは難しい。ニッケル、ステンレス、半導体、人件費なども近年と比べて上昇している。家電製品の価格も上昇する可能性がある」と。

 この報告書は、CRESフォーラムのロセッティ氏とバンク氏が執筆したもので、「100%再生可能エネルギーまたはクリーンエネルギーの目標達成に必要な鉱物資源について、疑問を呈する学者が増えてきている」と結んでいる。

3.鉱物と安全保障

この文書では、国際エネルギー機関(IEA)の報告書を引用して、EVは従来の内燃機関を使用する自動車に比べて、6倍の鉱物資源を消費すると指摘している。

 また、再生可能エネルギーは、炭化水素を使用する代替エネルギーに比べて、より多くの鉱物を消費します。例えば、風力発電は天然ガス発電に比べ、約9倍の鉱物を必要とするという。

 「中国は、複数の重要な鉱物の主要供給国であり、今後もそうである可能性が高い。中国が供給していない鉱物(コバルトなど)の場合、中国は国有企業を通じて精製能力をほぼ独占的に支配している」とCRESフォーラムの分析では述べられている。

 「政策立案者は、温室効果ガス排出削減のために鉱物資源を多く含む製品に大きく依存する政策が、エネルギー安全保障に与える影響も理解しなければならない。

 国家安全保障上のリスクを生むだけでなく、現状では、強制労働や倫理的に問題のある労働力を使うことで、米国は罪を犯していることになる。

 ソーラーパネルに欠かせないポリシリコンは、その多くが中国の新疆ウイグル自治区で生産され、少数民族であるウイグル族の奴隷労働によって成り立っているようだ。

 同様に、リチウムイオン電池に含まれるコバルトの多くは、コンゴ民主共和国(DRC)の児童労働によって入手されている。

 CRESフォーラムの報告書は、「国家環境政策法(NEPA)が、炭化水素の生産以上に、再生可能エネルギー用の鉱物の国内採掘を妨げている」と主張している。

 「DOE NEPA環境アセスメントおよび環境影響評価書の42%は、化石燃料の15%に比べ、クリーンエネルギー、送電、または保全を対象とした取り組みである」と、このレポートの共著者の一人、ロセッティ氏は分析している。

 この路線に沿った主要なプロジェクト案であるネバダ州ハンボルト郡のThacker Pass(サッカー・パス)・リチウム鉱山は、2021年1月にNEPAに基づく決定記録(Record of Decision)を受け取った。ネバダ州環境保護局は今年初め、それに対して採掘、水質、大気に関する許可を出した。

 しかし、この鉱山は論争を引き起こし続けており、ショショーネ・パイユートのゲイリー・マッキニーはReno Gazette Journal紙に "我々の祖先の埋葬地は鉱山のための場所ではない "と書いている。

 https://www.rgj.com/story/opinion/voices/2022/03/21/opinion-our-ancestors-burial-site-no-place-mine-gary-mckinney/7121542001/

 サッカー・パスの開発元であるカナダのリチウム/・アメリカズ社は、中国のGanfeng Lithium社(江西赣锋锂业股份有限公司)とビジネスを展開しているが、その中には、アルゼンチンで行われているCauchari-Olarozかん水炭酸リチウムプロジェクトの共同所有なども含まれている。

 リチウム・アメリカズ社のウェブサイトによると、同プロジェクトの46.7%を赣锋リチウムが、44.8%をリチウム・アメリカズ社が所有している。残りの8.5%は、アルゼンチン国営の Jujuy Energía y Minería Sociedad del Estado (JEMSE)社が所有している。

 CRESフォーラムのエネルギー転換に関する3つの研究の分析によると、サッカー・パスなどの新しい国内鉱山が稼働したとしても、コバルト、リチウム、ニッケル、クロム、亜鉛など複数の主要鉱物の需要が、確認埋蔵量を上回る可能性があるとされている。

 「つまり、既存の技術によって、クリーンエネルギーへの完全移行を達成するために必要な、潜在的な採掘量は非常に大きく、これらの研究で試算されたニーズを満たすだけの鉱物を採掘することが経済的に可能かどうかは不明である」と報告書は述べている。

 2月、米国バイデン大統領は、リチウム、レアアース、コバルト、その他の重要鉱物の中国への依存を減らすことを目的とした一連の新しい投資に注意を促した。

 これには、カリフォルニア州マウンテン・パスにある国内唯一のレアアース鉱山の所有者であるMPマテリアルズ社が運営する、重希土類元素分離施設に対する国防総省からの3,500万ドルが含まれている。

 MPマテリアルは、中国のShenghe Resources(盛和資源)社がその一部を所有している。 「中国政府の提案と中国のレアアース業界の特徴として、盛和資源は株式の混合所有している」と、同社のウェブサイトには記載されており、同社が国家によって一部所有されていることが示されている。

4.CRESレポートの提言

 CRESフォーラムの報告書では、「炭素回収の優れたアプローチや、EV以外の従来型自動車用の低炭素燃料の開発など、技術的なブレークスルーによって、記載されている課題を軽減することができる」としている。

 また、非倫理的な労働を行う企業や国に制裁を加えるよう米国に要請しており、こうした鉱物に依存しすぎる前に、こうした動きを迅速に行う必要があると主張している。

 「大消費市場である米国は、非倫理的な供給者の市場参入を拒否することによって変化をもたらすことができる、最適な立場にある」と述べている。

いいなと思ったら応援しよう!