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カナダのトップ銀行がオイルサンド生産への融資を拡大
1.オイルサンドへの銀行融資の現状
世界的なエネルギー不足の中、カナダの 5大銀行が昨年、国内のオイルサンド生産と関連プロジェクトへの資金供給を 2倍の 168億ドルに増やしたことが、4月11日付のフィナンシャル・タイムズの報道で明らかになった。
カナダの大手 5行は昨年、国連の「ネット・ゼロ・バンキング同盟」に参加し、業務や投資ポートフォリオに環境に配慮した政策を導入して、「2050年までに温室効果ガスの排出ゼロ」に賛成した。それにもかかわらず、このような事態を招いている。
オイルサンドはカナダ経済の大きな部分を占めており、国内のエネルギー生産の大部分を占めるアルバータ州を中心に存在している。
FTに報告書を送った環境保護団体の連合によると、「カナダロイヤル銀行(RBC)、スコシアバンク、トロント・ドミニオン銀行(TD)、モントリオール銀行(BMO)、カナダ帝国商業銀行(CIB)などカナダの大手金融機関は、オイルサンド生産企業上位30社とオイルサンドの主要パイプライン企業6社に対する2021年の融資額を90億ドル近く増額し、資金調達を強化した。報告書にある世界の60の銀行は、カナダのオイルサンド・プロジェクトへの融資を2020年から2021年にかけて51%引き上げ、233億ドルとし、2021年だけで世界の化石燃料融資は7420億ドルにものぼるとしている」と述べている。
https://www.bankingonclimatechaos.org/wp-content/themes/bocc-2021/inc/bcc-data-2022/BOCC_2022_vSPREAD.pdf
RBC、スコシアバンク、TDは、昨年のオイルサンド・ファイナンスにおける12大投資家の1つであり、環境保護団体の報告書は、「上記のトリオにモントリオール銀行とCIBCを加えた3社は、2020年から2021年にかけて化石燃料への融資を増やした」と述べている。
2.融資急増の背景
世界の主要燃料源の一つであるオイルサンドへの投資が増加しているのは、新しい技術の研究開発が続けられているにもかかわらず、原子力以外の再生可能エネルギー技術による出力がエネルギー不足を招いているからである。
その一方、国連が主導する破滅的な気候変動対策としての火力発電の抑制によって、銀行業界には環境活動家や投資家などによる圧力が強まっている。
FTによると、RBC、CIBC、スコシアバンクは先週、より厳しい気候政策を求める株主提案を退け、TDとBMOも今週の年次総会で同様の抗議に直面したという。
RBCは「ネット・ゼロ達成のコミットメントを出しているが、カナダのエネルギー供給を確保し、経済成長を守る責任ある道を歩みたい」と述べている。
スコシアバンクは、「顧客の移行を支援するために現在も取り組んでいる。この報告書には、融資がどのように利用されているか、融資先の持続可能性や移行計画を考慮していないため、欠陥がある」と指摘した。
パリ気候協定以降、オイルサンドの重要なグローバル金融機関 6社のうち5社がカナダである。
温室効果ガス排出量報告書には以下の記載がある。
・2016年から2021年にかけ、TDはオイルサンドに合計274億5400万ドルを融資しており、2021年だけで54億2400万ドルを融資している。
・RBCは、2021年の54億4500万ドルを含む274億4500万ドルをオイルサンド・プロジェクトに注いだ。
・CIBCも、136億8200万ドルを融資した。
・アメリカのJPモルガン・チェースは、オイルサンドへの融資額上位5社のうちのもう1社で、108億7900万ドルだった。
3.カナダのエネルギー転換を主導するオイルサンド
2020年、カナダビジネスカウンシルは、「カナダのオイルサンドは、エネルギー転換をリードするのに最適な位置にある」と述べている。
https://thebusinesscouncil.ca/publication/canadas-oil-sands-are-best-positioned-to-lead-the-energy-transformation/
パンデミック後の経済状況や、ウクライナ戦争で世界的にエネルギー供給が滞る中、オイルサンドは当分の間、エネルギーニーズを満たす有利な投資先であり続けそうだ。