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英レポート「アンモニア混焼は脱炭素の決め手にはならず」

サステナブル・ビジネス・マガジンのalternaの記事に、「アンモニア石炭混焼やCO2の地下貯蔵は脱炭素の決め手にはならず」という、英国気候シンクタンクのレポートを報じていました。

英国気候シンクタンクのレポート

https://news.yahoo.co.jp/articles/6d61f938fd90f2f040057c86e6e25dc6afde4a61

要約すると、日本が「ゼロエミッション火力」の名のもとに進める石炭新技術は、脱炭素にほとんど貢献しない。石炭火力のアンモニア混焼、IGCC(石炭ガス化複合発電)、 CCS(二酸化炭素回収貯留)の3つを検証し、これらの技術に固執すれば「電力会社の株主と日本社会が大きな代償を払う可能性がある」と警鐘を鳴らした。

このレポートの主な論点は、「20%混焼には全世界のアンモニア市場に匹敵する量」であるという点です。以下のように説明しています。

天然ガスから製造したアンモニア(グレー・アンモニア)を使用しても燃料コストは石炭の約2倍(約50米ドル/MWh)、CO2排出量は最新の天然ガス火力の約2倍の600グラム/kWhになる。アンモニアは燃焼時にCO2を出さないが、NOx(窒素酸化物)を出す。PM2.5が出るリスクもある。
20%混焼に必要なアンモニア量は毎年2000~2500万トンであり、2020年の全世界のアンモニア市場規模に匹敵する。これらの原料として化石燃料を消費し続けることは、脱炭素をいたずらに遅らせるだけだ。

アンモニア混焼については、下記のNoteの中でも述べていることですが、新鮮味のない指摘です。日本の関係者は、ご存知の事だと思います。

https://note.com/yosh_2100/n/ncdaa97d68f27

アンモニア需給の課題

Note記事でも述べたように、技術的に解決しても、どこで製造し、どこから運んでくるのかという大きな課題が残っています。

一つの方法は、米国の安価なシェールガスを原料にアンモニアを製造し、液化アンモニアとして運搬して来ることです。また、中国で遊休状態にあるアンモニア製造設備を使ってアンモニアを製造する方法もあります。原料は石炭と天然ガスの2ケースで、北西部の国内炭、あるいは米国などからの輸入LNG(製造拠点は海に近い沿岸地)を使うという場合です。

そもそも、アンモニアを燃料として使おうとすることに対しては、基本的な問題点が指摘されています。

世界的にアンモニアは肥料としての用途が最大です。アンモニアとして利用したり、CO2と反応させて尿素を製造し肥料として販売したりしています。2NH3 + CO2 → NH2CONH2 + H2O

肥料で利用されているアンモニア、これは食糧問題とも係わっているため、燃料転用については批判的な意見が多いのです。それならばと、燃料専用にアンモニア製造プラントを建設するのか、その可能性、そうした是非、リスクの問題が残ります。

その他の課題

いくつかの課題が述べられています。例えば、CCS(二酸化炭素回収貯留)貯留地が10年で満杯になるという点です。CO2を回収し地中に貯留するCCSについては、最大の問題点として貯留キャパシティの不足を挙げています。

地球環境産業技術研究機構(RITE)によると、日本の潜在的なCO2貯留能力は11.3ギガトン。石炭火力でCCSを使えば、国内貯留地は10年で一杯になってしまうと警鐘を鳴らているそうです。

 回収にかかるコストについて、経済産業省の試算である4000円/t-CO2というに疑問を呈しており、これには、追加燃料費、ライセンス、その他プロジェクト開発にともなう追加費用などの「隠れたコスト」を一切考慮していない。これらを含めると2倍以上になる可能性もあるという、見解を述べています。

さらに、石炭をガス化して火力発電に使用するIGCCは、21年4月に福島・勿来(なこそ)で営業運転が始まりました。「クリーン・コール・テクノロジー」として期待を集め、最新の石炭火力と比較してCO2排出量を15%削減できるという。しかしそれでも、アンモニア混焼と同様に排出量は最新の天然ガス火力の約2倍となる。

まとめ

英国シンクタンクのレポートや議論には「ゼロエミッション」という大前提があります。石炭が悪玉として決めつけられ、天然ガスはCO2排出量が石炭の半分だということで善玉扱いされています。「ゼロエミッション」という以上、早晩、天然ガスも悪玉扱い、利用も容認されない事態になるのでしょうか?

現在、ヨーロッパでは風が吹かない日々が続いており、風力発電が働かず、急場しのぎで天然ガスの需要が拡大しています。即戦力である石炭利用は、「ゼロエミッション」=石炭が悪玉というドグマを掲げているため、できないのでしょう?そのせいでガス価格が急騰したため、家庭での使用も抑制されており、寒い冬を過ごしていると聞いています。

「善か悪か」という西洋型の二分法では解決しない課題でしょう。環境原理主義には困ったものです。


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