#27 楽園との別れ
オリエンタルなレストランでランチ
ドイツ一人旅、実質的な最終日、私は前日に引き続きベルリンのサウナでとろけるような時間を過ごしていた。
ランチは前日と同じく、施設内のレストランで。前日食べようか迷ったCHIKEN TERIYAKIを注文。くれぐれも申し上げておきたいのだが、私は海外旅行の最中に和食が恋しくなって現地の和食料理店に行ってしまうような人間ではない。どこに行っても徹頭徹尾、現地の味を食べて帰りたいと思っている。しかし、ここのCHIKEN TERIYAKIは注文せずにはいられなかったのだ。というのもメニューを見ると……
CHIKEN TERIYAKI with fried soy-me-noodles, okra, sweet pepper, carrot, coriander and peanut
何やら不穏な空気を感じないだろうか。特に後半の畳みかけるようなアジア感。これは謎解釈の照り焼きチキンである可能性が高い。前日食べたメロンとアボカドのサラダも今まで食べたことのない味で、よくわからないけどなんかおいしい!という不思議な体験をしたので、チキンにも期待せずにはいられない。
Mezzo Mixを飲んでみた
ドリンクはこれまた初めて聞く「Mezzo Mix」にしてみた。「氷とオレンジはいりますか?」と聞かれたので、オレンジ?ん??と思ったけど、Yesと答えておく。
しばらくするとMezzo Mixが到着。あ、コーラっぽい見た目。飲んでみると「きつくないコーラ」といった感じで飲みやすくておいしい。ドイツはコーヒーもまろやかだし、全体的にマイルドなものが好きなのかも。
調べてみたらコカ・コーラ社が作っている「コーラがオレンジにキスをした」飲み物らしい。あーーー、だからオレンジがついてきたのか。そしてあのオレンジの風味はMezzo Mixそのものの風味だったのか!
CHIKEN TERIYAKIの正体
そうこうしているうちに、CHIKEN TERIYAKIが運ばれてきた。
ここで私のメモを見ていただこう。
期待通り、謎しかない。
ソースの部分はベースがココナッツミルクでグリーンカレーのような味付け。そこに胸肉のグリルと生のニンジン、パプリカ、それにオクラ、カシューナッツ、もやしなどがのっている。そんなこんなと卵麺を絡めて食べる。
メモの続きには「すごーい! わけわからーん! でもなんか、おいしーい!」と記してある。
ともあれこれを照り焼きチキンだと思っている人が日本に来て照り焼きチキンを食べたらひっくり返るだろうな。
洗練されているということ
食後、暖炉のある部屋FIRESIDEでのんびり。暖炉の火をぼーっと見つめながら、「暖炉いいなー」「暖炉のある家とかちょっと憧れちゃうなー」などと思っていると、ん?違和感が…… よく見るとこれ、燃えてるの、薪じゃなくて、組まれた薪の後ろにある燃料やん! ということは、たぶんこの薪、木じゃないやん!
この施設の本当にすごいところは、ナチュラルな雰囲気出しながらもめちゃくちゃ人の手が行き届いているところ。
施設内はとにかく清潔。どんな素材を使ってどんな掃除をしたらこれだけきれいになるのか不思議なくらい、汚れもぬめりも全くない。
プールの水は常に少しずつあふれていて、表面にゴミが浮いているということもない。
そもそも、内装には観葉植物の類が使われていない。
理想的だ。
来ているお客さんもみんな、ここにふさわしく、ゆったり落ち着いていて静かだ。がさつで騒がしい人は一人もいない。
ああ、日本にもこんな場所があればいいのに。
その後も何度かアウフグースを受けてリラクゼーションルームのウォーターベッドでうとうとしながら考え直した。日本にこんな場所があったらきっとだめになる。天国のようでいて、地獄の入口かもしれない。