現役採用担当エンジニアが2020年の未経験エンジニア転職市場を振り返る
こんにちは!よーすけ(@yosapro)と申します。
人材マッチング系サービス開発を行うエンジニアです。Ruby on Rails と Vue.js をよく書きます。2020年から開発の傍らWantedly採用の中心メンバーとして
・運用ルール策定
・プロフィールチェック
・ポートフォリオチェック
・応募者とのメッセージやり取り
・開発メンバーとのスケジュール調整
・面談
・面接
・人事部へのフィードバック
と幅広く担当いたしました。未経験者には比較的人気の高いRailsの自社開発というジャンルに該当する企業なので、毎日それなりの応募が来ています。
また、SNSやオンラインコミュニティにて、他の企業の採用担当者様や転職活動を実際にされている方の生の声を様々お聞きし、自身の経験も踏まえて2020年の未経験エンジニア転職の状況と、プログラミングスクールについてお伝えしていこうと思います。
注意点
・とある企業の1人の採用担当の話です。全てを鵜呑みにしないでください。
・Web業界を対象としていますので、SIer業界は考慮していません。予めご了承ください。
・最大手プログラミングスクールを中心とした話題が多くなりますが、母数が多くスクール卒業生の代表的存在であることと、どのスクールでもそれほど大差はないので、スクール全体を主語とした文章になっている箇所があります。予めご了承ください。
■結論: 未経験転職最難関の年■
Web系エンジニアへの憧れは年々増加していましたが、2020年は特に急増し、未経験者は供給過多で転職自体が非常に難しくなった年であると言えます。
・今までであれば30社程度の応募で複数社から内定が出てもおかしくないレベルの方が、数百社応募してやっと内定が出る年に
・自社開発企業から内定がもらえた方でもWantedly返信率が10%未満
・SES系企業でさえ未経験採用を縮小 / 停止している
これらのことからも2020年の未経験転職の難しさが伺えると思います。毎週何百人という未経験者が転職市場に追加参入するにもかかわらず、それと同じ数だけ転職に成功した方はいるのか。残念ながら答えはNoです。あまり表には見えてきていないですが、なかなか転職できずに別の道を模索する方も多くいらっしゃったのではないでしょうか。
■原因■
2020年に未経験転職がここまで難しくなった原因を求職者側と企業側の両方から探っていきます。
・求職者側→志望者増加
言わずもがな、エンジニア転職を目指す人が急増したことが大きな要因です。
コロナウィルスにより様々な業界・職種がダメージを受け、多くの方が将来に対する不安を感じ、キャリアを見直すきっかけとなったことでしょう。
未経験からでも転職が十分可能であり、フリーランス・リモートワーク・週3勤務などのきらびやかなワードへの憧れもあって、エンジニアは一気に注目を集めました。Youtubeやブログ等で発信するインフルエンサーたちも「時代はプログラミングだ」と言っています。
また、プログラミングスクールの流行も拍車をかけました。プログラミングを一度もやったことがない人がエンジニアになるためにはどうすれば良いかを調べると、スクールの広告を見ない日はないでしょう。
スクール自体は2018年あたりから伸び始めていたのですが、最大手スクールのインフルエンサー社長の影響もあって大小様々なスクールの入学者が増え、一時期Wantedlyプロフィールに応募者の7割がプログラミングスクールというワードを載せていたことさえあります。ポートフォリオもフリマアプリだらけだったので、こちらとしては「またか」の連続で、応募者の差を見つけてあげるのが非常に難しい時期でした…
・企業側→採用枠減少
企業側にとってもコロナの影響は大きく、特に受託開発企業とSES系企業は発注元の予算縮小によって間接的にダメージを受けたことで業績が悪化し、今まで受け入れてきた未経験育成枠を縮小、もしくは閉じざるを得なかったことでしょう。
自社開発企業の一部は巣篭もり需要によりサービスの利用者が増え、結果的にコロナが追い風となったケースもありましたが、残念ながら比例して未経験者を採用する流れにはなりませんでした。その理由はリモート環境下での教育に対する不安にあります。
Web系エンジニアはリモートワークがしやすいということは事実ですが、コロナ前に実際にリモートワークを実施していた企業はそれほど多くなく、ほとんどは出社していました。そのため緊急事態宣言を境に自分たちがリモートワークに慣れることに手一杯で、未経験者を教育する余裕もなく、いざ慣れ始めた後でもリモート環境下での新人教育に関するノウハウがないため
・未経験者が本当に自宅で仕事ができるのか?
・離れたPCで起きているエラーを解決してあげられるか?
といった不安をぬぐいきれず、「未経験の採用はしばらく見送ろう」となってしまったのです。
以上のように、志望者増加と採用枠減少のダブルパンチで2020年は未経験転職にとってとても厳しい時代だったと言えます。
■未経験者採用の現状■
そもそも、決して安くはない採用コスト、現場のエンジニアの工数を割く教育コストをかけてまで企業が未経験者を採用する理由はなんでしょうか?
・経験者がなかなか採用できない
IT・通信業界は常に業界別有効求人倍率ランキングで上位に位置しており、2019年は約7〜8倍、コロナ不況の2020年でも約5倍を記録しており、他業種と比べても非常に高い水準を維持しています。
企業側は実務経験のあるエンジニアが見つからず、常に人材探しに苦労しています。
余談ですが、リモートワーク / フレックス制 / 週3勤務 / ハイスペックPC・ディスプレイ貸与などの勤務体系や福利厚生の充実さは、優秀なエンジニアを自社に誘致しようとして他の業界より早く実現されてきた背景があります。
・未経験者を採用するしかない
経験者が採用できないとなると、言い方は非常に失礼ですが、「仕方なく未経験者で妥協する」しかないわけです。ですが積極的に採用を試みているというよりは「いい人がいれば採用してもいいかな」程度で求人を置いていると考えていただいた方がいいでしょう。
教育コストを承知で、数ヶ月〜1年を目処に戦力になってもらうことを想定して育成枠として採用します。今までエンジニアが担当していた軽微な修正や保守・運用タスクを巻き取ってもらうだけでも十分助かりますからね。まずはそういった簡単なものから慣れていってもらい、徐々に主戦力として活躍して欲しいと願っているわけです。
ただし全くプログラミングをやったことがない人を一から育てていくことはなかなか難しいので、エンジニアとして必要なある程度のスキルや能力を持っていて欲しいものです。
では採用側はどんなところを見ているのか。
チェックする代表的な項目は以下の通りです。
・最低限の技術力
→未経験者でもポートフォリオを提出することが慣例化しており、個人でWebアプリを一通り作れるかどうかを見る
・ポテンシャル
→学歴・職歴・資格・アウトプットなどから、地頭の良さやキャッチアップに問題がなさそうかを見る
・問題発見力・解決力
→ポートフォリオのテーマ・エンジニアを目指したきっかけなどからビジネスマン・エンジニアとしてのマインドや素養を見る
・文章化能力
→プロフィールの書き方・構成や言葉遣いからドキュメント作成業務を問題なく任せられるかを見る
・コミュニケーション力
→面談・面接で話してみて問題なく一緒に仕事ができそうかを見る
・PCスキル
→デスクワークや資料作成業務の経験からPCの基本的な使い方が出来るかを見る
など、色々な項目を総合的に見ていきます。
・書類審査通過のハードルが一気に上昇した
2020年は未経験者の急増に伴い応募者が殺到したことで企業側が面談する人を選べるようになってきており、毎日来る多数の応募を捌く中で採用担当者の目も肥えてきたため、書類を通過させるハードルがどんどん上がってきました。
これまであまり要求されてこなかった
・高学歴
・IT系の業務経験
・自社に関連する分野の業務経験
・ハイレベルなポートフォリオ
これらを持ち合わせている人からの応募も珍しくなく、応募者に求めるステータスも欲張りになってきているのは必然と言えるでしょう。
実際に転職を成功されている方のお話を伺う限り
・元々スペックが高かった方
・これまでの業務経験と関連のある企業から内定をもらった方
・ハイレベルなポートフォリオを作り切り、面接対策や企業研究をしっかり行った方
以上のような方々がほとんどです。
少し前まではDocker, CircleCI, Vue.js, Reactなどをポートフォリオに取り入れている人など皆無でしたが、技術レベルの高いものを取り入れることで他の応募者との差別化を図ろうという動きも激化しました。このような流れはおかしいと嘆く採用担当者もいらっしゃいますが、応募者からすると学歴や職歴を変えることはできないのですから、自身がコントロール可能な差別化戦略はもうポートフォリオをハイレベルにするか、プロフィールをきちんと整えて書くかぐらいしかないのです。
そして企業側もある程度求人募集をかければ非常に優秀な方からの応募をいただけることがわかったので、平凡な方・光るものを感じない方は基本的にお声が掛からず、書類審査落ちや返信なしを連発することとなりました。
私自身も面談・面接のお声掛けをする割合は全応募者の10%未満です。私が極端に見る目が厳しいと言うよりは、どの企業でも非常に狭き門となっているでしょう。
結果として、大学受験や新卒就活と同様に、滑り止めのあまり入社意欲のない企業からの内定で妥協してしまい、ハードワーク・低賃金・スキルの身につかない単純作業などの劣悪な環境からキャリアをスタートさせた人も少なくありません。「努力不足でSESからのスタート」というツイートが炎上したのも記憶に新しいですね。
■プログラミングスクールの評判■
先ほど応募者の7割がプログラミングスクールというワードを載せていたことさえありますとお伝えしましたが、実はここ最近、企業側のプログラミングスクールに対する評判があまりよくありません…。
これは転職市場にスクール卒業生が大量発生したことに原因があります。
・スクールのカリキュラムはハイレベルではない
そもそもプログラミングスクールを卒業したからといって、一人前のエンジニアになれるほどカリキュラムのレベルは高いわけではありません。自動車教習所を修了したからといって一切事故をしない交通ルールも完璧に把握したドライバーが生まれないのと同じです。
アプリ開発を一通り出来るようにはなりますが、カリキュラムの範囲から少し外れた内容だと苦戦してしまう人がほとんどですし、UIやテストコードについては深く取り扱っていないところが多いです。駆け出しエンジニアには難易度の高い業務をすぐに任せることができないわけですが、マークアップやテストについてもあまり知識がないのです。教えてもらっていないのですから生徒からすると仕方がないことかもしれませんが、エンジニアの実務レベルからすると明らかに物足りないんですよね。
・量産型スクール卒業生の大量発生
突然ですが「働きアリの法則」はご存知でしょうか?
よく働いているアリと、普通に働いている(時々サボっている)アリと、ずっとサボっているアリの割合は、2:6:2になる。
よく働いているアリだけを集めても、一部がサボりはじめ、やはり2:6:2に分かれる。
出展:働きアリの法則 - Wikipedia
(スクールを卒業した方をアリに例えたいわけではなく、特定の集団における割合の比喩として取り上げました。)
2020年中に入学→卒業をされた最大手のスクール生8名にアンケートを取ったところ、各自の観測範囲内の同期メンバー計229名の内、卒業できた方が166名、途中退学をされた方が63名という結果でした。挫折割合にすると約27%。ぴったり20%とはなりませんでしたが、実際とも大きくズレていないでしょう。
と言いますのも、私も約2年前のこのスクールの卒業生です。約2割程度の方は返金対象の2週間以内に挫折、その後も一部の方は自然といなくなっているという雰囲気はありましたので、2020年のアンケート結果を見ても大きな乖離はなく納得の結果でした。(統計としてサンプル数が少なすぎるということは理解していますが)
最後までやり切れた方達の中でも上位2割に入ると何が良いかと言いますと、カリキュラムがスムーズに終わり時間的にも余裕が生まれますので、最終課題カリキュラム(フリマアプリ)に入る前にオリジナルポートフォリオを作成する時間が発生します。中位6割ですと、ただでさえ短期集中でギュッと詰め込んだカリキュラムについていくのが精一杯になるため、オリジナルポートフォリオの作成時間が作れないまま最終課題カリキュラムに入ります。
そして、最終課題が終わるとすぐに転職活動に入るよう促されるため、
・上位層はオリジナルポートフォリオをある程度作った状態で
・中位層は全く手を付けられていない状態で
転職活動を始めることとなり、(企業研究や情報収集などの時間を差し引いたとしても)ポートフォリオがフリマアプリのみという状態で応募してくる量産型スクール卒業生が転職市場に大量発生する結果となりました。
・短期集中コースの弊害
「だったらポートフォリオをしっかり作り込んでから転職活動を始めればいいだろう」
と言う声が聞こえてきそうです。ごもっともな意見なのですが、大手のプログラミングスクール受講者の多くは毎日10時間の学習を前提とした短期集中型であり、仕事をしながらでは受けられないカリキュラム構成になっています。必ず現職を退職して入学しないといけません。
それとは別に夜間休日コースという仕事をしながら通えるコースもあるのですが、同じカリキュラムで金額が3割増し、かつ受講期間が2倍以上なので挫折率も高く、受講者の中での割合としては少なめです。
退職をしているということは収入に対する不安が付き纏います。全ての方がじっくりオリジナルポートフォリオを作り込んでから転職活動へ進むというスケジュール感で望んでおらず、「スクールを卒業したら1〜2ヶ月ぐらい転職が決まるだろうな」と甘く見て半年分ぐらいの貯金しかない場合、なかなか内定が出ず転職活動が長引く焦りから
「フリマアプリしかないけど手当たり次第に応募してやれ!」
「ポートフォリオが中途半端だけど応募するしかねえ!」
となってしまう方が増えてしまいました。Wantedlyに応募してくる方の中で一定数がフリマアプリや中途半端なポートフォリオしか載せていないテンプレートプロフィールの方だったら、スクールを卒業した人は自走力がなく優秀な人がいないと感じさせるのも無理はないでしょう。ひどい人だと同じ会社の別職種の求人にもとにかく連打するなんて人も現れて、企業側もわざわざお見送りボタンを押す時間さえもったいないという有様です。
・スクール卒業生は採用しない
そのような方が大量発生したものですから、その人自身がどこからも内定が出ないどころか、企業側からしたら「またスクール卒業生かよ」となるのは当たり前で、2020年夏ごろからは「あまりにひどいのでスクール卒業生は採用しない」とSNS等で明言するIT企業の採用担当者も増え始めました。
多くの企業はそこまではやらないにしろ、スクール卒業生に対して非常によくない印象を持つ結果となったことは言うまでもありません。
一時期からは流石にフリマアプリしか載せない人は減りましたが、制作期間が短いせいかオリジナルポートフォリオも特段光るものがない人ばかりで、やはりスクールに対する印象がよくないことは引き続き変わっていません。
中にはスクールの方針とは関係なく、きちんとオリジナルポートフォリオも作成して企業研究もして、やることをきちんとやっている優秀な方もいらっしゃるのですが、スクールに通っていたことを記載したことでその他大勢のマイナスイメージに足を引っ張られて書類で落とされることが増えてしまいました。
(ちゃんとプロフィールを読まない採用担当者が悪いのですが、エンジニアが窓口の場合、開発の合間を縫って採用活動をやっているので流し読みになるのは仕方がないのです…)
・プログラミングスクールに通っていたことは載せるなという風潮
自分はきちんとやり切ったという自負がある方はその他の適当なやつらと同類にされては困るということで、プログラミングスクールに通っていたことをプロフィールに載せないようにしようという風潮になり出したのです。ここまで来るとスクールの価値ってなんなんだろうと改めて考えさせられますね。
(独学であると嘘をつけということではなく、載せたことで書類落ちの確率が上がってしまうなら、まずは面談・面接まで辿り着けるように聞かれるまで言わない戦法を取るということです。)
反比例するように独学でやり切ったというブランド価値は上昇しました。以前から独学でやり切った方はスクール卒よりも評価される傾向にはあったものの、さらに独学ブランドが強まった年だったと言えるでしょう。独学でハイレベルなポートフォリオを作り切った方は企業側からの評価も高く、スクール卒業生よりも内定が出やすい傾向が見られました。
■プログラミングスクールの相対的価値の低下■
そもそもプログラミングスクールの輩出する人材が現役エンジニアも驚くほどの実力者ばかりであれば企業からも引っ張りだこなはずですが、カリキュラムをあまりにも現場に即したハイレベルなものにしてしまうと
①受講期間が長期化してしまう
②受講料が高額になってしまう
③サポート体制が確保できない
↓
満足度が下がり受講者減少
となってしまうため、ビジネスとして成り立ちません。ある程度は汎用的な内容でなければならないのです。(講師の数も生徒数も限定して充実したカリキュラムで行っているスクールも一部ありますので後ほど紹介します。)
ではこれまでプログラミングスクールとして提供してきた価値は、2020年になってどのように変化してきたのでしょうか?
・仲間と切磋琢磨できる環境
独学にはない大きな価値は仲間と切磋琢磨できる環境にあるでしょう。教室に行けば同じ志を持った仲間がおり、1日中学習をするハードなカリキュラムを乗り越えるモチベーションとなってくれます。わからない時も助け合い、転職活動の情報共有をし、一緒に頑張る仲間がそばにいるのはとても心強いものです。
私も同期にとても優秀な方がおり、「この人には負けたくない!」という競争心が最後までやり切らせてくれたと思っています。
しかし、これまで通学型だったプログラミングスクールも、コロナの影響もあってほとんどは完全オンライン化または一部通学型に変更となっており、同期という意識が薄まってしまいました。毎日話をするメンバーがそばにいないため、独学の環境に徐々に近づきつつあります。元々オンライン完結型だったスクールは入学時期もバラバラでそもそも同期という概念自体がないところも珍しくありません。
・必要十分な学習カリキュラムとロードマップ
プログラミングスクールにはアプリを一通り作り上げられるだけのカリキュラムが用意されています。一般的なバックエンドエンジニア転職を目指すカリキュラムで学習する技術は以下の通りです。
フロントエンド:HTML / CSS / JavaScript / jQuery
バックエンド:Ruby / Ruby on Rails / SQL
インフラ:AWS
その他:Git / GitHub / Linux
ですが、これらの技術の基礎を学ぶための日本語チュートリアル教材は安価で一般に広く普及しており、特定のスクールでないと学べない内容というのはまずありません。仮に映像授業をメインとしているスクールであれば、予備校業界でいうところの「◯◯先生の授業を受けるには△△予備校に行かないといけない」のような希少性が生まれますが、私の知る限りほとんどのスクールはWeb上のテキストを読み進めるタイプですので、一般の教材で代替が可能です。
「いやいや、教材が存在することと、それを学びやすい順番で学ぶ必要のある範囲に限定して提供してくれることは別だろう」というご意見もあると思いますが、未経験者の増加に伴って独学で転職成功された方も数多く出てきており、転職成功Noteであったり、オンラインコミュニティが提供するロードマップも普及してきたので、
・どの教材を
・どのような順番で
・どこまでやれば良いか
を把握することが以前より容易になっています。やはり高額なプログラミングスクールである必要は薄まってきたでしょう。
・すぐに質問ができる
初学者が挫折する一番の要因は「わからないことが解消できないこと」です。エラーに直面した時、呼べばすぐに来てくれるメンターさんがいることはとても心強く、決して安くない受講料を払っているので、最短でカリキュラムを終えるためのサポートを期待します。
質問ができる環境は私が考えるスクールの一番の価値であり、なかなか平日の昼間にも質問に答えてもらえる環境を自分で用意するのは難しいため、スクールに入学する価値が十分あると言えます。
しかし非常に残念なのは、最大手のスクールではカリキュラム内はサポートするがオリジナルポートフォリオに関する質問が一切禁止されており、そこが一番苦労するところなんだけどな…と思いつつ、やはりビジネスとしてはそこまでサポート仕切れないといったところでしょう。
また、教室内で直接教えてもらうのと、ビデオ通話で繋いだ状態で教えてもらうのとでは、初学者にとっては感じ方が大きく異なります。やはり通学できていた頃に比べればハードルが上がったことは事実です。
そもそもエラー解決などについて質問したい場合、Stack OverflowやTeratailなどの質問サイトを使う、オンラインコミュニティに参加するなど様々な代替手段があります。費用も無料か比較的安く質問ができる環境に参加ができます。
スクールとコミュニティの違いは質問者の立場にあり、スクールだとお客様、コミュニティだと一参加者となるため、コミュニティで「答えてもらって当然」のようなスタンスで情報が不足したわかりにくい質問をしても、答えてもらえず解決しないままです。逆に言えばテキストベースの質問力がとても鍛えられるので、現場に入ったときにも質問に関する不安を感じないというメリットもあります。
コミュニティの数もそれなりに増えてきたので、参加者の属性も様々です。参加してみたいのであれば、ご自身にあったところを探していただいて、とりあえず飛び込んでみるのが良いでしょう。もし合わなかったとしても1ヶ月分の月額参加料だけで済みます。
・現役エンジニアから指導を受けられる
プログラミングを学ぶだけでは現場で即戦力にはなりません。
「現場ではこのような書き方をしますよ」
「現場ではこういう組み合わせで実装することが多いですよ」
現役エンジニアから現場に即したアドバイスをもらうことでより実践的に学ぶことができます。
現役エンジニアから指導を受けられるかどうかについてはスクールによります。メンターが全員現役エンジニアであることをブランドにしているところもあれば、そのスクールの卒業生がそのままメンターに就任しているところもあります。
現役エンジニアに相談したいという需要については、オンラインメンターをつけることで解決できます。MENTAやSNSを通じて現役エンジニアのメンターを探し、月額制や回数に応じてメンタリング料金を支払う形です。個人での依頼となるためスクールよりも安価で1on1の指導が受けられます。
また最近は先述したオンラインコミュニティでもメンタリングサービスを展開しているところもあるため、コミュニティ参加と現役エンジニアからのメンタリングを同時に受けることも可能です。
・転職支援・転職保証
カリキュラムを全て終えた後に転職支援・転職保証がついているスクールもあります。
【転職支援】
・キャリア相談
・書類添削
・面接練習
【転職保証】
・企業紹介
・転職できなければ全額返金
転職支援については独学では得られない非常に付加価値の高いサービスだと思いますが、転職保証については頼るべきではありません。
スクールの紹介で入社すると、企業側には転職エージェントからの紹介と同様の成約料が発生します。それだけの金額を未経験者の入社に支払えるのは経営基盤の安定した企業か、雇用することですぐに売り上げが立つ見込みがあるビジネスモデルの企業です。
前者の場合は経験者のエンジニアからも人気のサービスを運営しているところが多く、わざわざ未経験の方に紹介料を払ってまで採用するメリットがないのでスクールに頼るケースはほとんどないでしょう。後者の場合はいわゆるSES系企業ですので、あまり入社を希望している方はいない業態でしょう。ということで、スクールを卒業された方もスクールの転職保証には頼らず、ご自身で転職活動をするつもりで臨みましょう。
以上5項目について考察してきました。
今までエンジニア転職を成功された方の情報というのはあまり表に出てこなかったので、プログラミングスクールのノウハウは特別なものに感じられてきました。ですが2020年はエンジニア転職希望者の急増に伴い、転職ノウハウもどんどんオープンな情報になってきており、独学と比べてスクールの相対的価値は低下してきました。少なくとも何十万円も支払う必要性は高くないでしょう。その傾向は2021年以降も続くことは言うまでもありません。
コロナの終息によって完全通学型のスクールが復活すればスクールの付加価値は元に戻る可能性もありますので、動向はチェックしておきたいところです。
■2021年の未経験転職戦略■
プログラミングスクールの相対的価値の低下により、2021年1月時点でエンジニア転職を目指す上での最適戦略は何かを考えました。
それは
独学 + コミュニティ参加 + 専属メンター
です。
・独学
今の時代は独学でも比較的簡単にロードマップを見つけることが可能ですし、必要な教材を買い揃えて、必要な範囲をしっかり学習したら、スクールのカリキュラムと同等の効果が得られます。
先述した通り、独学でやり切ったというブランド価値が高まっていますので、費用面・評価面、どちらをとっても独学を選択することが望ましいと言えます。
・コミュニティ参加
独学の辛いところは1人でモチベーションを保ち続けないといけないところです。そこでコミュニティに参加して同じぐらいの進捗の方や、同じ志を持って頑張っている仲間を探すことで孤独感を和らげることができます。スクールの同期を持つことと同様の効果が得られるでしょう。
また、わからないことはコミュニティ内で質問する事で問題の解消と同時に質問力向上も期待できます。
・専属メンター
現場に即したアドバイスは現役エンジニアの専属メンターから定期的に指導をもらうことでエンジニアとしてのマインドも養う事ができます。
専属とつけているのは、オンライン英会話のように毎回先生が変わる形式ではなく、毎回同じ人に見てもらうことで、あなたの強み・弱みを含めたパーソナリティを知った上でアドバイスがもらえるため、的確なアドバイスになりやすいと考えているからです。
以上の組み合わせでエンジニア転職に必要十分なメソッドを揃えられるでしょう。
■それでもプログラミングスクールに通いたいならココ■
でもやっぱり独学は不安だという方に、採用側から見ても評判の良いプログラミングスクールを2校ご紹介します。(お金は一切受け取っていません。良いものを勝手に紹介しています。)
・RUNTEQ
1つ目がRUNTEQです。
・Ruby on Railsに特化した受託開発企業が運営
・メンターは現役エンジニア
・課題解決型の高度なカリキュラム
・受講期間が5〜9ヶ月と他のスクールに比べて長い
・学習目安時間850時間
・フロントエンドにVue.jsが学べるのも現場を想定した技術選定
・オリジナルポートフォリオの企画段階からサポート有り
・キャリアアドバイザーによる就職支援有り
・受講料は298,000〜398,000円
小規模なスクールのためまだあまり卒業生の方に巡り合う事がないのですが、私の知り合いにも卒業生の方がいまして、現役バリバリでエンジニアとして活躍されています。
社長様自身が情報発信に積極的でTwitterやYouTubeをやってますので、どういう方が運営されているかがわかるというのも安心ですね。
・フィヨルドブートキャンプ
2つ目はフィヨルドブートキャンプです。
・受託開発企業が運営
・メンターが現役エンジニア(チェリー本著者の伊藤淳一さんも在籍)
・戦力として計算できるRailsエンジニアの輩出を目指す
・Vue.js、CI / CD など、現場を想定したカリキュラム
・学習目安時間900時間
・月額29,800円
こちらも小規模スクールですので卒業生の方には数える程しか会ったことがありませんが、格安でボリューム満点のカリキュラムとサポート体制はとても素晴らしい企業努力だと思います。
以上2校が私がオススメするプログラミングスクールです。実際に通ったわけではないので、HPの情報と自身の観測範囲内の評判のみで判断しております。予めご了承ください。
■最後に■
IT人材が不足していると言われていますが、足りないのはスキルのあるエンジニアであり、未経験エンジニアではありません。未経験エンジニアは飽和状態がしばらく続いています。
社会人としてある程度キャリアを積んだあとで未経験の業界に飛び込むということはとてもリスキーな選択です。年収も確実に下がります。これだけ人気が集まってしまった職業なので、安易に現職を退職したりせず、本当にエンジニアになりたいのか?を今一度問い正していただきたいと思います。
2021年も引き続き非常に険しい道となるでしょう。それでもエンジニアになりたいのなら、相当の覚悟を持って然るべく努力を続けましょう。私は全力で応援しています。Twitter(@yosapro)や質問箱 - Peingで相談にも乗りますので、一緒に頑張りましょう!
そして最後に大事なことをもう一度言います。「◯◯さんが言ったから全て正しい」のように全てを鵜呑みにしないでください。現役エンジニアかつ採用担当という立場を利用したポジショントークであることを意識し、情報を咀嚼し、生かすかどうかは必ず自分で判断してください。
以上です。
引き続き未経験採用のリアルを伝え続けます。
どうぞよろしくお願いいたします。