元受講生 && 現役採用担当エンジニアが公式動画【テックキャンプ7つの闇】を見て思ったこと(後編)
こんにちは!よーすけ(@yosapro)と申します。
前回のこちらの記事↓の後編になります。
元となる動画はこちら↓
【公式が答えます】テックキャンプ7つの闇(後編)
今回は後編、7つのうち弁明を試みているのは以下の3つです。
⑤学べる技術は時代遅れ
⑥行きたくない会社に無理に転職させられる
⑦卒業生はエンジニアに向いてない人ばかり
本当に全てNOなのか?私は内部の人間ではないので運営体制についての真実はわかりませんが、元受講生である私が実際に体験した事実と、Web系自社開発企業の採用担当エンジニアとして採用側の目線で感想や現場からの意見をお伝えします。
注意点
・この記事の目的は「エンジニア転職を目指す初学者の方に正しい情報の取捨選択をしていただきたい」ということです。決してテックキャンプへの誹謗中傷や、企業価値を損なわせようというものではありません。良いところは良い、悪いところは悪いと正直にお伝えします。
・とある企業の1人の採用担当の話です。全てを鵜呑みにしないでください。
⑤学べる技術は時代遅れ
こちらは一部YES⭕ですが、全体的に時代遅れとまでは感じません。
【動画内容要約】
・エンジニア業界の技術の進歩は速いため、テックキャンプで教えている技術に対して「古い」「時代遅れ」という意見をいただく。
・しかしテックキャンプでは最先端の技術を追い続けるという選択をあえてしていない。
・自分が関わるプロジェクトや所属する会社が変われば新しい言語を勉強しなければならないが、大枠の考え方や文法が近い言語に関しては容易に習得が可能である。
・最先端の技術を採用している企業もあるが、むしろ古いがメジャーな言語の方が圧倒的に使われている。
・教える技術の選定基準としては以下の4つ
①未経験者でも学びやすい
②現場で共通の考え方や書き方を学べる
③古すぎる技術ではない
④国内で人気のある言語である
・最も重要なことは、エンジニアとしてのキャリアをスタートさせられる可能性のある汎用性の高い技術を教えることである。
・トレンドの移り変わりの大きい技術に関しては社内外のエンジニアにヒアリングをしてアップデートしている。
・実際に私たちのカリキュラムを学んだ方達の99%は転職に成功している。
テックキャンプで学べる技術は以下の通りです。
フロントエンド:HTML / CSS / JavaScript / jQuery(Ajax)
バックエンド:Ruby / Ruby on Rails / SQL
テスト:RSpec
インフラ:AWS(IAM・EC2・S3・Capistranoを使った自動デプロイ)
その他:Git / GitHub / Linux
(私の情報が古く、アップデートされた内容がありましたらご指摘ください。修正いたします。)
カリキュラムの範囲についてはそれなりに整っていると思います。バックエンド技術として求人数も多く、スタートアップから大きめな企業まで採用されているRuby / Rails、インフラには最もポピュラーなクラウドであるAWS、それぞれをあまり深くは学べないですが、技術選定としては問題ないでしょう。
唯一惜しいところがあるとすれば、フロントエンド分野でしょうか。
カリキュラム内では、フロントエンドでjQueryを書くことが多く、素のJavaScriptを書くことがほとんどありません。jQueryの方が短く直感的に書けるので、初学者向けのカリキュラムとしては仕方ないかもしれません。
ここがReactやVue.jsなら、フロントエンドからバックエンドまで、アプリ開発を一通り任せられそうな印象を企業側から持ってもらいやすくなり、卒業生のブランド価値も高くなると思われます。
バックエンドにRailsやLaravel、フロントエンドにReact(Next.js)やVue.js(Nuxt.js)、これらの組み合わせでアーキテクチャを組んでいる例が多い中、jQueryが書ける人が欲しい企業というのは基本的にはWeb制作系企業や、Web開発の中でもややレガシーな企業に多いです。
「Railsはできます!でもVue.js or Reactは全くやったことがありません」という人材が大量発生するのは現在のWeb業界では非常にもったいないですね。
(バックエンドエンジニアを目指しているんだからフロントエンドなんか別にどうでもいいだろというご意見が出そうなので先にお伝えしておくと、担当領域を縦割りにすることが難しい小規模組織においては、バックエンドのDB設計からロジック実装、フロントエンドのマークアップから動きのあるコンポーネント作成までをまるっと任せられることが多いので、未経験者が入りやすいスタートアップにはどちらも卒なくできる人の方が需要が高いです。)
タイトルの「時代遅れ」にフォーカスすれば、現場で使われている新しめの技術にGo言語(Golang)があります。マイクロサービスのトレンドに伴い注目を集めているGoogleが開発したバックエンド言語ですが、初学者にGoは教えるべきではありません。なぜならバックエンドにGoを採用している企業に初学者が入れる見込みはほぼゼロだからです。
大前提として、未経験者を採用する場合、企業側はこれまで学習してきた技術・ポートフォリオに使われている技術を重視します。自社で使われている技術にマッチすればするほど、教育コストが低く抑えられると判断します。RubyとGoを比べると、求人数を考えればRubyの方が多いので、入り口の広さという観点でRubyとRailsで問題ありません。
次に、それぞれの技術を採用する組織の技術レベルの高さですが、最新技術を採用する組織の方が技術レベルは高くなります。なぜなら、新しい技術をサービスに取り入れるためには、基本的に情報が少ない中で実現していく必要があり、それが可能なのは経験豊富な強いエンジニア組織だからです。
エンジニアは新しいもの好きなので、最新技術を採用する企業には優秀なエンジニアが応募してきます。強いエンジニア組織に優秀なエンジニアが加われば、必然的に未経験者を採用する必要性がどんどん薄くなっていくので、仮にWantedly等にGoの募集記事があったとしても、未経験者が応募したところでまず面談には進めません。
以上のことからも、スクールが未経験者に教える技術は最新技術である必要はないということがご理解いただけたのではないでしょうか。
Vue.jsやReactはもはや最新ではなく安定期に入りつつあります。
jQueryはシェア自体は依然として高いが、それはWeb制作を含めたものであり、Web開発の現場ではVue.jsやReactにどんどん置き換えられていることを考えても、改善の余地があるでしょう。
動画内で
・トレンドの移り変わりの大きい技術に関しては社内外のエンジニアにヒアリングをしてアップデートしている。
と謳っている以上、なおさらです。
⑥行きたくない会社に無理に転職させられる
表題に対してはNO❌だと思いますが、後半から論点のすり替えがすごいです。
【動画内容要約】
(前半)
・一部から「受講料を返金したくないから行きたくない会社に卒業生を無理やり転職させている」とご意見をいただくことがある。
・転職活動終了後の満足度アンケートでは4.58 / 5.00
・無理やり転職させていた場合、このような高い数値が出ることはあり得ない。
・その人にあった企業を紹介したり、アドバイスをさせていただくことはあるが、実際に選考に進むかどうかはお客様自身が決めている。
・お客様の都合が悪い会社だけど、転職が決まりやすいからといった理由で応募させるということはない。
(後半)
・「テックキャンプは卒業生をSESにばかり入れているからダメ」という声もいただくが、事実ではない。
・2020年10〜12月実績では、卒業生の転職先におけるSESの比率は23.5%(自社33.3%、受託43.2%)
・SESは契約形態の一つであり、SESが悪という議論はおかしい。
・(厚生労働省作成した資料を元に)自社サービスを開発するエンジニアの方が求人が少なく、SESと比べると転職がしにくいことも事実である。
・「自社開発企業に転職する方がすごい」「SESに行くのは妥協である」というのは間違っている。
・お客様自身のキャリアややりたいことを考えた上で最も良い選択をしていただきたいと考えている。
無理やり転職させているというのは、無料プログラミングスクールと勘違いしている方が多そうです。無料プログラミングスクールの詳細は割愛しますので、知りたい方はググってください。
全額返金保証の条件が厳しいのは事実ですが、テックキャンプのように生徒が受講料を払うスクールでは、転職先を強制すること自体が難しいです。
ただ、お客様満足度アンケートの4.58という点数については、信用しない方がいいでしょう。そもそも転職成功率99%を謳うところなので、アンケート結果をどのように数値化しているかも不明です。世間の評判はかなり冷たく、卒業生の声を聞いても大満足だったと答えている人はほぼ見たことがありません。(私の見聞きした声こそ信用に値しないと思うのでこれ以上はやめておきます。)
・その人にあった企業を紹介したり、アドバイスをさせていただくことはある
この部分については、
「◯◯さんでは自社開発企業は難しいので、まずはSESから潜り込んで、それから自社開発企業に転職しましょう!」
と言うキャリアアドバイザーさんがいらっしゃるそうです。現実を突きつけてあげるだけ優しさを感じますが、最初に勤める企業に対して踏み台にすることを推奨するような発言はいかがかなと思います。
後半からは「自社開発がいい、SESが悪いという議論はおかしい」との内容ですが、それ自体は間違ってないでしょう。ブラックではないSESも世の中にはあるでしょうし、自社開発に入ったことでメンタルヘルスに問題を抱えてしまう人もいらっしゃいます。これは事実です。
問題は「受講生の中で、SESに転職することを望んでいる人が非常に少ないことにも関わらず紹介をしていること」ではないでしょうか?
SESの善悪は抜きにしても、エンジニアを志す方の多くは
「あのサービスの開発に携わりたい!」
「自由な働き方を実現したい!」
「モダンな開発環境で経験を積みたい!」
「私服で働きたい!」
「リモートワークがしたい!」
等の憧れを持っており、そのほとんどは自社開発企業の方が実現しやすいです。
・多重下請構造でマージンを抜かれた給与
・客先常駐勤務
・どんなプロジェクト・どんな技術に携われるかもわからない
そんな企業に入りたくてエンジニアになる人は現実問題ほとんどいませんよ。
自社・受託・SESの比率に関しても、2020年10月〜12月実績ともなると、未経験からの転職がかなり難しくなったあとの時期です。自社開発に入社できている方はほぼ間違いなくカリキュラム外の範囲を独学で身につけて、ハイレベルなポートフォリオを作成して転職していることでしょう。(リクルーティング力の低い企業または採用を始めたばかりで相場感が全くわからずスクールの紹介に一任していた企業も多少はありそうですが。)
高校の授業だけじゃ物足りず、下校後に身銭を切り予備校に通って難関大学に受かったら、高校の合格実績に利用されてしまったようなものです。
オリジナルポートフォリオ作成段階に入ったら質問が一切禁止になるんですよ?基礎学習を通じてプログラミング能力のベースは培われると思いますが、一番肝心なところはほぼ本人の努力ですから、円グラフに利用されてしまった人からしたらたまったものではないですよね。
具体的な割合を示して自社開発や受託開発にも入れるスクールであるかのように宣伝するのであれば、そこはしっかりスクールで面倒を見るべきではないでしょうか?
まとめ
・行きたくない会社に無理に転職させられるという事実はないが、受講生が望んでいないSESへの紹介を「自社開発企業は求人が少ないから仕方ない」「SESが悪いという議論自体がおかしい」と論点をすり替えて正当化している。
・自社・受託・SESの比率は、サポート対象外の本人の努力をスクールの実績のように見せている。
⑦卒業生はエンジニアに向いてない人ばかり
これは「ばかり」が抽象的なのでなんとも言えませんが、テックキャンプが他のスクールや独学の方に比べて、相対的に向いてない人の割合は多いので、YES⭕とさせていただきます。
【動画内容要約】
・「テックキャンプの卒業生はエンジニアに向いてない人ばかりだから、採用の人事が怒っている」というご意見をいただく。
・プログラミングにセンスや才能が必要かと言われれば必ずしもそうではないと考えている。
・エンジニアを仕事にするという点においては、しっかりと勉強をしてスキルを身につければ十分に実現可能である。
・テックキャンプの卒業生を採用したり面接をしていただいた企業様から「卒業生は素養がない」とお叱りを受けたこともありません。
・テックキャンプではお客様の選考をしていない。なぜなら、私たちは少しでも多くの方にプログラミングを学ぶ機会を提供するためにテックキャンプを作ったから。
・リピートで採用していただける企業様もあることを知って欲しい。
昨今スクールに入学してくる方は、数年前に比べればエンジニアに向いていない人が多いでしょう。最近でこそWeb系を中心にIT業界のイメージも明るくなってきましたが、それまでは3Kなどと言われていた業界です。向いてなきゃ入ろうとも思わない、つまりそれでもエンジニアをやっている人たちは向いている可能性が高いでしょう。
では、最近はエンジニアに向いていなくても目指す人が増えてきたと仮定して、スクール別に優秀な人の割合が変わるかと言えば、これは明確に傾向があります!
・受講料が高い方が転職成功しやすいだろう。
・受講生が多い(大手の)方が間違いないだろう。
・広告を出してる企業だから信頼できるだろう。
・転職成功率99%だから安心して任せられるだろう。
これらを理由に入学した方は、マーケティング戦略にバッチリハマっているイイお客さんの例です。厳しいことを言いますが、スクールを比較する際に自分の感覚に頼っている時点で情収集能力が低い = エンジニアとして向いてません。
少なくともここ最近のテックキャンプの評判は良くないことはSNSやGoogle検索でもすぐ出てきますし、逆に評判の良い小規模で安価なスクールやサービスが増えてきました。
以前のこちらの記事でもご紹介したRUNTEQやフィヨルドブートキャンプは現役エンジニアからの評判も良いスクールの一例ですが、広告費をかけていないので検索してもなかなか辿り着けないという弊害は確かにあります。
ですが、異業種へ未経験からキャリアチェンジするという大事な局面で、どのスクールに通うべきかということは慎重に選ぶ必要がありますし、現役エンジニアや各スクールの卒業生の意見を参考にしないというのは、私からするとちょっと考えられないです。
これらの向いてない人たちの割合が高い傾向にプラスして、フリマアプリを作ったあとは質問禁止のシステムも重なって、フリマアプリをそのままポートフォリオに載せてしまったり、レベルの低いポートフォリオを提出してくる量産型スクール卒業生が転職市場に大量発生し、結果として自分たちでテックキャンプのブランド価値を下げることとなりました。
・エンジニアを仕事にするという点においては、しっかりと勉強をしてスキルを身につければ十分に実現可能である。
おっしゃる通りですが、企業側に魅力的に感じてもらえる人材がなかなか輩出されていないのも現実です。先ほどから申し上げている通り、自社開発企業など人気の企業に転職できている人というのは、カリキュラム外のところで自助努力を行った方たちです。
そして、
・テックキャンプの卒業生を採用したり面接をしていただいた企業様から「卒業生は素養がない」とお叱りを受けたこともありません。
・リピートで採用していただける企業様もあることを知って欲しい。
これにはただただ驚きです。私の周りの評判とは正反対ですね。皆さんはどちらを信じますか?
まとめ
⑤学べる技術は時代遅れ
→フロントエンドは惜しいが、全体的な技術選定は初学者向きでそれほど悪くない
⑥行きたくない会社に無理に転職させられる
→強制させられることはないが、SESに入りたくない人が多い中、SESは悪ではないという論点のすり替えはいかがなものか
⑦卒業生はエンジニアに向いてない人ばかり
→情報収集能力の低い人が集まりやすく、量産型卒業生に企業側は見飽きている
前半の4つも含めた各章に対する私のYES度を10点満点でつけると以下の通りです。
①簡単にエンジニア転職できると騙している
→1
②転職成功率99%は嘘の数値?
→9
③ポートフォリオが同じだから転職できない?
→10
④メンターは素人集団?
→5
⑤学べる技術は時代遅れ
→3
⑥行きたくない会社に無理に転職させられる
→7
⑦卒業生はエンジニアに向いてない人ばかり
→9
概ね各弁明に異を唱える結果となりました。まだまだ現場の声は届かないものですね。
私自身がテックキャンプに通ったことを振り返って
約2年前の卒業生である私ですが、これだけ色々文句を言っておいて、自分自身は通ってみて後悔していないのかと聞かれたら、これははっきりとNO❌です。全く後悔していません!
「こいつ支離滅裂やないか」と思われた方、これには理由があります。
①受講料が今ほど高くなかったこと
→ほぼ同じカリキュラム内容で約40万円だった。(今は約65万円)
②毎日通学が可能であったこと
→コロナが流行る前なので毎日朝から晩まで通学でき、フルコミットする環境にはとても満足している。
③転職コースは入学前の面接で選抜を行っていたこと
→転職できる見込みの高い生徒に絞って転職コースを提供していたため、同期に優秀な人がいたことで自分にも火がつき、切磋琢磨してお互いに成長できた。
今と昔では環境が大きく異なりました。私個人は満足していますが、今は卒業生を採用する立場。レベルの低い卒業生の多さには落胆しています…。
今回の【テックキャンプ7つの闇】という動画を通じて、きちんと理由をつけて弁明するかと思いきや、結局は今までと変わらず都合の良い切り取り方をして、素直で疑わない騙しやすい生徒を獲得する手法を続けているように感じてなりません。
IT人材を現場に送り出すプログラミングスクール最大手だからこそ、もっと良い方向に進んで欲しいと願うばかりです。
以上となります。
最後までご覧いただきありがとうございました。
いつも言っていますが、全て鵜呑みにはせず、ご自身でも調べるなどして、情報は有効活用してください。
今後ともTwitter(@yosapro)や質問箱 - Peingでどうぞよろしくお願いいたします。