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那須旅行記(後半)〜ヤギのハチさんのためにどんぐり拾い〜

那須旅行記の後半。前半はこちら。

2日目。食堂で朝ごはん。奥さまが慎ましやかな笑顔で出迎えてくれる。

ブルーベリーはお庭にあるものらしい

全てを受け止めてくれるような、優しい味わいだった。奥さまが一つひとつ丁寧に作ってくれている姿が目に浮かぶ。

食後のコーヒーをゆったりと啜っていると、外から「ウメェェ〜」と声が聞こえる。ん?

ちらっ

こちらの宿に住んでいる、黒ヤギのハチさん。思わず口を開きながら眺めていると、奥さまがそそそ…と近づいてきた。

「よろしければ、ぜひエサをあげてみてください」

一同で宿の外へ。すると、宿のご主人が登場した。

「どんぐり食べるんで。一緒に拾いましょうか」

ヤギってどんぐり食べるの? 驚きを抱える我々一同、ご主人、奥さまの5人で腰を折り曲げながら、庭のどんぐりを探す。

「おっきいのあった」「これ綺麗じゃない?」「こっちの方にいっぱいありますよ」などと言葉を交わしながら、ハチさんのエサ探しに勤しむ。

那須旅行で色々と思い出はあるけれど、このシーンが異常に平和すぎて特に印象に残っている。どんぐり拾いは子どものためだけにあるのではない。

ナイスなどんぐり

たくさんのどんぐりを抱え、ハチさんの元へ。ハチさんは「待ってましたぜ」と言わんばかりに身を乗り出していた。

高いどんぐりモチベ

どんぐりをおそるおそる差し出すと、そのままボリボリくらいついていた。手のひらをペロペロとなめられてくすぐったい。

その後はご主人のお庭ツアーが始まる。手招きをされて近くの木へ。ご主人はおもむろに葉っぱをむしりとり、手渡してくれる。

「手でくしゃっとして、匂いを嗅いでごらん」

爽やかな柑橘系の香りがスッと入ってくる。これは柚子の木らしい。この葉っぱもハチさんにあげた。ハチさん、「こっちもうめんだよな」と言いたげにモリモリ食べてた。

ご主人とハチさんとのほっこりタイムを終え、チェックアウトの時間が近づく。とても寂しい。1泊と短い時間ではあったものの、この宿からは心の湯船からあふれてしまうほどのぬくもりをもらった。

お別れを告げ、車に乗りこむ。ふと宿の入り口を見ると、ご主人と奥さまが肩を並べてこちらを見守ってくれている。とてもありがたい気持ちが芽生えると同時に、「早くカーナビをセットせねばお2人はあそこを離れられない」と焦り急いで目的地を打った。

本当にいい宿だった。いつかまたお世話になって、どんぐり拾いしたい。

本日は観光デー。那須屈指の動物園である「那須どうぶつ王国」へ。アラサー3人が向かう場所なのか不明だが、自分が「どうしても動物とふれあいたい」と所望して選んだ。

那須どうぶつ王国は2つのエリアに分かれている。エリア間の移動は基本バスで行う。この情報だけで、いかに広大な敷地なのか思い知らされる。

まずは牧場系の動物が住まう「王国ファーム」エリアへ。

羊がお出迎え

那須どうぶつ王国では、水族館におけるイルカショー的なイベントが開催される。早速「ニュージーランドファームショー」なるものを観覧。

見たらわかるやつ

牧羊犬が羊たちを誘導していく、あれである。ワンコがズンチャカ駆け回り、羊たちが指定の場所におさまっていく。

トレーナーさんが笛で走る方向や回り方を指示しているらしい。どうやって教えるのか謎すぎる。言語が使えない状況でも、動物とコミュニケーションってできてしまうんだ。

その後は次のイベント、「BRORD」へ。こちらはタカやミミズク、ヨウムといった鳥たちが活躍するイベント。

元々そんなに興味はなかったのだけど、宿の奥さまが「鳥のイベントはぜひ…感動します…!」とおっしゃっていたので足を運んだ。

トレーナーさんが登場し、スタートの合図をする。すると、遠い遠い森の中からタカが登場した。

右上の方にちょこん

豆粒くらいの大きさからグングンと近づいていき、トレーナーさんの腕におさまる。

ど、ど、ど、どういう訓練したらそうなる? と混乱に陥った。タカに「イベント12時からなんで、それまで森に待機してください。時間になったら呼びます」など伝えられるわけがない。一度解き放ったら野生に帰ってしまいそうなものである。

その後も客席の間をビュンビュンと飛び抜けていくパフォーマンスが繰り返された。想像を遥かに超えた迫力で大興奮。

すぐそこにビュン!

胸がバクバクと音を立てるくらいの興奮がよぎった。宿の奥さまがお勧めする理由がわかる。

大満足でイベントを終え、もうひとつのエリアの「王国タウン」へ。こちらは牧場よりも動物園感が強い。かなり近い距離で動物たちと触れ合える。

ペンギンにお魚あげたり
カピパラに正面から近づいたり
リスを探したり
おやつに形相を変えるカワウソに会ったり

今まで行った動物園の中で、いちばん「ふれあい力」の強さを感じた。大の大人たちが1日中遊んでいたほどだ。

動物たちのエネルギーを十分に感じ切って、那須を後にした。

とにかく「ほっこり」に包まれた2日間だった。宿を営むやさしいご夫婦とおしゃべりしている間は、忙しない日常なんて頭から吹き飛ぶ。

動物たちに餌をあげたり、体をモフモフとなでたりしている間は、角ばった心の形が丸くなっていく。

これから旅の目的地を決めるときは、「ここはほっこりできるのだろうか」という観点を盛り込んでいきたい。

今回の旅でほっこりセンサーが強化されたから、きっとできると思う。都会の荒波に巻き込まれて疲れてしまったら、秋に山を登って、どんぐりを拾って、ヤギのハチさんに食べさせに行こう。

またね

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