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「森の隣りの写真室 & 蓮カフェ」の設計

2020年6月に完成した森の隣りの写真室&蓮カフェの記録です

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外観

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カフェ
※窓前にいるのは蓮井さんの愛犬ガンタくん。

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カフェに隣接するテラスからは
八ヶ岳や富士山が望めます

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楽屋空間

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フォトスタジオ。自然光を利用したポートレートを撮影する空間


蓮井さんとの出会い

2019年6月 3ヶ月ほど前に会社を辞めた私は
いろんな美しい自然を見て回りたいと、カメラを片手に日本中を旅していました。

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旅をしながら住む場所を探していたところ、
大学の同級生で2年前に群馬の妙義山麓に移住した「みつる」が
「とりあえず行くところなければうちに住んだら?」
と声をかけてくれた頃でした。

そんなきっかけもあり、6月中頃に
みつるが、神社学を教えている「中村真さん」と企画している「出雲ツアー」というものに参加することになりました。

ツアーの細かい中身はまた別の機会に書きますが、そのツアーで初めて
蓮井さんにお会いしました。

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とても気さくな方で、写真家であると紹介されたのですが、
どんなに凄い方かは恥ずかしながら存じ上げず、
自分も写真がずっと好きで旅をしながら写真を撮っていることや、
会社員時代に仲間を募って個展をやっていることを遠慮なくお話ししていました。

今考えれば偉大な写真家の前でそんな偉そうに写真のこと語っていたなんて。。。。(恐

でも、立場関係なく自分のことをニュートラルに話せたことはよかったこと
かなとも思います。

設計依頼を受けるまで

出雲ツアーを終えての3ヶ月ほど経った頃、蓮井さんから連絡を頂きました

「ちょっと設計の相談に乗ってもらいたいんだけど」

ツアーで蓮井さんの人柄がすごく好きになっていたので、何か自分でプラスに
なることがあればと、話を聞きに伺うことにしました。

また、長野県茅野市にある、蓮井さんのご自宅も素敵だと伺っていたので、
そのお家も拝見させていただける良い機会だと思いワクワクして当日は伺いました。

でもなんでまだ独立したての僕に相談してくださるのだろういう疑問もありました。

相談について

連絡をいただいた数日後に蓮井さんのご自宅に伺いお話を伺いました。

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まず最初「率直に私にどうして相談を?」という疑問からお話ししました。

蓮井さんは「なんか陽くんが頭にうかんできちゃったんだよね」
あっけらかんと笑顔で答えてくださいました。

自分の直感にこんなにも素直に従って行動できる方がいるのかと、かなり驚いたことを覚えています。

まだ、私が設計すると決まったわけでもないですが、自分のエゴは捨てて、蓮井さんの今回の計画への想いに寄り添い「力になれるところを全力でやろう」と決意しました。


蓮井さんは数年前に長野の茅野市の今のご自宅がある場所が気に入り
土地を購入。某メーカーで、ドーム型のお家を建てていました。

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写真の通り、とても見晴らしの良い環境で、縄文時代に栄えた場所であることがわかるくらい土地の力が強く、「米沢」の地名通り肥沃で良い水に恵まれた土地でした。

偶然ですが、当時私がたまたま読んでいたの表紙がこの米沢で発掘された
縄文のビーナスという土偶であったことも、驚きの体験でした。

きっとこのビーナスが読んでくれたご縁だったのかもしれません。

今回の相談は、そのドーム型のお家の隣に、自然光を利用したポートレートを
撮影する小さなスタジオを作りたいというお話しでした。

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またポートレートスタジオを撮りに来るお客様にコーヒーを出せるカフェも作りたいという事でした。

蓮井さんは現在、都内を中心に広告写真を活動している中、次の事業としてこの茅野の自然の中でポートレートを撮っていきたいと。
自然の中で表情を引き出し、無理に作ったものではなく、その人すら気づかない”その人自身”を撮ってあげたいんだということでした。

この「その人自身を撮る」というのは、後日蓮井さんの都内のスタジオを拝見させて頂いた時に伺った話なのですが、その時に「こういう写真だよ」と見せていだたいた作品は本当に心震えるものでした。

また、蓮井さんの甘くクリアなコーヒーからも、
まじりっ気のなく素直な人柄を強く感じることができました。

もしまだ蓮井さんの写真やコーヒーに触れる機会がなかった方は、一度機会を設けてみて欲しいです。

※コーヒーは購入した豆を郵送してもらうことができます。

HASUCAFE  〔ポートレートスタジオ併設のカフェ〕
MikioHasui 〔蓮井幹生さんのホームページ〕


家の話に戻りますが、
伺った時は、ドームハウスを建てたメーカーさんの総二階建て(1階と2階が同じ床面積のお家)の商品で行けないかと検討されていました。

メーカー企画商品であったため、外観は鋼板でアメリカ風の大型ガレージのようなデザインでした。

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これらの状況をふまえて蓮井さんの私の純粋な感想をお話しさせて頂きました。

一つは、この建物は基本アメリカンなガレージ空間がベースとなっている為、私が感じる蓮井さんの持つ凛として洗練された空気感が伝わりきらないのではないかということ
もう一つはこの土地に来てくださる方に、蓮井さんの写真・コーヒーと自然を織り合わせた美しい体験を持って帰ってもらう為には、自分であればどういう設計にするかをみてもらいたいという事でした。


設計計画

帰ってからもう一度条件を整理したところ、今回の用途が以下の3つでした。
1、カフェ:蓮井さん自身が焙煎したコーヒーを飲んでいただく。
  いらっしゃるお客様との会話を楽しむ空間。
  ⇨〔設計的観点〕お客様との最初のふれあいの空間の為、
   入り口近くに計画したい。同時にこの土地の良さ(空気・景色)を
   体感してもらいたい。


2、楽屋:お客様が着替えや準備を行う部屋。時々、友人に宿泊してもらう可能性もある為、洗面・浴室(シャワールーム)を準備したい。
⇨〔設計的観点〕
・写真を撮られる前の準備する心を作りたい。
心を一度ニュートラルに戻す時間を過ごす空間でありたい。
・静かな音・静かな空間・間接的光。洞窟のように。

3、フォトスタジオ:自然光で撮るためのフォトスタジオ。直接的な太陽光が入らない北側のスペースに必要。
⇨〔設計的観点〕
・光の入りかたが綺麗に見えるように内装はシンプルにしたい。

これを敷地条件に当てはめ

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コンセプトや体験部分をどのように設計するか、何度も練りました。その結果

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このようなプランの提案となりました。

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まずメインの入り口を2階として、南面に最高の開放感が得られるテラスと
隣接する室内にカフェを計画しました

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実際にはこのようなテラスになりました。
左側の窓がカフェへのメインエントランスです。

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カフェはテラスの2面に向かって開放されており
明かりも十分に入るように計画しました。

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上の写真が南面の窓になりますが、最終的に窓を追加しました。

カフェ空間内部は天井を勾配天井で計画して
高さを出すことでコンパクトでながら抜けのある空間を考えました。

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結果このような明るい空間となりました。

この明るいカフェのエントランス脇に(上の写真の右奥)階段を設けました。

カフェで開放的になった状態から静かな空間へと誘うような効果を考え、
下の写真ような階段の雰囲気を作りました。

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照明は最小限で、足元のみが照らされるように、手摺りの下に照明を隠して設けました。

時空を超えたトンネルを抜けるような、そんな雰囲気にしたかったのですが印象はどうでしょう?

足元は絨毯を敷き込み、色味は落ち着いたトーンへ切り替え
なるべくシンプルな階段空間を心がけました。

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下から見上げるとこのような雰囲気です。

階段を降りていくと右手に楽屋(画像上は左)そして左手にフォトスタジオとなります。

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楽屋は窓が森を切り取るように配置しています。

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照明はここも間接照明を計画し柔らかい素材に囲まれた静かな空間を設計しました。

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洗面もできる限りシンプルなデザインのものを提案しました。

そして楽屋を出るとフォトスタジオに

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奥が楽屋で手前がフォトスタジオです。
床を絨毯からコンクリート素材に切り替えました。

これは光の反射が綺麗に出ることと、床を歩くときのコツコツという音の
響きを狙いました。

程よい緊張感のある空気に蓮井さんの持つ柔らかく洗練された空気が
混ざる心地よい空間になればと思いこのような素材としました。

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壁面には脱着可能なボルトを設置し、ここに重量のある額もかけられるようにしました。

これは工務店がアイディアを出してくださった、シンプルかつ綺麗な手法であったと思います。

私だけでは発想出来なかった事も工務店がとても尽力くださって、計画が組み上がっていったと思います。これは感謝しかありません。

また、今回の工法が素晴らしい断熱性と遮音性を持った2×6工法であった為
美術館のように静寂の空間が作れたことも、良かったと思います。

※音はこちらで確認ください


最後に外観です。

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当初の計画では寄棟で考えましたが、雪が降る地域であることを考え、テラスに雪が落ちてこないように片流れの屋根で落ち着きました。

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建築中の写真ですがこのような屋根の形です。

ドームハウスの○ に対して △がアクセントになっています。


以上のように

蓮井さんはファースト提案からほぼプランを変更することなく、私に設計を一任してくださいました。

プランを提案して(ガレージハウスで建てた場合のプランも併せて提案しました)直ぐに、「このプランで行こう」「陽くんの第一作品になる!」とおっしゃってくださった時には何ものにもかえ難い感謝の気持ちが湧いてきました。

本当にありがとうございます。

最後に
先日、雪が降った際の景色を蓮井さんが写真に撮って送ってくださいました。

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最後までお読み下さいましてありがとうごました。

是非 皆様が

「人生の1ページとなる
  ポートレートを撮ってもらう機会」に

「蓮井さんの
 透き通ったコーヒーを飲みたくなった時」に

この地を訪れてみてください。

森の隣りの写真室/蓮カフェ
〒391-0216 長野県茅野市米沢2969−1

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