【ゲームプレイ感想】サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う- 【R18】
※本記事にはネタバレを含みます。未プレイの方は閲覧にご注意ください。
また、本記事に記載する内容はあくまで個人の感想になります。
ずっとプレイしたかったタイトルです。
こんなに単語など検索しながら進めたエロゲは初めてかもしれない笑
あと、どこが重要な分岐なのか全くわからなくて、すごく迷走してました。
この感じは嫌いじゃないんで全然問題ないんですが、たぶん攻略サイトとか見て順番に見てくのがいいと思います。
ぶっちゃけあんまり語りたくはなく、下手な言葉を描けません。
ここまで感想書いてて、自分が嫌になった作品もありません。
たぶん10人がプレイすると、10人が別々で変な感想が生まれる作品だと思います。でも、なんとなくみんなが言いたいことは分かる、そういう見方もあるよなぁ!ってなると思っています。そんな風にできていると思います。
自分にもっと学があればなぁ・・・と感じた作品でもあります。
しかし、お勧め度は低いです。
理由として、面白くなってくるのに大体20~30時間ほど要します。
ただ、この20~30時間があっての面白さなので、仕方ないです。
(筆者はⅢ章雫ルートからようやくこのゲーム始まったなと思いました)
そのため、「面白くなくても全クリはとりあえずする」という人でなければ、勧めることはできないゲームになります。
しかしながら、すべて読破してこのゲームを面白くなかったとは言わせない出来です。それだけは言えるので、「全部やりきれる」という人にはお勧めできます。
タイトル:サクラノ詩 -櫻の森の上を舞う-
ブランド:枕
公式サイト:https://www.makura-soft.com/sakuranouta/
シナリオ ★★★★★ [5/5]
絵 ★★★★☆ [4/5]
音楽 ★★★★★ [5/5]
キャラクター ★★★★★ [5/5]
お勧め度 ★★★☆☆ [3/5]
【シナリオ】
筆者が今までプレイした中でも、かなり解釈が難しい作品でした。
自分の解釈が合っているかというのはかなり不安ですが、ぶっちゃけそんなこと気にしなくてもいいやという気持ちで感想書いてます。
何よりこの作品を描いた人の魂が伝わってきました。僕にはそれだけで十分でした。
章立てとなっています。Ⅰ~Ⅱ章までが共通ルートで、Ⅲ章から各ルートへ分岐し、Ⅳ~Ⅵ章をプレイしていく形となります。
最初にも書いているんですが、Ⅲ章後半からが本番です。Ⅲ章雫√からⅤ章終わりまでは、ノンストップで見届けることを推奨します。
【絵】
「天才」が描く絵画って、絶対難しいと思うんですけどね・・・
演出と美麗なCG、文章でそれをカバーしていました。
誰が何と言おうと、美麗で美しい作品とマッチしていました。
【音楽】
もう櫻ノ詩だけで★5です。
他の落ち着いたBGMも良すぎます。言うことなさすぎる。
櫻ノ詩のピアノVerが感動シーンで流れた時は勝鬨です。
サントラぽちっ!!!!
【キャラクター】
各ルートの感想で散々書いたので割愛。
【序 O wende, wende Deinen Lauf Im Tale Blüht der Frühling auf!】、【Ⅰ章 Frühlingsbeginn】、【Ⅱ章 Abend】
ざっくり言うと、美術部で「櫻達の足跡」という作品を作り上げるまでの話を描いています。
上記作品を完成させる準備はほとんど明石亘が済ませており、主人公がこの明石が隠れて何しようとしてるんだと探っていく流れになっています。
あと、めっちゃ謎(伏線みたいの)をバラまいてます。
実質亘ルートといっても問題ないかもしれない。
亘の想いや名言には心揺さぶられました。「作品が何のために生まれてくるのか分かっていれば十分」というセリフは、作品の意味についても核心を突いていて、ある意味承認欲求ではありますが、不特定多数ではなく、見てほしい人に見てもらうことが一番大事だという亘の想いも乗っています。
上記の亘の説教が、主人公である直哉に大きな影響を与えることになります。直哉だけでなく、この作品をプレイしていれば多くの人に影響を与えるシーンだったと思います。
【Ⅲ章 Olympia(御桜稟√) 】
パッケージヒロイン。初期から好感度MAXの幼馴染ですね。
全体的な面白さで言えば、可もなく不可もなく。
事実を知ったうえで振り返ると、結構えげつない過去を持ってます。(家の火事、吹の人形を母親と思い込むなど)
上記の事情があるため、どちらかというと父親に感情移入してました。これは辛いよなぁ・・・とか、父親どんだけ背負ってんねん・・・とか。
このルートをきっかけに、直哉が絵を描かないではなく、描けないことが判明します。(長山に説教するシーンで、右腕にはもう感覚がないも分かります)
長山香奈がしっかりヒール役になってくれます。でもこのシーンは絶対に必要だと思います。個人的感想ですが、筆者はこの稟に関する事実を隠してる方が残酷だと思う派です。(だから直哉は稟を恋人にした段階で記憶を取り戻させようとしていました)
【Ⅲ章 Pica Pica(鳥谷真琴√)】
死ぬほど単語調べながらやってました。
このルート通して美術の勉強できちゃいますね。
面白くはあったんですが、長いです。
ルート通して、真琴は「天才」になれないことを強調して描かれてます。
作品における天才というのは、「草薙直哉」「夏目圭」を指します。
再現性のない作品は「失敗」みたいな、彼女の姿勢すごく好きです。まさに現代向けの芸術家思想だと思います。
ただ、真琴が目指しているのは「2人の天才」の領域なんですが、全く手が届きません(月に手が届かない、欲しいものが手に入らないなど、遠回しに強調されてます)。ですので、いかに圭と直哉がズバ抜けているかを読者視点分からされます。(※このルートプレイ時はそこまで実感はないんですが、Ⅳ章プレイ後だとより実感します)
1枚の絵が人の人生を変えてしまうことがあるというのも、このルートをプレイすると学べます。後から振り返るととんでもないことですよね。
このルートをきっかけに、中村家と鳥谷家の争い、圭の出生など細かい過去が掘り起こされます。たぶん覚えておいて損はないと思ったので、結構読み込んでました。
筆者はどちらかというと鳥谷紗希みたいな考え方は好きです。霧乃に説教するシーンなんかも、自分が考えていることをそのまま言ってくれて感動しました。
【Ⅲ章 ZYPRESSEN→Marchen(氷川里奈、川内野優美√)】
いきなりレズエッチ始めるから本気でびびった。
意味が分からなくて最初「????」ってなってました笑
中原中也、宮沢賢治について調べまくりながら進めました。
詩集などを読み込んでいて初めてゲーム内のテキストについて考察可能です。「雰囲気で読んでもOK!」と思わないと読めない。
エピローグで優美が中原中也の詩「春日狂想」を音読して、本を捨ててます。ここだけちょっとよく分からなかったので、春日狂想についてググって色々調べたりしてました。ZYPRESSENを改めて終えると、なんとなくこの時の優美の気持ちがわかります。端折られてるんですが、恐らく優美が里奈と結ばれたことに対して「これで良かったのか」というセリフが出ているのかなぁという解釈です。哀悼の対象は恐らく直哉。
いきなり里奈が優美しゅきしゅきになってるのは何でですかね?どこかで千年桜咲かせた?
ある意味BAD ENDです。
【Ⅲ章 ZYPRESSEN(氷川里奈√)】
どうして川内野優美ルートがこのゲームで存在しないのか、その理由がよく分かる内容でした。なくていいと筆者も思います。見たくありません。
千年桜で優美がMarchenのように里奈と結ばれる奇跡を望まなかった場合のルートになります。
真実を知らない稟さんから説教くらいます。幼馴染の踏み台のプレッシャーエグいてぇ・・・。
個人的にはもう優美にスポットあたりすぎてて、優美ルートなんじゃねぇかとさえ思いました。それくらい彼女メインでこのルートはできていると筆者は感じました。だからこそ優美の個別ルートはなくていいです。
優美しかこの三角関係に答えを出せないというのも、いい味出してましたね。だからこそエピローグの優美の演出にはクるものがあります。
千年桜とは?というのがこのルートで判明します。
直哉が右腕がダメになった後、苦悩していた事実、それでも最後に里奈のために作品を完成させている事実が判明します。(その作品は台風で残らない)
【Ⅲ章 A Nice Derangement of Epitaphs(夏目雫√)】
ここまで進めてきたんだから分かるよな?って感じでテンポよく進んでいき、種明かしもたくさんされます。
雫がメインと言われると、「確かにそう」となるんですが、もう健一郎とのシーンが良すぎて健一郎がメインでは?とか言われても否定できません。
マジでここから面白さのギアが跳ね上がります。やばいです。止まらなくなるので、プレイするなら時間あるときに実施することが推奨されます。
雫が伯奇であることが判明します。
物語序盤で雫が直哉のごはんを食べて泣くシーンの謎が解決します。
稟が健一郎の弟子であり、美に呪われた天才であることが判明します。(
エロゲなのに男同士のやり取りの方が面白いという謎な状況でした。
健一郎と直哉について、知れば知るほど好きになってしまう。
健一郎が直哉の贋作に名を刻むシーンは、色んなゲームやってきたけど、指折りで数えられるくらい良いシーンでした。ゲームであんまり泣くことはないんですが、マジで涙腺緩みました。
吹の正体が、雫が奪った稟の才能の具現化みたいな存在であることが判明します。
【Ⅳ章 What is mind? No matter. What is matter? Never mind.】
直哉の母である水菜と健一郎がどう出会い、何があってニューヨークに行ったり、今の状況になっているのかを説明する章になっています。
あんまり多くは語ってなかったので、ここら辺がサクラノ刻でじっくり語ることになるのかな?
水菜さんとの馴れ初めなどが語られたあと、健一郎は人生最高の瞬間だとして酒を開けます。この幸福であることがこの作品のテーマであり、後々のシーンにも繋がることになります。
【Ⅴ章 The Happy Prince and Other Tales(夏目藍√)】
ここでは「幸福の王子」について勉強しました笑
直哉が絵をムーア展に出すために、描き始めることになります。
「幸福の王子」でいう王子がたぶん直哉で、ツバメがたぶん圭です。
そうして描かれるのがⅤ章です。
「幸福の王子」という作品は、オスカー・ワイルドによって描かれた自己犠牲の作品なんですが、最終的にすべてを失うことになります。
草薙直哉は、この作品を通じて様々なものを失っています。(芸術家としての才能、右腕、遺産など)
これ以上何を失うの?と思いながら読んでいました。そして受賞に圭が来ない時点で察したユーザは多いと思います。僕も察してしまいました。
「ZYPRESSEN」での優美、「PicaPica」での真琴のように、各ルートで各ヒロインが失ったものを同時に直哉は失います。
そしてこれまでの直哉の生き方に対する選択肢
1.間違っていた
2.分からない
1.を選ぶということは、今まで直哉が救ってきた「稟」「里奈」「雫」を否定することと同義で、これを選ぶと藍と結ばれるルートに入ります。
ある意味のBAD ENDですね。
2.を選ぶと、覚醒稟との会話が始まりました。
マジでよく分からんので、雰囲気で読んでる部分めっちゃ多いです。
超かみ砕くと、「美」についての会話になります。
稟は自身に絶対的といえる強い「美(神)」を持っています。だからこそ、大衆のことなど気にせず、自分の「強い神」を表した作品を作ることができます。たぶん圭も稟側の人間だったと思います。
だからこそ、稟はⅥ章以降「圭の役割」を果たそうとしているんだと思います。(いつか直哉と二人で世界的芸術家になる、一緒に絵を描く)
逆に直哉は、Ⅱ章でもありましたが、誰が作品を作ったかなどで揺らいでしまう、「弱い神」です。
しかしながら、直哉の「弱い神」には、常に人がいました。
櫻達の足跡や里奈との共作、櫻七相図、蝶を夢むなど誰かがいなければ描けていない作品ばかりです。
そんな「弱い神」の在り方として、Ⅵ章は描かれます。
【Ⅵ章 櫻の森の下を歩む】
たぶんこの作品のあらすじにもある「幸福の先の物語」がこのⅥ章になります。
直哉にとっての幸福について語られます。
この話を読んだあとに聞く「櫻ノ詩」は最高ですね。あと咲崎さんかわいい
ざっくりまとめると、櫻達の足跡の落書きに対して、直哉たちがそれを生かした上書きをするまでの話を描いたのがⅥ章になります。
上記では落書きと表現していますが、分かる人が見れば「これはこれでいい」となりますし、分からない人が見ればただの落書きです。
この上書き作業こそが、直哉と共にある「弱い神」を体現したものになります。「櫻の芸術家」が作成する作品には常に人がいて、「因果交流の光」のようでした。
直哉のような「弱い神」には、藍とような人が寄り添う必要があることも自分はここで理解しました。
全てを終えて、直哉は酒の飲みながら藍の前で自身の「幸福」や「芸術論」について語ります。自分の人生についても考えさせられるシーンです。じっくり読ませていただきました。
「さぁ、受け取るがいい」
「この絵にやどった神は、永遠の相だ この感動は一瞬だが、永遠だ」
震えました。櫻ノ詩の歌詞をここで回収するかと!!!具体的には以下の歌詞ですね。
すばらしき刻 瞬間を閉じこめた永遠こそ
わたしたちの意味 そして意義だと
君は知るだろう さぁ うけとるがいい
永遠の相 この櫻ノ詩の下
【最後に】
今すぐサクラノ刻をやろうかなぁと思っています。
別ゲーやろうとしていた予定を前倒しです。
それくらい良い作品でした。
だからこそ前半つまらないのはもったいないと感じた作品です。
この終わり方で6年近く待っていたファンの方には脱帽です。
僕は軌跡シリーズに2年待たされるだけで文句タラタラでした笑