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ネットプリント「亜と異」vol.01

さまざまな事情でコンビニに行くのが難しい方、出力期間を過ぎてから読みたくなった方、活動を支援してくださる方向けに有料記事を公開します。→無料公開しました!(2022.04.26)

本記事の有料部分には
・プリント全体PDFのURL
・短歌連作、エッセイ、プロフィールのテキスト
・音楽「first tone」のURL
を掲載しています。

ネットプリント版とnote版で内容に差異はありません。

また、亜と異vol.2(2022年4月末公開予定)の発刊後にこちらの記事は無料公開する予定です。ご了承ください。

vol.1 2022.02
テーマ:

発行者:夜夜中さりとて(歌人)
・短歌連作10首「北口」
・エッセイ「強制創刊」

ゲスト:宇田川美実(歌人)
・短歌連作10首「Stranger」
・エッセイ「だいこんくん」
・音楽「first tone」

出力期間:2022.02.28〜2022.03.07
セブンイレブン:63831312
その他コンビニ:8MKUFA5HNP
カラー60円 白黒20円 note100円
A4 片面 1ページ



短歌連作10首「北口」夜夜中さりとて

ラーメンを食べたいときのあまりにもどこか遠くにあるラーメン屋

濡れっぱなしのスニーカーそのまま履いて顔をしかめるまでワンセット

雨よりもゆっくり降って雨よりもゆっくり消えるのんきな天気

誰も座らないから雪が積もってる/積もってるから誰も座らない

アスタリスクの喩えにピンと来ていない会話をすれ違いざまに聞く

キル・ビルを観ている人とキル・ビルの雪のシーンの話をしたい

北口のラーメンだから改札の前で待ってて あっじゃあ待ってるね逆に

寒くなるほどに発話は遠のいて、ポケットに両手を突っ込んで

行かないと行けないだけで行けば行けるな

なに頼みますかところでキル・ビルの話をしてもいいですか  そう・・・


エッセイ「強制創刊」夜夜中さりとて

 それにしても二〇二二年という響きは未来すぎる。都営地下鉄大江戸線にも匹敵するくらいSFじみていて現実感が湧かない令和四年は、そんなことなどお構いなしに二月を終えようとしていて、つまり一年の1/6が既に過ぎ去ったわけですから、残りの5/6だってこんな計算を繰り返しているうちに失われないとも限らない。算数でおじいさんになるなんて受け入れられますか?あなた。このままの生活ではいけない、死ぬように生きていたくはない、革命を起こすんだ夢を見るんだ、と能動的決意を胸に顔を(←ダブル体の部位というテクニック)上げると、ネットプリントという選択肢が宙に浮かんでいたのです。光って、回転をしておりました。飽き性な僕のことですから、せっかくなら人を巻き込んで退路を断ってしまったほうがよい。さまざまな創作畑の友人たちを招いて、共通のテーマでそれぞれ作品を作ってみたりなんかしたら、いやー、ねえ、よさそうじゃないすか、きっと。合法的友達自慢、おまえもつくる創作Webマガジン。新企画なら一月に始めればよかったのに、とはまったくその通りなのですが、隔月刊なら二月からでもギリギリそれっぽいじゃんねと、そういった打算がございます。さいわい僕には魅力あふれる友人がたくさんおりますから、紹介し尽くすまではなるべく続けたいと思います。腹ァ、くくっております。何卒よろしくお付き合いください。


プロフィール

夜夜中さりとて Yoruyonaka Saritote (歌人)
歌人。とにたん、ジョナタン、ねこくるよ所属。歌集『ホーボー・サイン』。気さくです。握手を思いついたことがあります。
Twitter:@yorusari


短歌連作10首「Stranger」宇田川美実

Fremd bin ich eingezogen 石壁の街にはクーラーがない、だとか

雪曇りどの相槌もまるで今日はじめて声を発したように

そりゃパリも雪は降るよね誰しもが影を伴うその他愛なさ

空白が等しく距離を埋めるとき「こんな積もった」で知る現在地

〈この部屋は白磁の肌の都合上音が消されています〉 月震

口実を与えられても永久に踏み越すことのない停止線

発狂の春の兆しに応じてもどうしてもアブノーマルタイヤ

おそれずにまぶしすぎてはどうだろう湯をねむらせてくれ片栗粉

免罪符として授かる流れ弾そりすべり聴くとちょっと泣きそう

もう指で記憶しているパスワードよそ者としてまた去っていく


エッセイ「だいこんくん」宇田川美実

 大根を煮ています。お休みの日は何をされているんですか、と訊かれたら私はこのように答える。正確に言えば、このような質問に備えて私は大根を煮ている。思いついたように大根を買って帰り、皮を剥き、なるべく厚めに切って、面取りをして、ぶりか豚バラと一緒に煮ている。そして煮えていく様子をただぼーっと見つめている。絵筆をぬるま湯につけて洗うような心地のよい時間。蛍光灯で不自然に照らされたキッチンに立つあいだ、大根は白い円柱から献立に、私はヒトから人間になっていく。そういうお笑いをしているんですか、というふざけた時間をかけて煮込んだら、器に食べれるぶんだけ盛る。食べきれないぶんは私が寝ている間も出汁に浸かってもらう。ひとりでもいただきますを声に出す。最初の一口をかじるたび、ありついたな、と思う。どこかへ漂流を続けていた私が、舌先の熱を辿って、この六畳間に蘇る。次はしょうがを足そうかな。ごちそうさまはたまに忘れる。本当はひとりの食事に興味がない。言い訳を、体裁を、憐れみを、大根に託しているけれど、昨日の大根のことは覚えてないし、明日の大根のことも考えてない。ここにある大根が、味がしみていておいしい。はじめまして、宇田川美実です。休みの日は何もしていません。今日も何もしていません。だから私を散歩に誘うか、私の煮た大根を食べに来てください。よろしくね。


音楽「first tone」宇田川美実


ゲストプロフィール

宇田川美実 Utagawa Yoshizane (歌人)
筆名が線対称。群馬県出身、東京都在住。学級通信のタイトルは「かがやきのこどもたち」。大きな声を出す準備ができている。
Twitter:@ainoyamai

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