連作「東京」(あみもの三十九号より)
あみもの三十九号に掲載していただいた連作「東京」です。
五ヶ月分の滞納額を支払いに営業所まで行く 徒歩で行く
この先もずっと高層マンションに僕が関わるとは思えない
みんな意外とそんなになんとなくでなく、僕だけなんとなくで、今、こう
元気かなって思って電話してみたら元気なおばあちゃんの説教
斬り合いのつもりで挑む内見の間合いの中でいただく名刺
春ですねって笑ってくれてコンセントの場所も一緒に数えてくれた
散歩の人が小さな声で歌っててすぐにやめちゃったのもよかった
賃貸の審査を越えて春の朝 東京がもうそこまで来てる
始まりや終わり それだけ この街を去りあの街へ行く それだけの
うながされて印、印、印を押していく訂正印もしっかりと押す
入居する頃には家の目の前の桜並木も咲くかも、らしい
ポスターをどんどん剥がす 剥がすのはあっという間の数年でした
ああついにどれが自分の自転車かわからないままここを出ていく
東京に住むということそしてそのための果てなき手続きの果て
引っ越しを手伝ってくれる友達が三人もいて本当にありがとう