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彼らが食べた鰻の味、静岡(課題)

2年前、2021年の2月。ジャニーズ事務所所属のアイドルグループ、SixTONES(ストーンズ)のライブへ行くために友人と足を運んだ静岡県で、彼らがYouTubeの企画で訪れていた鰻屋さんへ行くことにした。

新横浜から新幹線に乗って静岡へ向かったのだが、車窓から見える大きな富士山にはしっかりと歓声を送った(控えめな声量で)。実物よりも写真や絵などモチーフとしてのそれを見る機会の方が多い私は富士山といえば青と白のイメージをしてしまうのだが、実物は灰色と黒の中間色に藍を混ぜたような色をしている。窓越しにも見てとれる山肌の質感も相まって、壮厳な印象だった。視界に遮蔽物はなく、写真写りとファンサは抜群である。

私たちは静岡駅の近くでレンタカーをしてうなぎ屋さんへ向かった。駅から30分ほど走っただろうか。栄えていた駅前とはうってかわって、平面的で穏やかな風景の中にその店はあった。彼らが訪れていたその店は、静岡県焼津市下江留にある「丸忠うなぎ」。SixTONES全員が訪れただけではなく、私が敬愛してやまないメンバーが子どものころから家族と通っている行きつけの店だ。同じメンバーのことが好きな、いわゆる同担の友人とともに嬉々として列に並び、呼び出しを待った。


1時間ほど並んだだろうか。忙しくなく働いている店員さんに声をかけられて店に入るなり、私たちは空腹に急かされるようにして早速メニューを手に取った。目玉商品のうな重には松、竹、梅の三種類がある。松は値段が張るものの、うなぎのサイズがもっとも大きい。せっかく神奈川から静岡まできたのだ。ここは奮発して思いきりうなぎを楽しもうと決めて、「松」を注文した。

サービスでいただいた静岡茶を飲みながら、うな重の到着を待つ。お茶は程よいあたたかさで、甘みと渋みを兼ね備えたその味は旅の疲れを癒してくれるようだった。

注文から、10分ほど経っただろうか。いよいよ、「松」のうな重とセットの肝吸いが運ばれてくる。お重の蓋を開けると、たちまち立ち上った湯気。甘辛いタレの匂いが鼻腔をくすぐる。つやつやとした大きなうなぎが、白米を覆い隠すように堂々と乗っていた。完璧な焼き具合と照りは、もはや食べることが勿体無いと感じられてしまうほど美しい。うなぎに対して美しいという感想を抱いたのは初めてだった。

友人と「いただきます」をして箸を手にとり、はやる気持ちを抑えながらまずは肝吸いを一口。やさしい味つけの肝吸いは、薄すぎず濃すぎない絶妙な味わい。もし可能ならば湯呑みにおかわりしてごくごく飲み干したいほど美味しかった。


さて、肝吸いを堪能した私たちはついにうな重へ手をつける。箸を入れるだけでわかる、ふっくらとしたうなぎの柔らかさに心を奪われながら、ひとくち。あまりの美味しさに声も出ない。好きなアイドルがこの味を食べて育ったのだと思うと感動もひとしおだ。くどさのない甘みと食欲をそそるしょっぱさを兼ね備えたタレに、ふわふわとしたうなぎの食感、焼かれてもなお新鮮な旨み。タレが染み込んだ白米との相性は言わずもがなに抜群で、山椒の香りがこれまた堪らない。早食いしてはもったいないと思いながらも進む箸は止まらず、気づいたときにはお重が空になっていた。


「食べ終わってしまった」という虚無感を感じてしまうほどには美味しかったうな重を完食した私たちは、続いて「タレアイス」を注文。あのうな重に使われていたのと同じタレがバニラアイスにかかっているという何とも魅惑的なアイスは、あまじょっぱい風味がクセになる。バニラとうなぎのタレはこんなにも相性がいいものなのか!と意外な組み合わせの親和性に驚きつつ、また訪れた際は必ず食べようと心に決めた。


いつ思い出しても、「全てがとにかく美味しかった」としか言い表せない。静岡旅のおいしいハイライト。まる忠うなぎのうな重は、私が今までに食べたうな重のなかでナンバーワンだ。静岡に行く際は必ず食べなければという義務感さえも抱いている。



こちらは「思い出に残る食事」をテーマに書いた大学の課題を修正したものです。課題のポイントとして「具体性を大切にして書く」ことが挙げられていたので、お店を訪れた理由や状況、地名や店名を盛り込んで書きました。この文章を読み返すと、丸忠うなぎのうな重が食べたくなります。知らなかった場所やお店と出会わせてくれる彼らに感謝。聖地巡礼旅はつづく。


2023/06/29


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