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きらきらしていた
10代のころ、私が好きだった人の話。
彼は、「死にたいと思ったこと、一度もない」と、清々しいほどきっぱり言い切った。私は、「いいなぁ」とつぶやいた。
不意にベンチから立ち上がった彼は「全然違うから、きみと話すのは面白いんだよ」と笑う。私たちは一応、大人になれたらしい。久しぶりに会った彼は髪が伸びていたし、声変わりも当然終わっていた。私は、「時の流れというものは」と途方に暮れながらハイボールを飲んでいた。
彼はとても明るくて話しやすい、たくさんの人から好かれる人だ。だけれど、彼が好かれる理由は、本当はもっと繊細で尊いもの。ただコミュニケーション能力が高いというだけではない、尊敬できるところがたくさんある人だった。
私は今でも、私のことを対等に眼差してくれたあの視線に、救われているのだと思う。
私は、あまり学校に行けなかった。病気をして、長期間登校できない期間があった。長期間の欠席から復帰したあと、私はずっといなかったのに、昨日までも私がそこにいたような、以前と変わらない調子で「おはよう」といってくれた彼にどれだけ救われたことか。
きらきらしていた。彼はいつでも、眩しかった。今の彼のことはよく知らないけれど、あのころ私から見えていた彼はとても逞しく、立派で、誇り高い、私よりずっとつよい人だった。
「自分自身との付き合い方は、きみがいちばんよくわかってるんでしょ。だからもう、乗りこなせたら最強なんだよ」
たった一瞬だったとしても私と向き合ってくれたあなたの言葉が、今日も私を支えている。その関係に名前はつかなかったけれど、私は今でも、あなたが元気でいてくれたらいいなと願っています。
2023/07/08
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