シャウト 差し込んできた朝の光に 照らされた過去の言葉は心肺停止 昨日の深夜は君も笑っていたのに 煙草の煙で黄ばんだ心 大人になることを履き違えて 積もっていく吸い殻の山 追い求めた言葉は集積できず 読めない本の背表紙がただ僕を睨む 挟みもしない栞はまた淋しそうに泣く 狙い澄ました顔の幼少期の僕 紙吹雪の中で自由に踊っていた 稚拙ながらも無作為で今日の僕は憧れた いや 嫉妬した 壁一面の付箋が煽る 横並びの苦戦が付きまとう 逃げ腰の不戦の感情 笑う君の無線から聴こえ
REFLECT 夜の自由 淋しさと勘違いしては 独り言呟き 演じていた 嘘で折り畳んだシワだらけのTシャツ 干しっぱなしの洗濯物が僕を睨む 読まずに積み重ねた本に答えがあるのなら だらしない僕は挟んだままの栞だ 君の言葉を探すよ 海に放り出されたそれに僕は涙する 月に反射 投げては返した悩み 書いた言葉 僕と僕以外のもの 理想を美化した嘘で僕は重ね着した 綺麗な切り抜きばかりをしていたから 作為的な純粋はノートの隅に置き去り 君の言葉を探すよ 海に飲み込まれたそ
余波 書き上げたばかりの小説 誰にも見られないように 川に捨てた 踊るように流れる小説 誰にも見られないようにしてたのに 猫は見てた 水に溶けるような言葉 知られずに消えてゆくのか さよなら さよなら そう言って 手を振って さよなら さよなら そう言って 帰宅する 忘れ去られたあの小説 誰にも読まれることなく 川の底へ 新しい言葉を探す 時に何かを切り捨てながら さよなら さよなら そう言って 手を振って さよなら さよなら そう言った僕は誰 もうこの部屋には
祈り 降りしきる小雨 あめんぼが跳ねた後の水面 すぐに消えて淋しくなった 止みはしない小雨 肩まで伸びた髪を濡らす すぐに乾かず苦しくなった 不確かな言葉の旋律 僕を何処へ連れて行く 不確かな言葉の旋律 僕を誰にしようとする 未だ降る小雨 並び立つ灰色のビルディング 僕を飲み込む鮫のよう 君に似た小雨 僕はまだ餌に擬態できず 飛び魚になって踊った 不確かな言葉の旋律 僕にはこれしかないから 不確かな言葉の旋律 僕はそれを糧にした
進化論 2万マイルの海底 一人部屋 沈めた嘘はプランクトン 乱反射する水面を懐かしむ 僕はフォトンになれず 一人泣く 泳ぎ方 忘れたまま 垂らされた釣り糸を待って 踊ろう 2万文字の改訂 一人旅 赤い鉛筆で二重線 週末から荒れた手はそのまま 洗いたくなって赤 一人泣く 僕と君は似ているから 繋いだ右手も離さず書いて 揺れよう 泳ぎ方 忘れたまま 目指した対岸も見えないまま 踊ろう 揺れよう 一緒に踊ろう 一緒に揺れよう
ブライン 東京の片隅で渇き ここは東京じゃない 都会生まれのフリもせずに 夜明けをじっとじっと待ち 僕は君の言葉で 自由に 自由に踊り 淋しい雨が今は深い ここは東京じゃない 知らない言葉が溢れ余り 堪えた涙きっときっと海 僕は君の言葉で 自由に 自由に踊り 吹いた風で走る幻 ここは東京じゃない 砂上の白線の外側に 理想郷ずっとずっと望み 僕は君の言葉で 自由に 自由に踊り 僕は踊り方を知らない ここは東京じゃない 百合の花 君の手で枯らし 続いて世界はやっと
hair 君のための風は 最大瞬間風速 高め 長い黒髪 揺れる 揺れる 君のための風は 気まぐれ方向から 北上 長い黒髪 絡む 絡む 濡れた長い黒髪 思い出しては淋しくなった それでも君は微笑むだろう 君のための風は 曇天雨交じり 淀む 短い黒髪 無言 無言 切った髪から覗く首筋 知らない曲線 触れず離れず 短い黒髪 遠く 遠く 濡れた長い黒髪 思い出しては淋しくなった それでも君の髪 乱れ 前が見えない 前が見えない 前髪 描く そのまま踊る 前が見え
勿忘草 いつか忘れてしまうなら 覚えずに泳ごうか 逃がした小さな蜘蛛も 何処かへ消えた いつか君が誰かも忘れてしまうだろう その時にはどうか僕を呼び止めないで この世界にさよならした僕はもうすぐ踊り暮れる 君に残した僕も消し去って いつか忘れてしまうから 覚えずに泳いだ あの日の僕はもう居ない もう居ない いつか君も誰かと朝に混ざるだろう その時にはどうか僕を呼び止めないで この世界にさよならした僕はもうすぐ踊り暮れる 君に残した僕も消し去って 蜘蛛の糸で僕を引