初ひとり旅2
(続き)
来た道を戻る途中、カフェの近くにある木に抱きついた。
以前木に抱きつくとエネルギーを貰えると聞いたことがあった。
私はスピリチュアルなことをあまり信じないタイプだけど、それはあながち嘘じゃなさそうと思い抱きついてみた。
すると冷たいせいかなんなのかわからないが、ピタッと密着する感じがあって、すごく安心した。
そして急に泣きそうになった。
あ、私、寂しかったんだな。
木から離れて泣きそうなまま歩いていると、今度は崖が凹んでいる場所を見つけた。
そこに手を当てて目を閉じた。
エネルギーをもらっているのか、吸い取られているのかわからないな、なんて思いながらもまた安心感を得た。
最後は水神社に寄って、祠にお参りして山荘に戻った。
そして自分に、「お疲れ様」と何度も言った。
馬鹿馬鹿しく思えるけど、自分の傷は自分でしか癒せないから。
そうして夜になり、夕飯をカフェで頂いた。
昼間は混雑していたが、夜は私だけで気が楽だった。
ご飯が出てきて、一口食べるともう止まらない。
和食が好きな人は絶対に行くべき。本当に美味しかった。
そして車で山荘まで送ってもらい、温泉に浸かった後こたつに入ってテレビを観ながらお酒を少し飲んで寝た。
朝食は宿で頂いたのだが、これもまた美味しかった。
食後のコーヒーを頂いて、少し部屋で休憩した後また渓谷へ向かった。
昨日と同じように木に抱きついて、崖に手を当てた。
山荘までもう少しのところで山を見渡すと、風に吹かれて枯れ葉が舞い散っていた。
その光景は本当に、本当に綺麗だった。
色づいた山々から風で飛ばされた葉っぱが舞い散るあの光景。
私の語彙力では表せないほど、美しかった。
また泣けてきた。
人は自然と共に生きるべきだと強く思ったし、少なくとも私はビルの森にいたくないし、絶対に出て行こうと決意した。
そして束の間の旅を終えて待っているのは暗い現実だ。
鳩ノ巣駅に着くまで、何度も帰りたくないと口にした。
家にはモンスターがいて、終わらせなければならないことが山積みで、今日からバイト4連勤…。
でも過ぎるから。
それに限界まで疲れたらまた来ればいいし。
そう自分に言い聞かせて、私はまた現実の暗い沼へ入っていく。
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