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不思議なポケット


君は、不思議なポケットを持っている。

なんでも入る。

君はそのポケットに、

悲しみも、
苦しみも、
不安も、
恐れも、
絶望も、



   孤 独 も 、



ぽいぽいと投げ入れる。

なんでも入る。

重たくなった、君のポケット。

またポイポイと投げ入れて、

君はカラッと笑う。



ジャンプすると、たまにポロっと落っこちる。

「おっと。」と言って君はそれを拾い、

ちゃんとポケットにしまう。


歩くとガチャガチャ音が鳴る。

「何が入ってるの?」と聞かれると君は

「いろいろ。」と言ってまたカラッと笑う。


君はたまにそのポケットから、

かけらをいっこ取り出して、「じゃーん!」と言ってみんなに見せる。

みんなは「わあ!」って驚いて、心臓をバクバクさせる。

君は「ふふふっ」と悪戯っぽく笑って、それをポケットにちゃんとしまう。


それを見ていた人たちが、

「あの子は大丈夫よ。」と言う。

君はその言葉を、ぽいぽいとポケットに投げ入れる。


ぽいぽい ぽいぽい

ポイポイ ポイポイ

便利なポケット。

君は笑う。


重たくなった君のポケット。

深くなった君のポケット。

たまに穴が開く。


そうすると君は月が見えない真っ暗な夜に、

泣きながらポケットの穴を繕う。

ちくちく、チクチク。

君は手先が不器用だから、ジグザグでへたくそなんだ。

だけど穴はちゃんと塞がる。

ちゃんと、落っこちないように。

お月様も知らない。



君はにこにこ笑いながら、またポイポイと投げ入れる。

可愛いね。君はかわいい。

ここまでよく

がんばって歩いた。

よくがんばって歩いたね。



月が綺麗な夜に

できるだけそぅっと

そのポケットを覗いてごらん。

その時ポケットの中は、

輝く宝石でいっぱい。

君の涙の養分で、キラキラ輝く宝石がいっぱい。

その中の、とびきりお気に入りを選んで、

お月様にかざしてみてごらん。

その時君は本当に、

少しだけ大丈夫になるから。


指輪にしてもいいし、

誰かにあげてもいいよ。

君の好きにしてね。


なんでも入る、不思議なポケット。

君は今日もぽいぽい入れる。

ぽいぽい、ぽいぽい。

君は笑う。





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