強みは「後出しジャンケン」~養老乃瀧Gのコントラクト事業について/前編【代表よもやま話⑳】
いらっしゃいませ!
養老乃瀧株式会社代表・矢満田敏之(やまだ・としゆき)のコラム。久しぶりの更新となる第20回では、私たち養老乃瀧グループが手がけている、居酒屋以外の事業ついてお話しします。
ぜひ、最後まで読んでみてください!
■手痛い失敗から「つばめ食堂」へ
皆さんお久しぶりです。約1年ぶりのコラムとなりますが、どうかおつき合いください。
今回は、コロナ禍を経て育った新しいビジネスについて書いていきます。
まず最初に、私たちはこの4年間、大変苦しい時期を過ごしてきました。その節は大変ご心配をおかけしました。
振り返れば、コロナ禍は本当に辛い経験でした。もう二度と、あんな思いはしたくありません。思い出したくもない、というのが本音のところです。
ただしコロナ禍が、私たちが成長していくための新しいチャレンジの機会となったことも確か。あの厳しい経験を経たからこそ、私たちは居酒屋事業オンリーから、別事業を少しずつ育てることができました。
その一つが、コントラクト事業です。
養老乃瀧グループでは野球場を始め、スキー場、ホテル、大学、などで飲食サービスを提供しています。特に今、徐々に拡大しているのが、野球場における店舗運営。私たちは現在、神宮球場、ベルーナドーム(西武ドーム)、楽天モバイルパーク宮城など合計8球場・約50店舗のフード事業を営んでいます。
最初に取り組んだのが2019年。神宮球場の「つばめ食堂」でした。
実はつばめ食堂のスタートのきっかけとなる、忘れられない失敗がありました。それは2018年の夏に、あるレジャー施設に飲食ブースを出展したこと。そもそも私たちに運営ノウハウが少なく、そこに台風など悪天候の不運も重なり、大赤字となってしまったのです。
これは手痛い失敗でした。
それでも私たち(というか、取締役の谷酒)は、めげずにリベンジの機会をうかがっていました。そんな折にたまたま頂戴したのが、つばめ食堂の運営のお話だったのです。
野球場であればしっかりと集客が見込める。いけるんじゃないか。
そう考えて、チャレンジに踏み切りました。しかし私たちは神宮で、スタジアムでのフード事業の難しさを実感することになります。
野球場の飲食店運営において、居酒屋と同じオペレーションは通用しません。商品のおいしさに加え大切なのは、一にも二にもスピード提供。お客様を長時間並ばせてしまったら「負け」。列が伸びると、お客様はとたんに別の店に移ってしまいます。
考えてみると、それはそうですよね。皆さん野球を見に来ていて、少しでも早く席に戻りたいわけですから。
そこで直接的に収益に響くのが事前の仕込みの量と、少しでも多くのお客様にスムーズに購入していただくためのオペレーション。いきなり現場に放り込まれたスタッフはとても苦労したと聞きますし、本当に申し訳なかったです。
その反面、いい気づきもありました。
私たちが普段の居酒屋の営業と同じスタンスで、笑顔で元気にお客様に対応していると、それを見た球場の方がよく「養老さんは元気がいいですね!」とほめてくださるのです。
私たちが普段当たり前のようにやっていることですが、球場の方には新鮮に映るのでしょう。自分たちの日ごろの姿勢を、あらためて振り返ることができました。
■総合居酒屋だからこそ「後出しジャンケン」ができる
そして2021年にスタートしたのが、西武ドーム(※)の11業態の店舗でした。
※スタート当時は「メットライフドーム」という名称で、現在は「ベルーナドーム」です。ここでは便宜上「西武ドーム」と呼ばせていただきます。
今、野球場でのコントラクト事業が広がっているのは、この時の店舗展開が大きかったように思います。
西武ドーム内の店舗は専門店化、ファストフード化させたもので、11業態の店舗を私たちが一括して運営しています。
この時の業態開発は本当に大変でした。
西武ドームのアイテムの中には、私たちが普段、居酒屋で扱っていなかった食材も多くありますし、食材こそ使っているものであっても、調理法や味付けが異なったりします。
そんな中、お話をいただいてからシーズン開幕までわずか2カ月ほどの間に合計11業態を立ち上げたのですから、営業そして現場スタッフの頑張りには本当に頭が下がります。感謝しかありません。
振り返ればこの取り組みは、私たちが総合居酒屋チェーンであるからこそ、できたことだと思います。多彩な食材の調達と、それらを使ったレシピ開発、適材適所の人員配置など、私たちの強みを発揮できました。
私は野球場でのビジネスを「究極の後出しジャンケン」と思っています。なぜなら、私たちが総合居酒屋だからです。
例えば球場のスタッフの方とお話する中で出てくる「このようなフードを出すお店を作れませんか?」という申し入れに、ほとんどの場合、応えることができます。逆に「こういったお店を作れますよ」という、こちらからの提案も可能です。
いわば「負けない入札に入っていく」ような感覚を持てる。ここがファストフードなど、専門業態で勝負している会社と比べた大きな強みです。
そして球場側から見ても、多彩なアイテムと業態を一つの企業がまとめていることで、ビジネス面のメリットがあるようにも思います。
■実感するのは「新規事業あるある」
こういった球場での取り組みによって昨今、いくつかのブランドが育ちつつあります。
そのうち一つが「グレイジーポテト」です。
ポテトフライはオペレーションがシンプルなので回転がよく、お客様をお待たせしてしまうことがほとんどありません。そしてワンハンドで食べることができ、ビールとの相性もよく、大人も子どもも大好きです。
ただ、正直に言います。最初、私の頭の中は「ポテトフライ専門店なんて、ちゃんと収益化できるの?」という疑問でいっぱいでした。
でも、これぞ「新規事業あるある」。こちらが狙って打ちに行くほど当たらず「これはダメだろう」と思っていたものに限って、当たる。何事も、まずはやってみるものですね(笑)。
また、現在は各地で店舗を展開する「韓激」はもともと、西武ドームの11業態の一つでした。
私たちは韓激をそこからスピンアウトさせ、現在は養老乃瀧や一軒め酒場とともに、私たちが路面店として展開する居酒屋ブランドにもなっています。
■コロナ禍があったからこそ、新たな知見を蓄えられた
西武ドームをきっかけに、私たちはノウハウをたくわえることができました。そして、それが他の球場での事業展開につながっていきました。
本当にありがたいことです。結果的に野球場のビジネスは、コロナ禍の想像を絶する厳しい状況の中に差した、ひと筋の光となりました。
コロナ禍がなければ、思い切って野球場での事業にリソースを割くことを決断できなかったです。実際は決断したというより、決断せざるを得ない状況であったことも確か。もう二度とあのような思いはしたくありません。
でもコロナ禍があったからこそ、新たな知見を蓄えられたのも間違いのないことです。
ただし、野球場での事業について一つの懸念がありました。それは、野球の試合がない冬の時期の人員配置と売上確保でした。
(続く)
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