第49回全国視覚障害者文芸大会

第49回全国視覚障害者文芸大会の作品集が届きました。
短歌部門のページには池田はるみ先生と、黒岩剛仁先輩、そして私の選が掲載されています。詳細は日本点字図書館にお問い合わせいただきたいのですが、私が選んだ作品を少しご紹介します。

・体育座りの子らの真顔を想像しゆっくり語るわれの来し方
 埜村和美

作者の視点から見た講演の場面を表現した一首。初句は字余り。その字余りが子どもたちの集中や、講演が始まる前の空気感を伝えています。作者の深い洞察力、感受性の豊かさが伝わってくる力強い歌です。

・白杖を折られし友の悲しみをそっと見ていた点字ブロック
 大井田弘子

白杖を折られた友人の想い悔しさに、点字ブロックが寄り添っていると描いた一首。声高に悔しさを訴えるのではなく、擬人法を用いて物語を紡ぎ出している。この表現に至るまで、どれほどの悔しさが作者の中に渦巻いただろう。悔しさを深化し短歌に昇華した作者に敬意を感じながら、読ませていただきました。

・雨音が歩く方向狂わせる傘高く上げ信号を聞く
 竹内昌彦

雨の音が周囲の音を混乱させ、作者が進むべき方向を見失なわせてしまう情景。恐ろしさを伴って聴覚がより鋭く描かれます。しかしそれでも、作者は傘を高くあげ前進します。日常の中の勇気が伝わってきました。

・白杖の先がすりへり亡き夫の少し長めの杖と歩きぬ
 越智サカエ

亡き夫の輪郭が見えるような一首。男性用の少し長めの白杖の手触りを通じて、亡き夫とのつながりや、夫も視覚障がい者だった背景などがじんわりと伝わってきます。

・境界線何もないけどここからは郷の潮の香心もふわり
 田上美智子

視覚的な境界を超えて感じることができる世界。土地によって感じられる香りが心にふわりと広がります。田村さん、歌が上手くて毎年選んでしまう。

その他の作品は、日本点字図書館等で読むことができます。はるみ先生や黒岩さんが選んだ作品も是非お読み下さい。

また、全国視覚障害者文芸大会には短歌以外にも俳句、川柳、随筆部門があります。
http://nichimou.org/activities/literature/
文字表現は視覚障がいと相性の良い分野の一つだと思っております。
ご周囲に、視覚障がいの方がいらしたら、お伝えいただけたら嬉しいです。

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