刑事物小説サンプル「True blue」
世界五分前仮説、というものをふと思い出した。
「世界は実は5分前に始まったのかもしれない」という仮説は、世界が5分前にそっくりそのままの形で、全てが非現実の過去を「覚えている」状態で突然出現したというものだ。この仮説を否定することは不可能なのだと言い、誰もいない高校の図書室で、自分とは何かと必死に考えていた友人の姿を思い出し、神崎ケイトは密かに、それが本当であればいいのにと思った。
仮に世界が今から5分前に現れたのだとしたら。今までの記憶が嘘なのだとしたら。
ケイトと、この哲