しばりミニチュア〜アイスの棒でBARをつくる〜
ミニチュアの世界は奥ぶかい。
世界には巧みにつくられた様々なミニチュアにあふれている。
あの細かさ、ただちいさいというだけで人々をひきつける。
いつか自分でつくってみたい!!
そう思いつつ、なかなかつくらなかった理由はいたってシンプルである。
最初にそろえるものが多い!!!
樹脂粘土、レジン、布、木、パソコン……、本気でやろうと思うと、いろいろと必要になってくる。初期投資が必要なのだ。
しかもあつかう素材が多いということは、それだけ技術も習得しなければならないということだ。
私の重い腰のうえに、さらに漬物石を置かれたような気持ちになり、実際に作ることは今までなかった。
その漬物石をこなごなに打ちくだくかのような画期的アイディアを先日思いついた。
素材がたくさんあって大変ならば、素材を一個にすればいいじゃないか!!!
一つだけなら簡単に用意できるし、同じ技術しかひつよう無いはずだ。
なぜ今まで気づかなかったのか。
そのときちょうどタイミングよく、いつも記事を投稿している自由ポータルZというサイトで募集するテーマが「棒」になった時期であった。
……よし!棒でつくろう!
こうして私は見えない誰かに背中をおされ、神秘のベールに包まれている謎の「しばりミニチュア」の世界に足を踏み入れたのだった。
棒といえば……、BAR!(英語で)
という安直な理由から、BARのミニチュアをつくることに決めた。
たくさんアイスを食べなくちゃな、と思っていたのだが、探したらAmazonで安く売っていたので、200本購入してみた。とりあえずアイスの棒で行けるところまでいこう。
……かたい!!!!
ぎりぎりハサミで切れるかたさだけど……。
けんしょう炎になりそうな予感でいっぱいである。
このBARが完成するかどうかは、手首との戦いになりそうだ。
これだけしか切ってないのにもう手首と指がちょっといたい。
はたして完成する日がくるのだろうか。
BARといえばカウンター。アイスの棒を、ボンドでつなげていく。
せっかくつくるのだから、草刈正雄が立ち寄るような、渋おしゃれインテリアをめざしたい。
カウンターのテーブルは継ぎ目を生かして模様にすることに成功。
できた…!!!なかなかいい感じだ。
アイスの棒けっこういい仕事している。
次はイスをつくろう。
この角度でボンドを固めないといけないので、
犬(はし置き)に手伝ってもらう。
だれたポーズでいるが、いつも箸をのっけたり、このように押さえてもらったり、初めて遊びに来た友達が「え〜!これかわいいじゃん〜!」と言って、最初のコミュニケーションのとっかかりとなってくれたり、いろいろ役立っている名犬である。
いつもありがとう。
ここまでイスをつくってから気が付いたのだが、BARにあるイスって4本足じゃないのではないか。
上の図①のような、ベルベットの、丸くて一本あしで回転するタイプのイメージだ。
つくることに集中しすぎて、BARのイスということを忘れていた。
そもそも棒しばりミニチュアなので、他の棒を使えばBARっぽいイスを作れたのではないか。
カフェテラスみたいなイスをつくってしまった。どうしよう。
………………。
このまま強行突破することにした。
これは自分との戦いというより、手首との戦いなのだ。
昼間はおしゃれカフェ、夜はムーディーなBARになる、2段回経営のお店に変更することにした。
草刈正雄は来ないかもしれないが、みちょぱとか若い女性に人気がでる店に路線変更だ。
ちいさいお店だけど、イス3脚はほしいところ。
見つめ合う犬たち。
ボンドが乾くまで時間がかかるので、同時進行でお酒の棚もつくっていく。
ソーシャルディスタンスを確保している犬たち。
なんとかできた……!!
アイスの棒だけでここまで作ったという達成感に酔いしれ、20分ぐらい見つめ続ける無の時間がながれた。
ハッ!と我にかえり、あらためてこれからどうするか考える。
こうやってみると、どちらかというと昼間のおしゃれカフェ感がつよい。
もうすこしBARっぽくしたい。
塗装でもうすこしがんばってみよう。
100均の茶色いニスをぬっていく。
おぉ!かなり渋くなった!!ムーディーなジャズの音色がかすかに聞こえてきた気がする。
いいぞ。この調子だ。
次は棚に入れるお酒を作っていこう。
ついにアイスの棒以外の出番がきた。
たまたま家にあった何かでつかった棒ののこりである。
長さをわかりやすくするためだけに置かれた修正液から、どことなく哀愁を感じる気がする。
細かく切った。これをお酒にしていこう。
こんなかんじ。紅茶の缶にもみえる。
たくさん作ったので棚においてみた。
お酒だけど、全部缶!
ボトルキープならぬ、缶キープしかできないお店になってしまった。
しかも冷えてない。
1段目にたくさんある白いものは、替えのグラスのつもりだ。
だんだんBARに近づいてきている。
他にもいろいろ小道具をつくってみた。
たばことはいざら。
レコードプレーヤー。
カクテル。
カウンターと合わせるとこんなかんじ。
みえる!!みえるぞ!!!けだるい桃井かおりみたいなママがたばこをくゆらせている姿が!!!
ドアの札をclosedに変えたあと、一人でウイスキーを飲みながらもの思いにふけるママの姿が脳裏に浮かんだ。
浮かんだからにはつくらねばなるまい。
openとclosedの札をつくりたい。そのためにはドアをつくらなければならない。
つくるとも!そこに棒があるかぎり!!
ほそい棒は竹串を使用した。
そしてついに完成したのがこちら。
おしゃれなジャズが流れる店内のうす暗い明かりの中に、ほんのりただよっているたばこの煙。何か物語がはじまりそうな雰囲気だ。
せっかくなので家にあるお人形をつかって、BARを再現してみよう。
BARシアター
「水割り」
〜END〜
棒しばりミニチュアは、大体のことはアイスの棒があればなんとかなるということがわかった。
しばりミニチュアの世界は奥深そうだ。
また違うしばりでミニチュアつくりたいな。
完成のお祝いにウイスキーでひとり乾杯する。
BARにいないけどBARを見ながらお酒を飲む、という複雑さに酔いつつ、いつの間にか夜は更けていくのであった。
おわり。