見出し画像

旅は、人を豊かにする。

それは思いがけないニュースだった。

|星組公演『BIG FISH』に関して
星組東急シアターオーブ公演『BIG FISH(ビッグ・フィッシュ)』につきましては、著作権上の理由により、ライブ中継、ライブ配信、ブルーレイ発売、ならびにタカラヅカ・スカイ・ステージでの全編放送はございません。
恐れ入りますが、あらかじめご了承賜りますよう、宜しくお願い申し上げます。

「ウソでしょ……」

東京、それも渋谷という地に耐えられる気がしなくて「今回は配信組になろう」と意を決したというのに。

しかもすでに抽選の申し込みはどれも終わっている。
残っているのは激戦間違いなしの、一般発売のみ。

「観られない運命なのかもしれない……」

最初はそう思った。
一般発売でチケットを獲得するのは至難の技だし、そもそも渋谷という地に耐えられないと思ったから配信組に徹しようと思ったのだ。

けれども一般発売日の朝いつも通り散歩していると、お花がとても美しく咲いていた。それも黄色い花が一面に。

その時、公演ポスターが頭をよぎった。

引用元|https://kageki.hankyu.co.jp/sp/revue/2024/bigfish/index.html

黄色い花たちが心地よい風に吹かれ、嬉しそうにたなびいている。

「楽しもうよ!」

そんな声が聞こえたような気がした。

「……よし、やってみるだけやってみよう。」


帰宅してパソコンを開く。
時刻はあと10分で発売開始の10時になろうとしていた。

そもそも一般発売に挑むのであれば、朝5時台からパソコンに張り付いていないと厳しいという私的統計がある。

案の定、何度リロードしても“アクセスが混雑しています”の表示ばかり……

「あと1分で10時になる……」

その時だった。

不思議なことにページにアクセスした。

驚きと興奮で思考が停止する。

「え…… いつのチケットを狙おうか……」

明らかにこのタイミングで考えることではない。

ログインできたことへの興奮と、「これは現実なのか?」という戸惑いに、わたしの脳はスローモーションで動いていた。

けれども秒針は刻々と進んでいく。

「えい!もう千秋楽にしちゃおう!」

そう思った瞬間、10時になった。

マウスを握る手が緊張で震える。
千秋楽の公演のボタンをポチッと押した。

「あ、カートにチケットが入った……」

しかし決済が完了するまでは気が抜けない。
いやむしろ、ここからが肝心だ。

冷静に、冷静に……

自分自身にそう声をかけながら、ページがエラー表示になっても「戻る」ではなく「リロード」を押す。

………

決済が、完了した。

なんと、チケットが舞い降りた。


初めてのひとり新幹線。
歳を重ねるたびに「初めての経験」は自ずと減っていく。だからとってもワクワクした。

スマートEXとやらを使って交通系ICにチケットを紐づけてみ他ところ、在来線からの乗り換えがとてもスムーズだった。

プラットフォームに着いて、自分の車両を探す。
「新幹線ってこんなに長いんだ……!」という新たな発見があった。

もうひとつの発見は、「富士山ってこんなに大きいんだ!」ということ。


写真で見るのとも違うし、飛行機の窓から見るのともまた違う。
その大きさと、美しいフォルムに感動した。

富士山を過ぎると新横浜まですぐだった。
観劇するのは明日で、今日は鎌倉へと足をのばすことにしていた。

鎌倉に来るのは何年ぶりだろう……
5年は来ていない。

素足で感じる砂浜と海水の感覚が懐かしい。
「冷たい!」と感じたのも束の間、3度目に押し寄せた波のなかで、私は心地よさを感じていた。

体からす〜っと溜まっていた何かが出ていく感じがする。
浜辺デトックスは気持ちいい。

久しぶりの友人との再会。
でもまるで、ついこないだも会ったかのような、心地よい感覚に包まれる。

星組公演を観にきたというのに、先日観た月組公演で月城かなと熱があつあつの私は、永遠に月組トークをかましてしまった。

月組を見て感じたこと、学んだこと。
まるで人生の道標かのように、私の原動力となり、また進むべき道を照らしてくれた月組。

そんなホットな月組トークをして、友人と共感し合える幸せな時間を過ごした。

友人オススメのカフェもとても居心地がよくて、すごく充実した鎌倉じかんだった。


結局、寝るまでの時間ほとんど月組のことについて語り合い、月組の映像をみて、月組三昧だった昨日。

なんなら観劇に向かうその直前まで、月組トークで盛り上がった。

友人にお見送りをしてもらい、今回の旅のメインイベントである渋谷にある東急シアターオーブ目指して電車の乗り込んだ。

電車でもまさかの月組コンサートの曲を聴いてテンションを上げている自分。星組が大好きだけれど、月組も大好きなんだなって改めて実感する。

そろそろ渋谷駅に着く時間だ。
それなのに、到着時刻に着いたのは東京駅だった。

「うそでしょ……」

品川を過ぎた時点で若干違和感を感じていた。
ただ初めて乗る路線だったし、この電車で間違いないと思い込んでいたから、そこまで疑うこともなくルンルン気分で月組の音楽を楽しんでいた。

余裕を持って出発したとはいえ、東京駅から渋谷駅まで30分くらいかかりそうだ。それに初めていく劇場だからアクセス方法もわかっていない。

焦ってもただ心と体を消耗するだけだと思い切り、とにかく山手線に乗り込んだ。電車の中ではもう音楽を聴いてる余裕はない。電車を降りてからの道順をスマホで調べる。

なんとなくは行き方がわかったような気がした。
それなのにいざ降りてみると、予定していた出口が工事中で使えなかった。

仕方ないから直感で進んでみる。
一か八かだ。
すでに開場時間は過ぎていた。

行ったり来たりしながら、なんとか公演バックを持っている集団を見つけた。エレベーターの前で並んでいる。

どうやらエレベーターでしか行けないみたいだ。

どうしても開演前にお手洗いを済ませたい私は、もう焦らずにはいられなかった。エレベーターを待っている時間がとても長く感じられる。

劇場に着いたのは10分前だった。
急いでお手洗いへと直行する。

しかし、長蛇の列だった。
「もしかしたら上の階は空いてるかもしれない……!」

どうか間に合いますようにという気持ちで、階段を登った。


駆け足で席を探す。
なんとか間に合ったようだ。
写真を撮る余裕もある。よし。

数ヶ月ぶりに見る推しに、高揚した。

「礼真琴の舞台は世界一!」

改めて、そう確信した。
いや彼女の舞台と出会うたびにそう思っているが、毎度それを更新してくる。

芸術というのは勝ち負けを競うものではない。
けれども私はこの人の「表現力」にビビビっとくるのだ。

今回の礼真琴はとくに演技がピカイチに輝いていた。
少年から老年まで、一人の人物をひとりで演じきる推しの姿に感動した。

とにかく上手い。上手すぎる。

かわいい少年から、イケイケな青年、ユーモアあふれるパパ、そしていつまでもトキメキを忘れないおじいちゃん。そこには、父と息子の絆や葛藤がとてもリアルに表現され、妻をとことん愛する夫の姿に心ゆすぶられた。

笑あり、涙あり、ハートウォーミングな、そしてとても素敵な楽曲で綴られる最高のミュージカルだった。

「出会えてよかった。」

そう心から思えた舞台。
遠征を決意して本当によかった。


初めてのひとり新幹線に、久しぶりの鎌倉と遠征。

限られた時間ではあったけれど、とても充実した時間で、ワクワクが詰まった2日間だった。

旅は、人を豊かにする。

そんなことを改めて感じた経験だった。
月組からヒントをもらいながら友人と語り合った時間、そして星組から楽しみと感動をもらいパワーチャージした瞬間。

コロナ禍以降、すっかり遠出しなくなった私を、推しが引っ張り出してくれたんだと感じている。

そして素敵な時間を共有してくれた友人には感謝の気持ちでいっぱいだ。

「星組公演を観る」というメインイベントに付随して、いろいろなことを考え、気づき、触れられた。

ひとまわり、いやそれ以上に成長した旅だった。
成長に年齢は関係ない。
大切なのは、いつまでも人生という旅を楽しみ、自分自身をアップデートすることだと思う。

すべてのご縁に、ありがとう。


いいなと思ったら応援しよう!

ころん
いつも読んでいただきありがとうございます☆

この記事が参加している募集