『スーパーエシカルマーケットのつくり方#1』 ~なぜ私がこのアクションを起こしたのか編~
それは、とても残念なことでした。
2021年8月7日(土)と8日(日)、軽井沢・発地エリアにある農産物直売所「発地市庭(ほっちいちば)」で『SDGsマルシェ』が開かれる“予定”だったからです。
『SDGsマルシェ』は軽井沢町と発地市庭の共催によるイベント。持続可能な社会を目指してアクションをおこしている企業や団体が参加、グルメやワークショップなどたくさんの遊びと学びを提供するはずでした。
実はこのイベントに私、ヤシマが発起人となった、エシカル(※)な商品を扱う店舗の方々をあつめる『スーパーエシカルマーケット』の出店も決定!
※エシカルとは倫理的なという意味。そして、環境や社会に優しい商品やサービスを選んで買い物をすることをエシカル消費といいます。
たとえば、無農薬で育った穀類から麹を作り、信州産の食材とかけ合わせ身体に優しいおやつを作っている「natura Asamakoji」さん。
廃材や端切れを利用してすばらしいプロダクトをつくるアップサイクルのブランド「Ph.D.(フッド)」さん。
日本国内で受け継がれてきた再生・再利用における技術や考え方を大切にしながら、日本ならではの持続可能な製品作りを目指す「co:do(コドウ)」さん。
などなど、エシカルなモノづくりをされている35店舗もの方々に参加いただいて“エシカルなスーパーマーケット”を開くことが決まっていたのです。
このマーケットにふらりと訪れるだけで、ごくごく自然にそんなエシカルな消費が楽しめる。軽井沢にそういった空間が生まれ、エシカルな空気がひろがっていく。そんな未来を描いて、ずっとワクワクしていました。
けれど――。
最初に「残念」と書いたわけは、この楽しみにしていた『エシカルマーケット』が急遽、延期になったからです。
軽井沢に移住して強くなった「動きたい」気持ち。
「軽井沢でエシカルなマーケットを開きたい」
そう思い始めたのは昨年末。きっかけは、東京から軽井沢に引っ越したことでした。
もともと自然豊かな場所での生活を夢みていた私は、緑豊かで東京へのアクセスもスムーズな軽井沢への移住を数年前から計画。
昨年、縁あってようやく移り住み始めていました。
木々と山々、高い空と澄んだ空気。いつでも手に触れられる自然との距離の近さでした。ここ最近首都圏で生活してきた私にとっては、とてもやさしく力強く、生きる力を与えてくれるようにも感じました。
越してきたばかりの頃(2020年12月)|Makina67 Fujifilm 400H
まとまった雪が振り始めた頃(2021年1月)|Makina67 Fujifilm 400H
大好きな景色(離山)|Makina67 Fujifilm 400H
自然との距離が近くなると、これまで知識として持っていた環境問題が、ぐっと身近になることも実感しました。
CO2の過剰な排出、それによる温暖化、異常気象。たとえば、そうした課題が、本当に本当に目の前の自然に影響を与えているんだなと身にしみるようになったのです。
別の角度からみると、軽井沢には豊かな自然環境に裏打ちされたすばらしい生鮮食品が、当たり前のように手に入る幸せも実感していました。
地場のスーパーやお肉屋さん、周辺の生鮮農家の方々のとれたて野菜を売る「発地市庭」などでは、ほんとうに新鮮で美味しい野菜や果物が手に入ります。
ただ、普段使いの日用品やスーパーにあるすべての食品が、どれも誠実に、環境負荷のないかたちでつくられているかまでは、なかなか見えにくい現実もやはりありました。
エシカルな世界は自分の足もとから。一人ひとりの消費行動からはじめられます。
環境汚染に加担するような生産体制でつくられたモノを選ばない。
児童労働や人権侵害をおかしてまで低コストで生産された洋服は買わない。
そんな選び方を誰しもすれば、多くの企業がエシカルなものづくりに舵を切らざるをえなくなります。それが当たり前になれば、世の中は変わる。私たちの生活もさらに心地よくなり、自然環境への負荷もずっとやわらかになる。
「やっぱり、何かできることをしたい!」
頭だけでとらえていた問題意識を、軽井沢の地が後押ししてくれた気がしました。自分ができることを、何かしらのアクションを起こしたい。そんな思いがつのって、溢れ出たのです。
もともと、私は本を読んで感動すると、その気持ちを手紙にしたため、著者の方に「ぜひお会いしたい!」と伝えるようなタイプでした。かつてフォトグラファーをしていた頃も、大好きなフォトグラファーの方に直談判して「弟子入り」を迫ったこともありました。
一歩踏み出せば、何かが変わる。踏み出さないのはもったいない。そんな気持ちが、ひさしぶりに再起動したんだと、いま書きながら思い出しました(笑)。
「どうやって?」をシェアしたいから。
では、何からどう手を付けたのか。
まずは今年の4月。すてきな生産者が揃う農産物直売所「発地市庭」さんに、したためた企画書をメールで送り(突然、すいませんでした!)ご提案しました。
軽井沢発地市庭:https://karuizawa.hotchi-ichiba.com/
コンセプトを込めて、名前は『スーパーエシカルマーケット』としました。
これ「スーパーマーケット」に「エシカル」をかけあわせた造語です。スーパーマーケットでいつもの買い物をするように、エシカルな商品を買うことがたくさんの人の日常になってほしい。気軽に、当たり前のように、エシカルなお買い物をしてほしい。そんな願いを込めました。
うれしいことに発地市庭さんに共感いただき、すぐにお話を聞いていただけました。軽井沢町にもご賛同いただいて、すばらしい出店者さまも数多くご紹介いただき、また発地市庭さんのWebサイトや地元ラジオ局、テレビ局などをご紹介いただき、告知の機会までもらいました。
すてきな出店者の方々との出会いと賛同は、本当にかけがえのないものでした。
なにせ私はただの個人です。単なる軽井沢の住人のひとりとしての提案にもかかわらず、「ぜひやりましょう」「協力します」と言っていただいた方々には、感謝と尊敬の念すらいだいていました(とくに発地市庭さんには本当にお世話になりました)。
しかし、です。
開催日となる8月7日、8日まで走ってきた数週間前、新型コロナウイルスのデルタ株を中心にした急速な感染拡大がはじまってしまった。そしてその波は長野県にもおとずれ、すべてが「延期」に――。
実は、私が延期を「残念」に感じた理由にはもうひとつありました。
開催までやり遂げることができたら、こうしたエシカルなアクションの起こし方、「How」の部分が、誰かにとって少しは役立つものになるんじゃないか、なったらうれしいなと感じていたからです。
エシカルな意識を持つ人は徐々に増え、「何かしらのアクションを起こしたい」と考えている人も少なくありません。けれど、「どこからどうやって行動にうつせばいいの?」と悩んでいる方もまた多いと感じていたからです。
ただ……考えてみたら、『スーパーエシカルマーケット』は中止ではなく延期。いまも歩みを止めずにいます。
むしろ、その再開のときまでに、これまでの「『スーパーエシカルマーケット』ができるまで」の顛末とノウハウ(とまで言えるかどうかは別として)を、私と同じような気持ちを抱えている方たちにシェアすることは、意味があるのでは。勝手ながら、そう思ったのです。
こんな小さな私でも、なんとか大勢の方々に助けていただきながら、エシカルなアクションを起こせたこと。その足がかりを、どこかのどなたかのヒントにしてもらえたらうれしい。そう考えました。
そこで、数回にわたってこれまでの「『スーパーエシカルマーケット』のつくり方」を順序立てて公開します。
企画書をどうまとめたか、プレゼンをどうしたのか、出店者の方々はどう集めて、宣伝告知にどんな苦労があったか……などを飾らずにこのnoteでシェアします。
「1人の100歩より、100人の1歩」。
日本電産の永守重信会長の言葉ですが、私がいま思うのはこれと同じです。私が走る100歩より、100人の方々が1歩踏み出してくれたほうがエシカルな社会は実現できる。
だれか1人でも十分。エシカルな未来を願う人の、小さいようで大きな1歩のお手伝いができたら嬉しく思っています。
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