道草植物図鑑No.26「アレチヌスビトハギ」
毎日あんなに暑い暑いと言っていたのに、
半袖で油断していると夜の寒さに驚くようになりました。
道草散策の季節がやって来た!
草むらにサクサク分け入ると、バッタが飛び跳ね、トンボが空中を静止しつつ悠々と飛んでいます。
なんだか空気の匂いも、まろやかな秋のものに変わったような。
そしてこの季節に道を歩くと、無意識に連れて帰ってしまうもの
通称くっつき虫「アレチヌスビトハギ」の果実です。
全く身に覚えがないのに、驚くぐらい服にべたべた張りついていますよね。
まるで忍者のようです。
そんなアレチヌスビトハギの果実を拡大してみると、細かい毛が生えているのがわかります。
ルーペで観察してみると、もっとわかりやすい。
触ってみると、マジックテープみたいな手触り。ザラザラしています。
アレチヌスビトハギの果実は、このザラザラの毛を動物の体に引っ掛かけて張り付き、分布を拡大していくのです。
さてこの果実、なんだか枝豆🫛に似ていませんか?
それもそのはず、アレチヌスビトハギはマメ科の植物です。
お花もマメ科っぽい特徴のある形をしています。
このような花は蝶が翅を広げたように見えるため、蝶形花と呼ばれます。
とても繊細で美しく、つい見惚れてしまう花ですね。
美しいと同時に、近くでじっくり観察する少し不気味に感じる花でもあります。
なんか、すごく見られている?
どこか2つの目のようで、視線を感じてしまうお花。
このような花の模様で、昆虫たちに「ここに蜜がありますよ〜」
とお知らせする植物はたくさんいます。
アレチヌスビトハギも同じように、この目のようなマークを利用してハチをおびき寄せています。
ただ、アレチヌスビトハギの場合は蜜は作らず、花粉自体がハチのご飯になっているようです。
花粉はハチにとって、タンパク質、ビタミン、ミネラルなどを含む大切なご飯なんだそう。
知らなかった〜!
ジーと花と目を合わせて観察していると、
ふと気づいたことが。
蕊が飛び出しているお花もあれば、何も無い花もあるのです!
この違いはいったい何?
雄花と雌花の違い?
でも何も無いのが雌花だったとして、雌蕊はどこへ行ったの?
ということで調べてみると、
なんとこの蕊、目のようなマークに誘われたハチが口吻を花に差し込むと飛び出してくるんだそうです!
その名も「爆裂花」!
蕊を飛び出させ、花粉を花に止まったハチのお腹に叩きつけて付着させるという技。
確かに確実に花粉を運んでもらえそうです。
ただ一度飛びだした蕊は元に戻らず、花粉爆弾は1度きりの作戦だということ。
飛び出してくるところを見てみたい!と思い、
試しに、近所の荒地に生えているアレチヌスビトハギを爪楊枝でツンツンしてみましたが、うまく飛び出してくれませんでした。
花の熟し具合か、突き方の問題か。
1度きりだからこそ、そんな簡単には飛び出せないのかも。
ハチになりきれてないんだな〜。
この方ブログではとても綺麗に飛び出しくる動画が見れます!
感動!
くっつく果実や、飛び出す蕊など
何が何でも縋りついて、遠くまでいってやるぞ!!
という執念が堪らなく好き。
あと私がこの植物に惹かれてしまう、大きな理由は萎んだ花です。
鮮やかなピンクから一転して、儚げなブルーに変化するのです。
時間とともに色が移ろう花、素敵じゃありませんか?
他に「ヤブガラシ」も、時間とともに色が変わる花です。
もう花粉や蜜は作ってないよ!という虫たちに対する閉店のサインなのか。
はたまた単純に花が萎れて色素を作らなくなっただけなのか。
いずれにせよ、私たちの日常に小さな感動をくれるお花たちです。
アレチヌスビトハギ
Desmodium paniculatum
マメ科ヌスビトハギ属
北アメリカ原産
開花期:8〜10月
生育地:路傍、荒地
出典:街でよく見かける雑草や野草がよーくわかる本/岩槻秀明
美しき小さな雑草の花図鑑/大作晃一・多田多恵子
散歩の山野草図鑑/山田隆彦
花と葉で見わける野草/近田文弘・亀田龍吉・有沢重雄
アレチヌスビトハギの爆裂花における蜜標類似マークの役割/高橋弘