あなたの説明がつまらないのは、説明しているから
コピーライターとして仕事をしていると、自分が書いたコピーにいろいろとフィードバックをもらいます。一番ショックを受けるのは「説明になっちゃってる」と言われること。
説明ーー。
手元にある学研の小学国語辞典では「ことがらの意味や中身がわかるようにして示すこと。」という意味。一見、いいように思えるのに。正しいように思えるのに。世の中には説明責任なんていう言葉があって、説明さえおぼつかないエラい人もたくさんいて批判されることもあるのに…。
広告のコピーは「説明」になっちゃってるとだめなんです。それはなぜか。
つまらないからです。
説明はつまらん!
コピーが説明になってしまうと、つまらない。つまらないコピーはつまらない広告を生み出し、だれの心にも届かず、だれの行動も変えられません。
どんなにわかりやすくても、説明はただの説明。必要としている人には聞いてもらえますが、興味がない人には無視され、ひどい時は嫌がられます。細かい字でびっしり書かれたトリセツ(取扱説明書)を1ページ目から熟読する人はほとんどいませんよね。
説明のつまらなさを言い当てた有名なテレビCMがあります。俳優の大滝秀治さんと岸部一徳さんが父子役で出演したキンチョールのCMです。
縁側に座っている年のいった父と息子の短いやりとりです。息子が父の疑問を説明しようとした途端に「つまらん!」と遮られる。
今よりももっとテレビの力が強かった2003年のCMです。初めて見た時びっくりしました。広告にまったく興味のないわたしの父も「つまらん!」がお気に入りで、「この親父がいいんだよな」と笑っていました。
企業は莫大な費用を使うのだから、商品のいいところをしっかり説明したい。でも、広告はまじめに説明すればするほどつまらなくなりスルーされてしまう。CMはテレビで15秒しか流れないのです。
このCMは暗に、説明したい企業と聞きたくない視聴者の関係を表しているようにも思えます。さらにその関係性を逆手に取った。こむずかしい説明を中断させると言葉は宙ぶらりんになり、逆に気になる。おもしろさで多くの人の心をキャッチしたのです。
感情を説明しても、わかってもらえない
映画を観たりライブに行ったりすると、「どうだった?」と感想を聞かれることがありますよね。そこで「感動した」「楽しかった」と自分の気持ちを言っても、へえ、ふーん、など大した反応がなかったり、話が広がらなかったりした経験はありませんか?
この現象、じつは「説明はつまらない」ことと深い関係があります。作詞家の松本隆さんが、ある記事でこんなことを言っていました。
松本隆さんが歌詞を書き、斉藤由貴さんが歌った「卒業」という有名な歌があります。卒業と同時に故郷を離れ上京する男子生徒への想いを歌った内容ですが、冒頭、こんなふうに始まります。
制服の胸のボタン、つまり第2ボタンをもらうのは卒業式でおなじみの光景ですよね。一方、「悲しい」や「うれしい」は卒業を説明するにはとても便利な言葉です。しかし作詞の神様は、「悲しい」や「うれしい」だけでは心に響く歌詞にならない、と考えた。だから第2ボタンという具体的なものを使って、感情を立体的に表現したのです。
具体的なもので言うほうが伝わる
作詞の神様のやり方を見習って、伝わる文章を書く練習をしてみましょう。たとえば、わたしがこの松本隆さんの言葉に非常に感銘を受けたことをみなさんに伝えたいとします。
すごいと思った、これは説明。勉強になった、これも説明。血が沸騰するほど興奮した、これならどうでしょう。うーん、大げさすぎてピンとこない。
スマホを持つ手が震えた。
お、なんだかマシな気がしませんか?
すごいと思った → 説明
勉強になった → 説明
血が沸騰するほど興奮した → 説明
スマホを持つ手が震えた → マシ
上3つは「感銘を受けた」を言い換えて説明しているだけなので、わかるようでイマイチわからない。でも最後は、具体的なもの(スマホ)とそれを持つ手の動きを描写することで「記事の内容によって心が揺さぶられている」ことがわかる。リアルに感じられます。
よくある言い方は意味が早く伝わるけど説明になってしまって、つまらない。具体的なものや身体表現を使って描写するほうが情景が浮かび、相手に感情が伝わるのです。
キャッチコピーを書く、感想を伝える、SNSで発信するなど色々なシーンで使えるやり方だと思うので、ぜひ意識してみてください。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。スキやコメント、フォローお待ちしています。
文:シノ
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