新人コピーライター、身近な”優先席気まずいモンダイ”を考えてみた。
先日、広告・クリエイティブ専門誌『ブレーン』で開催されているコピーコンテストの課題にこんなお題がありました。
「譲り合って座りましょう」のほかないじゃないか、というかもうその気遣いは広く浸透しているような…。と思ったのですが、下の文章を読んでお題の趣旨がちょっと違うことに気づきました。
今回は、優先席を使いたくても使えない人がいるとか、マナー違反をなくしたいとか、優先席の環境を整えることが目的ではないようです。
譲り合いの「気遣い」が誰にでも浸透しているからこそ生じる、ちょっとした気まずさ、わだかまりをほぐしたい。
もし、自分がスマホを見ていたがために隣の高齢者に席を譲らせてしまう、なんてことをしたら罪悪感でいっぱいです。それに、高齢者の立場でもそんな悔いが生まれてしまっていたなんて想像できませんでした。
「気遣い」が「気まずさ」につながる…なんだか厄介な匂いがしますが、課題の事例よりも”あるある”なやりとりで考えてみると分かりやすいのです。
気まずさを生むのは思いやりのせい?
優先席でこんなやりとりを見たことがあります。
謙虚!!!!日本人めちゃくちゃ謙虚!!!!
譲られても、まずは「大丈夫です」と遠慮。
もちろん声をかけた側は譲る前提でいるので、再度勧める。
それにも関わらず「大丈夫」の一点張りで座ろうとしない、もしくは「すみません」と申し訳なさそうに座る。
このやりとりにあるのは自分勝手な押し付けでもやせ我慢でもありません。むしろ、互いの相手を思いやる心が交差して押し合っている。
また、多くの人に「人に迷惑をかけたらダメ」という潜在意識があるのも影響していそう。
思いやりが”優先席気まずいモンダイ”を促進させているのです。
譲られ上手が増えますように
世の中には「譲り上手」がたくさんいます。でも「譲られ上手」は比較的少ないのかもしれない。
アクションを起こす側の姿勢が話題になりやすいですが、親切なアクションを受けとる側の意識や態度がもっとあたたかいものになってほしい。
譲る側は良心を働かせたつもりなのに、断られてしまうと途端にバツが悪くなるものです。そうなると、次にまた同じようなアクションを起こすことに勇気が必要になります。
譲ってもらったら「迷惑をかけてしまった」と思うより「優しくしてもらった」と思いたいし、素直に「ありがとう」と伝えたいですね。
優先席に限らず、他人への親切や手助けへのハードルが低くなればいいなと思います。
公共マナーの課題を上手に伝えている例
今回の課題と似た系統で、実際に話題になったCMがあります。
ACジャパンの「寛容ラップ」です。キャッチコピーは「たたくより、たたえ合おう。」
コンビニのレジでお金を財布から出すのに手間取るおばあさん。後ろには行列ができています。並んでいるコワモテの男性が靴音を鳴らし、急かし始めたかと思いきや…
後ろで待たせてしまっていることを申し訳なく思うおばあさんに対し、男性は「誰も怒ってなんかない アンタのペースでいいんだ」と声をかけます。おばあさんも予想外の優しさにほっとしつつ、「(怖い人だと)見た目で判断していた」と反省。最後は「みんな違うことは当たり前であり、ひとり一人にリスペクトを」というメッセージで終わります。(※画像は記事より引用)
自分とは異なる価値観や状況にいる他者を尊重し、思いやることの大切さをラップというエンタメを活用し、上手く伝えています。
私が感じた、このコピーのいいところは3つ。
・わかりやすい
・見た人が誰も傷つかない言葉選び
・よい未来が見える
公共マナーなどの身近なテーマはターゲットが広く、わかりやすい表現が必要。性別も年代も問わずいろんな人が目にするからこそ、誰も傷つかない表現が必要。そして何より、「こうしよう」と提案することで先の未来が想像できます。見た人が「たしかに。よくなりそう」と思えたらアクションにつながる。
複雑な課題にぶつかったとき、
①自らの経験から掘り下げて想像してみる
②似た事例を探し、どのように解決しているのか参考にする
この2つのステップが課題の本質を捉え、コピーを考えるうえで役立ちました。いきなり書こうとせず丁寧に考えること、大事ですね。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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文:マキ