前納依里子/ Yoriko Maeno

ベルリン在住の振付家。元東京ディズニーランドダンサー。1児の母。主にダンスシアターの公…

前納依里子/ Yoriko Maeno

ベルリン在住の振付家。元東京ディズニーランドダンサー。1児の母。主にダンスシアターの公演活動、ダンサー、ダンス講師として活動中。noteでは、ダンス&クリエイション、ベルリンでの生活で感じたことなどを綴っています。www.yorikomaeno.com

最近の記事

ベルリンから本帰国最後のWS仕事を終えて

先週末、ベルリンではひとまず最後となるクリエイティブダンスWSを終えました。ベルリンでのWSは久しぶりでしたが、結論から言うと香川移住直前にこのドイツ生活&30代の10年間の集大成を感じさせてくれた時間となりました。とてもざっくばらんに私的なメモとして書くので、読みにくかったらすみません。 1.不安定な時代に文化が果たす役割について 私が今回最も胸を打たれた大きな確信がこれです。 コロナが落ち着いたのもつかの間、2022年にロシアによるウクライナ侵攻が始まるや否や、ヨーロ

    • ベルリン州立バレエ観劇、現代バレエの現在地を考える

      はじめに10月30日、ベルリン州立バレエの新作「Bovary」をドイチェ・オーパーに観に行きました。この記事では、この観劇を起点として主にベルリン州立劇場やバレエ・ダンス界の同時代における変遷を、いち舞台ファンとしてお伝えしたいと思って書いています。私は評論家ではありませんが、振付家としての仕事に関与する最低限の報道や観劇を通して業界ウォッチはしている立場で、そんな私の知る範囲でのお話となりますことをご了承ください。 この記事の内容は、ほとんど日本のバレエ・ダンス界では聞か

      • 日記帳1-2023。助成金報告書を書きながら。

        今絶賛助成団体への報告や決算作業を2プロジェクト分していてなかなかつらい。 ひとつはリサーチのO_V(オーブ。有機性とデジタルの融合の意味。)で、もうひとつは海女作品。O_Vは有機生命や自然とデジタルとの関係性に関するリサーチでもう一つは鳥羽の歴史文化資源である海女。全く違うように見えて、実は根っこのところで繋がっていることに気づく。自分が40歳を目の前にして、かつ子どもなんかも産み育てて生物としての役割は完了した気がしているというか、今が江戸時代なら数年前に死んでるなとリア

        • デジタル×ダンス。初のリサーチプロジェクトを終えて。

          約半年に渡るリサーチプロジェクトが終わった。すぐにでも11月に本番を控える海女作品のリクリエイションに取りかからなきゃいけない状況だが、何かしら形式的でもいいから、私の中でボコボコと生まれかけた何かを、半年間で学び発見したモノたちを記しておかなければ次に進めない心持ちである。儀礼とはだらりと流れていく時間や整理のつかない心情に人工的な節目によって区切る機能を持つ。とにかくこのままサクッと次に進めないくらい密度の濃いリサーチだったのだ。 タイトルはO_V"(オーブ)。ドイツ語

        ベルリンから本帰国最後のWS仕事を終えて

          メタバース時代に生存理由失いそうな自分のメモ

          この方のお話、この誰も予測できない未来を一気に駆け抜けるような展開でものすごく面白かった!!(写真はパリの古いアンティーク人形のお店。) 私は2005年周辺の学生時代は、メルロポンティとかマクルーハンとかフーコーや浅田彰系のメディア論とか身体論の哲学論考がすごく好きだったけれど、2010年以降は現実のテクノロジー進化のスピードが速すぎて、そしてデータ主義の加速で社会人間哲学や評論もなんだかこの前後数年限定を視野に切り取ったようなものばかりで、本腰いれて読む価値のある思想家は

          メタバース時代に生存理由失いそうな自分のメモ

          ユネスコ国際ダンスカウンシルの年次総会@Paris

          去る12月13日、ドイツの隣国フランスはパリにて、表題の会に参加してきました。 いろいろと謎が多いというか、私自身20年近くダンスの世界にいる割にひとつも名前も話も耳にすることのなかった組織なので一体全体どんなものか、お隣だし25年ぶりのパリだし行ってみるか!ということでふらりと参加してみました。 多分皆さんもほとんど知らない方が多いのではと推測しますので、私の経験した範囲内でご報告できたらと思い記事にしてみます。 1. 総会前の事前情報 正式名称Internationa

          ユネスコ国際ダンスカウンシルの年次総会@Paris

          人生初のドイツ語インタビュー、舞踏の影響と日本人の宗教観など

          タイトル通り、もうすぐ人生初のドイツ語インタビューを振付家として受けます。インタビューは今まで日本語と英語で数回受けた経験があるけれど苦い思い出しかない...。そしてまだやっと使えるようになって数年のドイツ語なんて恐怖しかありません。 とはいえ質問は事前にもらっているので準備はできるのですが、半分は舞踏に関する話題。 ヨーロッパで日本人がダンスで仕事をしていると、かなりの割合で舞踏ダンサーなのか、舞踏は教えられるのかと聞かれるのはヨーロッパ在住ダンサーあるあるかと思います

          人生初のドイツ語インタビュー、舞踏の影響と日本人の宗教観など

          欧米ダンスカンパニーや振付家の日本での受け取られ方の過剰さについて

          先日ベルリンのダンス関係者と久々にダンス談義。楽しすぎて6時間があっという間に過ぎた。(写真は日帰り旅行で行ったブランデンブルグの街。帰りの電車内で執筆中。) その中で日本のダンスに関わる人たちにぜひ伝えたいトピックがでたのでここで書いてみます。それは私も東京ダンサー時代にいつも強く強く感じていたものの、ほとんど誰の共感も理解も得られない考えだったので結構書くにも勇気がいる話です。 今は時代の空気が変わったので、そしてこういう見方があるということを知ることで救われる人もいる

          欧米ダンスカンパニーや振付家の日本での受け取られ方の過剰さについて

          デジタル×ダンス、360°動画ダンス作品を撮影し終えて考えること

          コロナ禍始まってすぐデジタル×ダンスかー、と考えてすぐに頭に浮かんだのがVRで、その流れからあれ360°カメラなんてのが意外と手軽に手に入るっぽいとなり、同時に10年前から気になってた映像制作ソフトAfter Effectsの勉強に着手したらラッキーにもプレミアも同じような仕組みだったのでVR映像編集も案外できる!となって、当初無謀に思えた360°企画が何とか形になったという流れです。 今絶賛編集中ですが、これが空間を全天球自由に見渡しながら画角を設定していくのが非常に面白

          デジタル×ダンス、360°動画ダンス作品を撮影し終えて考えること

          ロックダウン下でのダンス作品クリエイションの現場入り前夜に。

          予想外の形で異国ドイツに移住して4年、すっかり以前の執着を捨てたつもりだったのにまだまだ残骸がこびりついていたようだ。 しかしこの執着の中身は昔とは全く違う。 昔のような自分に対する自己愛的なものでも、他者に対する依存的なものでもないことがはっきりしている。 それは、私が生きる中で何としてもこれを完成させなければならないという執着。 それが素晴らしい出来になる自信があるわけでもない。尤も、これまでやったことのない専門家でも経験者の少ない領域に踏み込んでいるのだからそんな

          ロックダウン下でのダンス作品クリエイションの現場入り前夜に。

          ベルリン芸術大学院で勉強したかった話からの、アートの社会有用についてよもやま的に。

          最近突如として勉強したい欲がすごい。秋から映像制作ソフト勉強してるけどそういうスキル系じゃなくて、哲学系の1ページ読むのに10分かかるような本と格闘したい。自己満足の極致ですが...。 ドイツは基本的には年齢関係なく大学院などで勉強できるから、ドイツキャリアもネットワークもない私は移住最初の目標はもちろん大学院だった。 大学院に行ってハイデガーとかドイツ語で読むのか!とドキドキしていたけど、今年頭にベルリン芸術大学院受けたら、まさかの来る必要なし認定受けて落ちました。 移住

          ベルリン芸術大学院で勉強したかった話からの、アートの社会有用についてよもやま的に。

          海女ダンスシアターのクリエイションメモ

          2020年初頭、ベルリン移住後の最初の目標だった自治区助成金を受給できるとの知らせをもらった。プロジェクトテーマは海女。2019年秋からリサーチはしていたものの、それから急ピッチで4月の初演に向けて準備を始めた。3月頭にリハを本格始動したと思ったらその後すぐにロックダウン。現在2月の公演日程を組んで準備中という状況である。(写真は舞台美術担当の方による美術スケッチ。) この海女作品に関しては本当にいろいろな思いがあるのだが、今回は振付部門で大きな発見をしたのでここにメモして

          海女ダンスシアターのクリエイションメモ

          多様な人々がそれぞれの喜びを感じられる労働と余暇を実現する社会について考える in Berlin

          ここ数年、日本でも多様社会の構築ということが多く叫ばれてきている中でタイトルの件がよく頭に浮かぶ。それはそういう社会の実現こそが経済成長と同じくらい日本の人々にとって命綱であるともう十何年感じてきて、最近ベルリンでダンス関係の仕事を転々とやり始めたり、ドイツの地方都市開発の本からヒントのようなものをいただいたからだと思われる。 ちなみにその著書の主な主張は、ドイツ地方社会が充実し魅力を発揮しているのはVerein(フェアアイン)の功績によるものが相当に大きいということ。

          多様な人々がそれぞれの喜びを感じられる労働と余暇を実現する社会について考える in Berlin

          ベルリンで実感する、日本語(能力)の稀少性

          日本語の包括的能力(話、読、書)がものすごく貴重なことのように思えてきている。 今日もまたロシア系移民の方々に日本語の構造を説明して目を丸くさせられた。 ひらがな、カタカナで約80文字+終わりなき漢字習得。小学校から高校までにこんなにも国語修得に時間と根気を費やす言語は他にあるのだろうか。。。 中国語はどうなんだろう。訓読み音読みやひらがなとのコンビネーションがないだけでも日本語よりは楽なんじゃないかと想像してしまう。 一方で欧米言語、アラビア語、昔軽くかじったタイ語など

          ベルリンで実感する、日本語(能力)の稀少性

          コロナ禍@ベルリンのバレエクラスからダンス愛がふつふつと。

          今日は初めてのスタジオでもう1年以上ぶりにバレエクラスを受けた。こじんまりしたアットホームなクラスで、気分は10代のときにタイムスリップ。不思議なもので、バレエテクニックはクリアな規律と合理でできているので世界中どこへいっても大概故郷の地元のスタジオに連れ戻されてしまう。 私は自分がバレエ向きではないことを当初から理解していたので楽しいという感覚は一切なかった。ただ身体を意識的に制御することで客観的な見え方がグッと変わったり、バレエという生来の身体のあり方の逆を目指す負荷の

          コロナ禍@ベルリンのバレエクラスからダンス愛がふつふつと。

          ダンスは仕事なのか? 仕事の定義や報酬について。(旅先雑感)

          先週末、コロナ緩和に乗じて週末旅行に行ってきました。友達家族と共に。 そこでの1コマ。 3歳になったばかりの娘が友達とままごと遊びをしてる最中、「私はお仕事なの。ダンスしてるの。」と言ったのを聞いた企業勤めのママ友がびっくりしていた。 やっぱり仕事とダンスは通常結び付きにくいんだなあ(ヨーロッパ人でも)。 娘にとっては生後2ヶ月から劇場やパフォーマンス、リハの現場に出入りしてるので自然な発言。世間の自然と彼女の自然の圧倒的ギャップに改めて気づかされた瞬間だった。 仕事

          ダンスは仕事なのか? 仕事の定義や報酬について。(旅先雑感)