2025年(令和7年度)に向けて大学入学共通テストの問題作成の方向性を公開
独立行政法人 大学入試センターは2022年11月9日、今年度から高校で新学習指導要領が始まったことを受け、2025年度(令和7年度)から出題科目などが刷新される大学入学共通テストの問題作成の方向性および試作問題等を公表しました。試作問題と正解表をWebサイトで公開しています。情報Ⅰについては試験時間や配点も設定され、本番を想定した問題の全体像が初めて明らかになりました。
情報の問題作成方針に関する方向性
「情報」の問題作成方針に関する検討の方向性としては、「日常的な事象や社会的な事象と情報との結びつき、情報と情報技術を活用した問題の発見・解決に向けての探究的な活動の過程、及び情報社会十人の関わりを重視する。」と記載されています。
試作問題を見てみますと、現在の高校1年から必修化され初出題となる「情報Ⅰ」は、日常の場面を題材としてプログラミングやデータ分析の力を問う出題が目立っています。
浪人生向けの経過措置科目として「旧情報(仮)」も設置。
今年から新たに高校の必履修科目となった「情報」は、「情報Ⅰ」が出題科目となりますが、浪人生向けに経過措置科目として「旧情報(仮)」が設けられることになりました。
試作問題も公表されました。「情報Ⅰ」と「旧情報(仮)」は2025年度大学入学共通テストで初めて出題する科目であるため、受験者数が1万人未満の場合も得点調整の対象とすることとしています。
試作問題の問題構成を見てみよう!
試作問題「情報1」の問題構成を見てみると、情報デザイン分野は1題出題されており、配点としては4点/100点が配置されていることがわかります。
第1問の問4(2) コミュニケーションと情報デザイン。
情報における情報デザインの問題を見てみよう!
第1問の問4(2)「コミュニケーションと情報デザイン」を見てみると、情報デザインでは基礎的な知識として知られる、リチャード・S・ワーマンの「究極の5つの帽子かけ」について問われています。
出題テーマのリチャード・ソール・ワーマン「究極の5つの帽子かけ」とは?
リチャード・S・ワーマンは、「それは『情報』ではない。」という著書で知られているアメリカ合衆国の建築家、グラフィックデザイナーです。TEDカンファレンスの創始者としても知られています。
「究極の5つの帽子かけ」は別称「LATCH」としても知られリチャード・ソール・ワーマンによって提唱された、情報を分類・整理するための5つの方法です。「情報を分類・整理するための方法はこの5つしかない」としています。LATCHは、Location・Alphabet・Time・Category・Hierarchyの頭文字をとったものです。
学んだ知識を身近で具体的な事象で活用できるかがポイント
今回のポイントは2つあるように思いました。
1つは、「究極の5つの帽子かけ」で知られる、情報を整理し分類する5つの項目が知識的に理解できているかです。
もう1つは、知識を身近な事象で生かし情報の理解に役立てられるか(活用力)です。
空欄(ケ)の解答は「0」の「場所」です。
配点:1点。
問題文にも「場所」は物理的な位置を基準に分類方法であること、また、事例として大学のキャンパスマップと記載されていることもあり、しっかり問題文を読み込めば解ける問題だと思いました。
空欄(コ)(サ)の解答は「3」カテゴリーと「4」階層(連続量)です。配点:2つとも正解して3点。いずれか1つのみ正解は1点。
こちらは図5において情報がどのように整理・分類されているのかを解釈しなくては正解が得られません。
まず最初の角丸の部分(下図)で、この図では「温泉がある宿」というカテゴリーで分類されていることがわかります。
さらにその下の表を見てみると、温泉宿の満足度評価が1位から順に6位まで表示されていることがわかります。そして「順位」の横に「総合評価」が5段階(星印)で記載されています。つまり、1位から6位まで満足度が「高いものから低いものまで(連続量)」ランキングされているのです。このため、この分類方法は「階層(連続量)」によるものだとわかります。
試作問題
日頃から情報を読み解く習慣が必要
問題を読み解くためには、「各問題の概要」についても目を通してみることをオススメしたい。
第1問の問(4)の概要としては、『情報デザインの考え方について,問題文から読み取った内容を踏まえて,示された情報がどの基準に基づいて整理されているかについて考察できるかを問う。』と記載されています。
日本経済新聞で河合塾の浅野晴久・教育企画開発部長は以下のように話されています。「考察する力が問われる。プログラムなど情報の知識や技術が身近な事象にどう活用されているか、普段から考えてみることが重要だ」。
情報デザイン分野の出題においても、身近な事象で活用できるよう普段から接しておくことが大切だと思いました。
情報社会を生きる高校生は普段から膨大な情報に触れているわけですが、主体的に情報にアクセスし、意味を読み取るクセがつくと良いと感じさせる出題内容でした。
参考資料・引用資料
日本経済新聞(Webサイト)共通テスト新設の「情報」試作問題 デジタル実践力問う(2022年11月9日)
それは「情報」ではない。―無情報爆発時代を生き抜くためのコミュニケーション・デザイン リチャード・ソール・ワーマン著
大学入試センター 令和7年度試験の問題作成の方向性,試作問題等(2022年)
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