歌手 イ・サンウン紹介シリーズ vol.3
1997年にリリースされたアルバム「외롭고 웃긴 가게」(寂しくて笑わせる店)に収録されたラストナンバーで、イ・サンウンの隠れた代表曲(かな?)「어기여디어라」(オギヨディオラ)と、それからおよそ4半世紀が経った2019年にリリースされた最新アルバム(かな?)「fLow」より、ラストナンバー「오아시스의 밤」(オアシスの夜)2曲を同時に紹介したいと思います。
「オギヨディオラ」では河を、「オアシスの夜」では砂漠をと、ともに自然物を中心に添えた曲です。河と砂漠、まるで反対関係にありますが、両曲ともそこへ空や風を介在させることで、頭の中で一気に空間・情景が広がります。また、2曲ともシンプルな音源と、静かで優しいポップなメロディーに、心の奥底にしみる唯一無二の歌声が乗り、私たちを普遍へと導いてくれます。
共にアルバムのラストを飾るにふさわしい曲です。
静かな部屋で、目を閉じ、自然の中に、自分一人佇むことをイメージし、自然らと言葉を交わし、心の奥底にある真実に向きあう時間のための触媒となる2曲です。
「fLow」がリリースされた直後、世界はコロナ禍になりました。それから4年、コロナ禍は一旦「収束」しましたが、経済格差はますます広がりを見せ、力を持った人の権力は肥大化しすぎ、世界各地で戦争は起き、日本や朝鮮半島でもその足跡が近づいているようで、いつになく緊張感と不安感が高まっています。
昨年の京都・奈良のライブにて、「コロナ禍はとてもつらかった」と語っていたイ・サンウン。
また、人の心を癒すために歌っているとも語っていました。
そう思うと、そろそろ新しい「触媒」が欲しくなってきました。
オギヨディオラ(1997年)
黒く透きとおった あなたの瞳
額を伝う 汗のしずく
あなたの背中は 紅の土
種をまいてみようか
陽はのぼり沈む 月ものぼり沈む
流れ流れて どこへ行くのか
陽はのぼり沈む 月ものぼり沈む
あの天球を 漕ぎ渡ってゆく
オギヨディオラ オギヨディオラ
風がしずまった 雨もあがった
さあさあ 舟を漕げ
天空の星も 大地の花も
ひそやかに わが道を生きていくように
たがいに 違う体に生まれ
違う息で生きていようとも
陽はのぼり沈む 月ものぼり沈む
流れは天に届き
陽はのぼり沈む 月ものぼり沈む
たがいに心は通い合って
気がつけば 河が微笑んでいる
私たちも きっと微笑んでいる
捨てて 捨てて 忘れて忘れて
風が動きはじめる 雨も落ちてくる
さあさあ 舟を漕げ
風が止まる 雨もやむ
さあさあ 舟を漕げ
オギヨディオラ オギヨディオラ
オギヨディオラ オギヨディオラ
*日本語訳は姜信子さん。昨年の京都ライブで配布された資料から勝手に使わせてもらいました。
オアシスの夜(2019年)
深呼吸を
してみて
世界は
オアシスの
蜃気楼に満ちた
その昔
海だった
砂漠なんですよ
胸の中から溢れ出る
光で
道に迷うことはないでしょう
生きるのは
果てしない砂漠
行ってまた行かなければ
辿り着く水辺
夜空に
雨のように降る星
西風が吹く
そこを
知っている
優しい瞳のラクダと星は
みずみずしい泉
喉の渇きすべてを洗う
心の奥底
そこにある
オアシス
歩かなきゃ
歩かなければならない
まだ砂漠だから
西の風が吹く
そこを
知ってるでしょ
優しい瞳のラクダと星は
みずみずしい泉
喉の渇きすべてを洗う
心の奥底
そこにある
オアシス
西の風が吹く
そこに
優しい瞳の人々と
ヤシの木々
みずみずしい水
涙を洗い流してくれる
砂の風を
越えなければ見つからない
オアシス
イ・サンウン 大阪LIVE #百年芸能祭
●7/19(金)午後7時開演
●吹田メイシアター小ホール
●予約フォーム https://x.gd/HLlAP