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入院を通じ、人と同じごはんを食べる瞬間が愛おしくなった。

先日まで数日間入院していた。

人生初めての入院。

できたばかりの綺麗な病院への入院だったからか、たくさんの人の支えに安心できていたからか、あまり不安や怖さもなく入院当日に。

案内された部屋は4人部屋で、私の他に1人、先に入院されている方がいた。なのであとのベッド2つは空き。

同室の方の名前を見ると、名前のいちばん下の文字が同じだった。親近感が湧いた。

カーテン越しに看護師さんとやりとりする声が聞こえる。

年齢は私のおばあちゃんくらいの高齢の方のようだ。

痛みがあるのか、息をするたびに「うー」みたいな声が聞こえる。

何かをしてもらった時に、

「ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
「おかげさまで」

など礼儀正しい言葉がちらほら聞こえる。

で、いきなり冗談も言うお茶目さが可愛い。


癒される。



私は入院した当日から処置のため丸1日絶食絶飲で、お腹を空かせていた。

なぜかカーテン越しのおばあちゃんもごはんを食べず寝ていた。


翌朝、朝ごはんを食べる。

歯列矯正中なので、柔らかめの白米と、魚や野菜。どれも出汁が効いている。(こういう食事めちゃくちゃ好き)

カーテン越しにおばあちゃんもご飯を食べているのが分かる。

(昨日は私に気を遣って食べなかったのだろうか…?)

プラスチックの食器の音がカタカタ聞こえる。

私はむしゃむしゃ食べる。


(おそらく)同じようなメニューを2人とも同じ時間に食べている。

なんだか幸せだった。

おいしいね!


ゆっくり、私の倍以上の時間をかけて「あー」「うー」と声を出しながら食べているおばあちゃんに安心した。

次の日は術後のため別室で、おばあちゃんとは部屋が離れた。

翌日にまたおばあちゃんと同じ部屋になり、ごはんを食べた。

ごはんそのものはもちろん、カーテン越しに一緒に食べる時間が楽しみだったから、おばあちゃんがごはんを食べる音が聞こえないと心配になった。

その時初めてあまりごはんが美味しく感じられなかった。


私にも、「誰かと一緒にごはんを食べる時間が心の底から愛おしい」と思える感覚があるんだと気づいた。

約20年前に会食恐怖症になってから、心の底から誰かとごはんを食べる時間が愛おしいと思える瞬間はおそらくなかったと思う。

*会食恐怖症:人との食事に過度の不安や恐怖を感じてしまう社交不安症のひとつ

入院していた数日は、おばあちゃん、医師、看護師さんやスタッフさんたちのおかげでとても安心して過ごすことができた。その他にも、陰ながらたくさんの方が関わっていたのだと思う。

入院していた病棟も、使いやすく過ごしやすく休みやすく計算し尽くされていた。

その安心のベースと出会いの中で、「心の底から誰かとごはんを食べる時間が愛おしい」と思える瞬間が訪れた。



病院から帰宅した日、母と、ずっと行きたかった喫茶店に行った。

純粋に母と行きたい気持ちが湧いたのと、入院前と入院中に心の健康も含めたくさんサポートしてくれたお礼を込めた。

手術の関係で数日洗えていないぼさぼさの髪と超適当な服でお店に行ったけれど、店主さんがあたたかく迎えてくれて嬉しかった。

同じものを、「おいしいね」って気持ちや味や幸福感を分かち合えること、その瞬間に喜びを感じた。


その数日後、家族でごはんを食べている時にも、同じような瞬間が訪れた。

今、同じようなものを食べて、口の中が幸せだなとか、なんかつながってる感じがした。

今年に入ってから、「自分の健康を大切にすること(自分への思いやり)」「思いやりを受け取ること」をずっと意識してきた。

そして自分への思いやりと人から思いやりを受け取ることの次にある循環、「思いやりを渡すこと」を自然としたくなり、その循環を体感していること自体に幸せを感じていたのかもしれない。


そういえば、この日もまだ本調子じゃなかったので1日中パジャマ姿だった。

焦りは全くなかった。これまで何が許されていなかったわけではなかったと思うのだけど、許されている感じがした。

かっこつけない自分の方が、幸せを感じやすいのかもしれない。自分への思いやりだ。

もっと味わい深く、スローに、ゆっくりどっしりと今ここを味わっていきたい。



はじめは入院も手術も「なぜ私が?」という気持ちだったけれど、非日常を過ごすことで得られたことがたくさんあった。有難いことだ。

手術が決まったり入院する過程で、他にもたくさんの変化が起きた。

この記事以外にも書きたいことはまだまだたくさんある。


一見ネガティブに思えることも、自分の心次第で変わっていき、自分の心が変われば周りの人が変わっていき、世界も変わっていく。

同室のおばあちゃんがよく口にしていた、
「ありがとうございます」
「よろしくお願いします」
「おかげさまで」
この言葉を口にせずにはいられない時間を過ごした。

おばあちゃんと過ごした時間を忘れずにいたい。

自分の健康を大切にすること(自分への思いやりのまなざしを向け続けること)をこれからも大切にし続けたい。

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