K-POPを調べてみた②〜グローバリズム〜
1. はじめに
本レポートはK-POPに関する自己学習のために作成しました。
K-POPの成り立ちや背景を知ることで、コンテンツビジネスに活かせるエッセンスを発見するために調査・作成しています。間違っている点があった場合、ご指摘いただけると大変嬉しいです。
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内需だけで産業として成り立っていた日本の音楽産業と、国内市場だけでは成り立たないため、最初から海外に目を向けているK-POP。
K-POPがどのように世界のマーケットにアプローチしているのか、その思考の裏側を探ります。
2. 構成メンバーの多国籍化
事例1. TWICE(JYP)
TWICEの成功で、日本人メンバーが在籍することがK-POPの一大消費国である日本プロモーションにおいて、言語によるコミュニケーションや親近感の点で有利に働くこともあり、日本人メンバーを擁するグループが続々とデビューするきっかけになったのではないでしょうか。
また、TWICEのユニットで、日本人メンバーであるミナ、サナ、モモから構成される「MISAMO」は単独でgoogleのTVCMに出演するなど、ローカライズされたキャスティング提案が行われていたと想像できます。
事例2. NCT(SM)
NCTは、日本・韓国・アメリカ・カナダなど多国籍メンバーで構成されており、複数のユニットが存在します。
グループ全体としてみると多国籍ですが、各ユニットの構成を見ているとターゲット市場は日本だけでなく、東南アジアや北米も狙っていることが予想されます。
そして、NCT WISHのプロデューサーには長らく日本で活動してきたBoAが就任しています。
事例3. NewJeans(ADOR / HYBE)
NewJeansはハニ、ヘイン、ダニエル、ヘリン、ミンジのメンバー5人で構成されており、出身地は、韓国、オーストラリア、ベトナムと多国籍ですが、日本人は入っていません。
プロデューサーであるミン・ヒジンは練習生にコンセプトに合う日本人がいなかったことから「日本人はいらない」と発言しています。これが曲解されて「反日だ」などとSNSで言われていたようです。
プデュからME:Iでデビューした櫻井美羽はNewJeansの候補生だったという過去も明かされていますが、やはりコンセプトや年齢が選定の基準から外れていたようなので、何でもかんでも「反日」などの見解に持っていくのは悲しいですね・・
話を戻すと、オーストラリア出身のベトナム人メンバーであるハニはベトナム出身が珍しいことから東南アジアを中心に話題になっています。
ベトナム語、韓国語と英語が得意で海外での活動では大活躍することが期待されているメンバーですが、上述したミン・ヒジンの考えからすると「コンセプト>言語によるマーケ」であるため、安直に「K-POPは様々な市場に対応できるように、グループに国籍や言語に多様性をもたらすようになった」と考えるのは間違っていて、グループのとる戦略次第と予想されます。
事例4. NiziU(JYP) と ME:I(LAPONE)
NiziUは、ソニーミュージック×JYPの合同オーディション・プロジェクト「Nizi Project」より、1万人から選び抜かれた9人組のガールズグループです。
そして、サバイバルオーディション番組「PRODUCE 101 JAPAN THE GIRLS」からデビューした11人組、ME:I(ミーアイ)。
この2つのグループでは、全員が日本人で構成されています。
日本人で構成はされているものの、所属はJYPとLAPONE(CJ ENMとよしもとの合弁会社)で、ビジュアルやパフォーマンスはいわゆるK-POPそのもの。
NiziUはプロデューサーをパク・ジニョンが務めるし、ME:Iではオーディション期間のトレーニングを担当したのは、NCTやEXOの振り付けも務めてきたYUMEKIや、FTISLANDのボーカルであるイ・ホンギでした。
スタッフも多言語話者が求められる
アーティストのグローバル展開を進める上で、アーティストがその土地の言語を学ぶシーンがドキュメンタリーなどでも見られます。
事務所側は練習生であるうちに歌、ダンスなどのパフォーマンス関連だけでなく、言語学習も行っているようです。
そこで、スタッフに求められる言語能力はどうなのかと求人を調べてみたところ、全てでは無いにせよいくつかのポジションでは、やはり多言語話者が優遇されるポジションがありました。HYBE JAPANのSNS担当では、さすがにビジネスレベルの韓国語が必須となっていました。
3. K-POPの消費国
NCTの事例からも分かったように、多種多様な国籍メンバーを集めることでローカライズされたアプローチが可能になってきています。
では、現時点でどこの国でK-POPがより多く消費されているのでしょうか。
やはり1位は日本でした。
ただ、驚くべきはアメリカと東南アジアへの成長です。
ランクインしていない中国は、おそらくグレート・ファイアウォールの関係で数字が取れていないだけかと思われますが、中華バーとも呼ばれるファンダムの経済力はBTSのジミンの誕生日に飛行機ラッピング広告をプレゼントするレベルとのことで、無視できないマーケットであることは間違いありません。そのことからも、中国メンバーを集めているグループが出てきていることも頷けます。
このランキングを見ていると、今後はさらにK-POPの多国籍化が進むとも考えられます。
4. 歌詞の韓国語回帰
メンバー構成や、どの国で消費されているかの観点でK-POPのグローバリズムについて考えてきましたが、歌という商品としてはどのような思考があったのでしょうか。
これまでのK-POPアーティストの日本での活動では、
①韓国でリリースされた楽曲の日本語バージョン
②日本向けに制作された日本オリジナル楽曲
のように日本マーケット攻略のため楽曲が用意されていました。これには「違和感がある」といったファンからの声も少なくなかったようです。
2020年の記事では、BTSの日本語曲アルバムを引き合いに、「まだまだ嫌韓派へ考慮する放送局の存在から、日本語曲を出すことのメリットが残っている」と語られています。
しかし、最近日本デビューを果たしたNewJeansの楽曲では、歌詞が英語と韓国語中心で、日本語の割合が非常に少なかったのです。
海外のアーティストが日本にきても英語で歌うように、NewJeansのこの事例からは韓国語の歌を洋楽(外国の歌)として広める気持ちを強く感じました。ブランディング観点でも従来のK-POPとは違う印象を受けるので私はポジティブに感じました。
それでもまだ、特に日本では言語の壁が強くあるため、日本語での活動はマーケティングとしては有効であり続けるのだと思います。
5. K-POPのグローバル化のゆくすえ
K-POPとは何か
韓国以上にK-POPを楽しむ国が増え、楽曲は様々な言語で歌われ、韓国人が歌うわけでもなくなってきている、そんなK-POPの定義とは何か。
定義を決めることが重要とは捉えておらず、一人のK-POPファンとしては様々な広がりも含めてたくさんの人々に楽しんで欲しいと思います。
そんなことを考えているときにある「X-POP」という言葉を見つけました。
1つの答えとしてのX-POP:XG
XGのメンバーは全員が日本国籍で、韓国語と英語を学びK-POPシステムのトレーニング法で練習し、クリエイションにはDMTNのメンバーだったDaydayを含む多くの韓国人クリエイターが参加。
韓国のビジネスシステムで新曲も発表するという活動形式をしています。
一方で、オリジナル楽曲の歌詞は現状すべて英語。
これはまさにJAKOPSの多国籍なキャリアをそのまま生かしたやり方ですが、このような活動形態のグループ自体が現状では他にないため、“J-POPでもKーPOPでもない”XGだけの音楽・ジャンルである「X-POP」という表現を使っています。
国境なきガールズグループであるXGのようなスタイルは、これからのメジャースタイルになっていくかもしれません。
HYBEの拡大
グローバル市場での在り方を模索するK-POPのプレイヤーたちの中でも、打ち手の面でやはり目立つのがHYBEです。
2021年には、ジャスティン・ビーバーやアリアナ・グランデをマネジメントするイサカ・ホールディングスを約10億ドルで買収し、さらに2023年2月には、アトランタのラップレーベル、クオリティ・コントロール・ミュージックも買収しました。
そして2023年11月にはメキシコシティ・マイアミ・ロサンゼルスへオフィスを設立し、ラテンアメリカ開拓に乗り出すことを発表しています。
さらに、HYBEだけではなく、JYPも7/18にラテンアメリカへの進出を発表しています。
JYPはK-POPというシステムのローカライズが実現できることを、日本(NiziU)に次いでラテンアメリカで証明しようとしていて、A2KやL2Kはそのためのプロジェクトなのかもしれません。
6. ラテンアメリカ進出の理由
メキシコとブラジルの発展
HYBEやJYPのラテンアメリカ進出の理由は上述したK-POPのローカライズ実験が大きいと思いますが、その投資の裏付けにあるのはラテンアメリカ、特にメキシコとブラジルでの音楽産業の発展がありそうです。
南米でのヒットの理由
メキシコやブラジルの音楽産業の発展とストリーミングの成長以外での、南米地域のK-POP人気が大きくなった理由について、田中秀臣さんのこの記事から3つの理由が考えられます。
1. 韓流ドラマの影響
南米では21世紀に入ってから韓流ドラマが大ブームとなり、若年層から中年層の女性たちが特に熱中しました。韓流ドラマを通じて韓国文化に興味を持った彼女たちが、自然とK-POPにも興味を持つようになりました。この現象は「ドラマ外部性」と呼ばれ、ドラマを通じて音楽、ファッション、料理など幅広い韓国文化への関心が高まる結果となりました。
2. 日本のポップカルチャーの影響
南米では元々日本のマンガやアニメ、ゲームなどが人気で、その中でBoAや東方神起といったアーティストが日本での成功を通じて知られるようになりました。
3. 草の根レベルでの人気獲得
インターネットやSNSの普及により、南米のファンたちはYouTubeなどを通じてK-POPの最新映像や音楽に簡単にアクセスできるようになりました。これにより、韓国の音楽番組やK-POPアーティストのパフォーマンスがすぐに視聴できる環境が整い、南米でのK-POPブームが加速しました。また、南米のファンたちはカバーダンス動画を多数アップし、ファンベースのカバーダンスフェスなども頻繁に開催されるようになりました。これにより、二次創作物を通じたファン活動がK-POPの人気をさらに高める要因となりました。
これらの理由から南米で広くK-POPが受容されるようになったと想定されます。記事内でも言及されるように、南米での人気の裏側を紐解くと、なぜ日本のアーティストは世界でウケづらいのかが分かるような気がしてきますが、それについてはまた別のnoteでまとめていきたいと思います。
2017年の記事なのですが、2024年現在で状況があまり変わっていないのは悲しいですが、YOASOBIのコーチェラのような事例が出てきていることは嬉しいですね。
7. 参考
マイナビHYBE JAPAN求人
HYBE求人(韓国語)
メタバースえとせとら
wiki MISAMO
wiki NCT
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NCTグループ分けをメンバー相関図で解説!dreamと127はどっちが人気?新グループは?
NCTWISHプロデューサーにBoAが就任
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BTSジミンへの誕生日プレゼント
HYBEにラテンアメリカ法人
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