ええやん、おじさん。

46歳のおじさんがライブで思いっきり拳を突き上げ、大声でレスポンスに応えている姿を見て、ええやん、すてきやん。と思った。

何歳になっても好きなものを好きだと全力で言える人間でありたい。

そうは言っても周りの目を気にしてしまうし、
年齢という枠の中に自分自身を放り込んでしまってその中でしか生きられなくなる。

もっと自由でいい。自由であれ。

そんな風に思えるのは私がまだ20代であるからか。40代、50代になってしまえばそんなことも思えず、全力で拳を突き上げる同年代の人を白けた目で見るようになってしまうのか。それとも、同じように全力で拳を突き上げているのか。

今は絶対的に後者でありたいと思っている。
しかし、忘れたくない気持ちはいつしか生活の中に呑まれて、埋もれ、どこかへ去っていってしまうかもしれない。

人間は、ひどく脆弱な生き物だ。


隣で誰の目も気にせずに好きなものを好きだと全身を使って表現している彼を見て自由である心の片鱗を見た。それは凄く心強い姿だった。

そんな些細な光景に、胸を打たれているわたしもまだまだ大丈夫だな、と思えた。

10年後、20年後に同じように私の姿を見て誰かにそう思ってもらえるように。ええやん、おばさん。なんて思ってもらえるように。生活の波にのまれても、また自分らしい呼吸ができるように。自分の人生の中で大事にしていくカケラを集める。彼の姿もまた、大事なカケラのひとつになった。


そしてわたしは、


ええやん、おじさん。


と心の中で呟きながら、

彼と同じように全力で拳を突き上げる。


#エッセイ #小説 #ショートストーリー

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