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デンマーク市民の冬の楽しみと「学び」

図書館は好きですか?私は好きです。
子どもの頃は「無料で堂々と利用できて本を読みながらいつまでもいられる場所」として
高校時代は「放課後や休日の受験勉強の場所」として本当によく通いました。
大人になった今は、本を買うほうが多くなり、昔ほどは通ってはいませんが、月に一度はふらりと訪れ、本を読んだり、眺めたり、本のある空間を味わっています。

北欧は「図書館大国」と呼ばれ、高度な図書館サービスが市民に提供され、市民の利用率も高い。フィンランドでは図書館は「市民のリビングルーム」と呼ばれるほど憩いの場所になっていることからも、いかに図書館が身近な場所かがうかがえます。フィンランドでは2018年、ヘルシンキ中央駅前の一等地に、巨大な帆船あるいは氷山のような形をした建物である、ヘルシンキ中央図書館「Oodi」がオープンしたことで話題になりました。Oodiはフィンランド独立100周年の記念に国から国民へのプレゼントとして建てられたというのだから、図書館がいかに大切な存在であるかがわかります。

図書の貸出サービスのほかに、北欧における図書館の果たす大きな役割のひとつが「生涯学習の拠点」となっていることです。日本でいう公民館のような役割を図書館が担っているのです。生涯学習とひとことで言っても行われていることは様々で、編み物サークルから読書会、税金相談や子ども向けの宿題支援などなど。特にデンマークでは、図書館と市民の学び・楽しみが密接に関わっていることが『デンマークのにぎやかな公共図書館』(吉田右子/ 新評論/2010)の記載からもわかります。

デンマークは、生涯学習が盛んな国である。一人ひとりの学習意欲が高いということもあるが、生涯にわたって学び続けるための制度が社会的に整備されていることが関係しているようだ。(中略)FOFやAOFといった生涯学習推進のための全国組織が提供する講座は、文化、芸術、語学、スポーツなどのあらゆる領域をカバーしている。
 日が短くなって夜の時間が長くなると勉強シーズンの到来で、秋が深まるころ、各住居のポストにはFOFやAOFのプログラムが投函される。人びとは、そのパンフレットを見ながら、「この秋は日本語を習いに行こう」とか「ワインの種類について詳しくなろう」とか「ヨガをはじめよう」などと冬の計画を決めて、公立学校の校舎を借りて開催される活動に参加するのである。
 公共図書館は、こうしたデンマークの多彩な生涯学習機会の一つとして位置づけられるのだが、プログラムのほとんどが無料で提供されているところが最大の特徴である。金銭的に余裕が無くて有料の生涯学習プログラムを受講することができない人でも、図書館の講座や学習機会を通じて興味のある主題についての知識を得ることができるし、図書館の資料を使って独学で学び続けることができるのだ。

『デンマークのにぎやかな公共図書館ー平等・共有・セルフヘルプを実現する場所ー』

毎年、「今年の冬は何を学ぼうか」とワクワクする楽しみがあるって、良いですよね。長く厳しい冬を、学びながら乗り越える。
私も、大人になってから習いごとを始めることは何度かありました。何年か前にスウェーデン語のレッスンに通っていましたが、まったく新しい言語を学ぶことは難しくも、徐々に単語がわかっていく、聞き取れることが増えていくことの楽しさを実感しました。既に当時は30代後半でしたが、「何歳になっても学ぶことで自分の可能性をひらくことが出来る」ことを改めて実感しました。

私たちはいつの頃からか「学習」=「勉強」=「スキルアップや受験に必要な厳しい修行のようなもの」という捉え方をするようになりました。気合いをいれて、身構えてやるもの……というスタンスが学習を日常から遠ざけてしまっている一員になっているように思います。しかし、本来、学習は「新しい自分の可能性、あるいは見えなかった社会や物事の新たな一面を知ることで楽しく成長する、あるいは自己を深める」ものであることを、デンマークの人びとの過ごし方が投げかけているように思います。

楽しみながら学ぶことで、自分を信じ、社会に対して、肯定的に関与していけると私は思うのです。

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