劇団四季『ゴースト&レディ』にのめり込んだ話⑦
引き続きゴスレについて好き勝手に語るだけ。
戦場よりも悲惨な状況の病院に到着したフローたち看護団がひとつずつ改善していくナンバー♪世界一効く薬は
ミュージカルでよくある、この一曲を通して物語をぐいぐい進めていくのがすごく良いですよね。
歌い出しの看護師のソロはまさに「どこから始めればいいの…」って途方に暮れた状況から、
フローの的確な指示でテンポごと前向きにどんどん引っ張っていき、
最初の看護師たちの不安そうなフレーズを今度は回復してきた負傷兵たちが爽やかに歌う、っていう
ダイジェスト形式で大きくストーリーが進んでいく感じ。
舞台版『天使にラブソングを』の♪Raise your voiceを思い出します。
正しい歌い方なんか知らない、自信のないシスターたちの歌がメキメキ上達して、「音楽」になっていく感じ。
更にこの曲の途中、めちゃくちゃ残念なことにCDではカットされているんですが、ささやかなクリスマスの宴が開かれまして、それがまた最高に良い!
大体私の第2泣きポイントです。
この時使われているクリスマスソング、もろびとこぞりてともう1曲、初めて聴く曲だったんですが、皆さま博識でいらっしゃって「I Saw Three Ships」という曲だと教えていただきました。
これもまた素敵な曲で…今年のクリスマスはこの曲聴きまくります。
病室で、看護師たちと、回復してきた負傷兵たちと、最初は看護団を拒絶していた軍の男性陣たちまでもが一緒になって楽しく踊る様子があんまりにもあたたかく幸せで。
「サプラーーイズ!」とばかりに飛び込んでくるメンジーズの部下君の笑顔大好き。
毎回確認できてはいないので、元々のシナリオなのかアドリブなのか分かりませんが、
軍の男性がシスターの1人をダンスに誘ったけど「あたし踊れないの!」と断られ、その直後負傷兵の1人がそのシスターを半ば強引に誘い出して踊るのを見て
「フラれた…」って落ち込む陸軍部下さんをみた回があって、なんかそんなちょっと楽しい(本人にとっては可哀想ですが…笑)ドラマがあるのも見所。
なによりも踊れるまでに回復した兵士たち、
そして最初あんなに軍から拒絶され、それに対し看護師たちも反発していたのに仲良く宴を楽しむようになっている、というのが、ね。
後方ではまだベッドの上で、踊るまでは回復していない兵士たちの側にもラッセルやフローやエイミーが寄り添って一緒に楽しんでいるのもとても優しく感じられる時間です。
そして、盛り上がりの中、不意に時が止まると、いつの間にか舞台中央のグレイとフローにスポットライトが。
何も言わず手を差し伸べ、ダンスのリードをとるグレイ。
何も言わず、戸惑いながらも吸い込まれるように踊るフロー。
「ほら、踊ってやろうかオジョーサン」と声が聞こえてきそうなイタズラっぽいグレイの仕草。
セリフがないと言うのがまた良くて、私の中ではこんな感じのセリフが流れるんですが、観る人それぞれがグレイの、フローの言葉を好き好きに想像できるというのが素敵です。
どんな言葉を交わしているのか、はたまた言葉などなく、見つめ合いながらそれぞれが何を思っているのか、想像は無限大。
ちなみにここ、グレイ役の萩原さん泰潤さんで結構雰囲気が違うように感じて、私的解釈↑のようなセリフが再生されるのは萩原さんグレイ。
一歩引いたところで踊るみんなを見ているフローの様子を見て「しょうがねーな、相手がいないなら俺が踊ってやるよ」っていう酒と女の味を覚えた大人の余裕で恭しく付き合ってやるのが萩原さんグレイ。
「俺たちも踊んなきゃいけないんだろ!?別に俺は踊りたくなんてないけどな!?」って強制フォークダンス中の小学生男子か?なヤケクソで誘ってくるのが泰潤さんグレイ。な気がします。個人的解釈ですので悪しからず。
そして、ゴーストであるグレイは人間に触れられないので、まるで手をとりダンスしているようなんですが、2人の間には僅かな空間が…。
このもどかしさがまた!たまらない!!
触れそうで触れない距離。
そしてこれが少し後でアレックスの♪サムシング・フォー(リプライズ) で時間差で効いて来るんですよね。
「この手に初めて触れた日を覚えてる 舞踏会の夜ダンスしたね」と歌うアレックス。
お互い触れられないまま、でも見つめあってほんのひととき踊るグレイとフロー。という対比。
初見ではもちろんこの後の展開は知らないので、アレックスとの対比を知った2回目以降めちゃくちゃ刺さるシーンです。
さて、そんなひとときのダンスも束の間。
看護団の一員、マザームーアのお叱りによって宴はお開きになりますが、ここでも明るく「励ましてあげましょう」「治そう!」と歌うのはエイミー。
失敗して不器用で、患者から文句を言われ他の看護師から呆れられたりと既に壁にぶつかり始めていますが、それでも明るく元気を周りに振りまけるエイミーのそれはとても素敵な才能。と誰か伝えてあげて…!といつも思います。
そして包帯や薬がたくさん届き(それでもまだ全然足りてはいないのですが)、メンジーズはまだフローが気に入らない様子なのですが、その部下たちはフローに感謝し心を開き始めている様子も。
メンジーズが奪うようにして包帯などを受け取って去って行ったあと、フローを呼び止めて丁寧に一礼する部下たち、心あたたまるワンシーンです。
それからこの曲中もうひとつの面白ポイントは、ラッセル。
特に長尾さんラッセル、患者さんたちに配るための葛湯を最後に自分もちゃっかり貰っていたり、
F1枠の看護師さんはどうやら酒飲みらしいんですが(原作でも当時の看護師の悪いイメージとして飲んだくれの描写が…笑。まあ彼女はお仕事もきちんとしている、と思うので、少々の息抜きくらいは…?)、
仕事中にこっそり飲んでいるF1さんを見つけて、分けてもらって一緒に飲んでいる時もあったり。
一曲の中に盛り沢山すぎて、目がいくつあっても足りません。
そんなこんなで、戦場より悲惨な状況だったら病院は見違えるように綺麗になり、
立ち尽くすだけだった看護師たちもテキパキと働き、
最初は拒絶していた陸軍とも少しずつ協力関係を築き、ようやく基盤が固まってきたところで、
お次の波乱、ジョン・ホール氏のご到着。
続きます→