劇団四季『ゴースト&レディ』にのめり込んだ話⑨

引き続きゴスレについて好き勝手に語っております。

グレイがジョン・ホールの魂を麻痺させたおかげで急患の元へ駆けつけられたフロー。
舞台は細い照明だけで薄暗く冷たい空気の中、ぽつんとベッドがひとつだけ。
これ、恐らく病室もベッドも足りていない状況で今でいう個室なんてものはないでしょうから、恐らく本来は大部屋で周りにもたくさん患者の寝るベッドがあるんだと思うのですが、
敢えてその中でひんやりとした空気の中ポツンとひとつのベッドだけ置いてある演出と、
フローが早口に看護師たちに指示を出す逼迫感が、(医療関係には詳しくないので想像でしかないですが)リアル感を強めてるなといつも感じます。

必死の手当も虚しく息を引き取るボブ。
ゴスレ名物幽体離脱。これ、何度凝視しても、配信でかなり近いアングルから拝見しても、カラクリが見破れません(私の目の問題?)。
ここで♪あなたの物語 。
起き上がって光の方へ向かって舞台奥へ歩いて行く、という舞台ではほぼセオリーな天へ召される演出のボブを必死で引き留めるために歌うんですが
あなただけの物語を綴りなさい、歩き続けて、という語りかけが本当に素敵で。
要は、「死んじゃダメ」「生きて」って事を言っているんですが、そのままの言葉は苦しんでる人にとってはとても綺麗事で、薄っぺらくて、きっとそんなに響かない。それをこんなに美しく、優しく、あたたかく紡ぐこの歌。
非常に蛇足な余談ですが、先日職場の人が流していたどなたかの歌で「生きて」という歌詞を連続していて、なんか薄っぺらだなあと感じてしまったあとにこれを聴くと、もう…!

別の方ご意見で拝見したのですが、
この後2幕で旅立つ患者さんは、恐らくもう助からない病状だったので、旅立つ時も床が動いて召されて行きますが、ボブは自らの足で歩いて行こうとしている。つまり自分で生きるのを終えようとしている、という解釈があるらしく。
なるほど、細かい演出、全ての事柄に意味が宿っているのだなぁ、と。

2分もないとても短い歌なのですが、この後の物語にも重要なキーになり、この『ゴースト&レディ』の物語の核、ひいては劇団四季の「人生は素晴らしい、生きるに値する」という理念をも凝縮させた一曲のように感じます。

さて、ボブが無事生還を果たして、一息ついて2人になったグレイとフロー。
なかなか絶望する様子がないフローに痺れを切らしてグレイは帰ろうとしますが、なんとか引き留めたいフローがグレイの過去を聞き出そうとすると、やはりそこは触れられたくないグレイは剣を出して威嚇。
この時のグレイ、「もしも俺を裏切ったら」のセリフが、萩原さんグレイだと「もしも俺をう、…裏切ったら」と一度言い淀むんですよね。
「裏切る」という言葉を口に出すことさえ酷く嫌悪しているのが本当に見ていて心が痛い。
「お前なんていつだって殺せる」と首筋に剣を突きつけられるフロー、このシーン、お稽古写真の真瀬さんの表情、死ぬほど美しかったな、といつも思い出します。写真で残してくれて本当にありがとう。涙

そして唐突なギャグシーン、「はい!もうしばらく勝手にします!…あ、急がなきゃ」。
真瀬さんフローだと天然というか、素でやっている感があって、谷原さんフローの低音ボイスはグレイをからかう、まではいかないんだけど、ちょっとわざと、一枚上手な感じがして、それぞれ面白い。
これはグレイも狂わされますわ笑
ということで、グレイスーパーぶちギレソング♪あの女は最悪 。
もし応援上映があったら全力で「それは恋だよ!」「ひゅーひゅー」と野次を飛ばしまくりたいソング。
冒頭グレイのお怒りは、泰潤さんグレイはフローの真似のクオリティだいぶ高め。(フランスの某お城の野獣さんでもヒロインの真似してたもんね🥀)
萩原さんグレイは癇癪大きめ。めっちゃジタバタ言葉にならない怒りを扱いきれずにいて、どちらもめっちゃ面白い。
そして再登場してくれる♪俺は違う のゴースト達。
一緒にノリノリ踊ったかと思えば剣で順に刺されてしまって、仲が良いのか悪いのかよくわかりませんが、もしかして普段からこんな風に遊んでたりするのかな、と思うと微笑ましくもあります。
心臓貫かなければ復活出来る訳ですから、いってーよ死んじゃうよ!!なんてゴーストジョークしながら普段からこうやって遊んでたらなんか可愛い。
最後に切られるハムレットの王がぷるぷる小刻みに震えてるのも可愛い。
現代だと飲み友達っぽい雰囲気。それぞれ年齢も仕事もバラバラ、別に決まってこのメンバーで集まってる訳ではないんだけど、約束しなくてもなんとなく馴染みのお店に行けば誰かいるし誰か来て自然に集まってるみたいな。勝手な想像です。

という事で、お次、エイミーのソロに行く前に今回はここで。

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