劇団四季『ゴースト&レディ』にのめり込んだ話⑤
引き続きゴスレについて好き勝手に語り散らしております。
さて、いよいよビッグナンバー
♪走る雲を追いかけて
開幕前から何度も何度もPVで聴き込んできた曲。
サビの「行〜こ〜う〜クーリーミーアへいこう〜」も非常に頭に残りやすいフレーズなので、初回観劇後でも頭の中リフレイン率1位(たぶん)。
大体私の第1泣きポイントです。
サビは非常にシンプルで覚えやすい旋律なのですが、歌い出しはひとりポツンと舞台に取り残されたフローが、周りも暗い中自分だけを照らす細いライトを浴びて。
細々と歌う旋律は言葉1文字に対する音符が多くて、それがまるで不安で揺らいでいるフローの心境を表すよう。
視覚的にも音楽的にも、フローの心境を表しているんだろうなと思います。
それでも心を奮い立たせ、「行こう、クリミアへ行こう」とサビを歌い出すと、後ろから1人、2人と看護師志願者たちが集まってきます。
女性アンサンブルさんにあまりまだ詳しくないのですが、この最初に集まってくるシスターが、♪カゴの鳥の願い/私の使命 で亡くなった男の子の姉を演じている方なんだそうです。
『ノートルダムの鐘』でもそうですが、
複数の役を演じるアンサンブルさん、もちろんそれぞれに設定上同じ人物ではないのですが、どこか繋がりを持った配役なのが素敵です。
鐘ではカジモドの母、父を演じたアンサンブルさんはその後ガーゴイル役でもカジモドを守ったり優しく背中を押すような役割をしていますし、
ゴスレでもフローの父、母がこの後酒場のシーンでも主人とおかみでまた夫婦の役であったり…。
話が戻りますが、女性看護団が集まり、いよいよ出発。
このシーンでいつも思うのですが、私たちは今フローの物語を見ている訳ですが、
この集まった看護師たちそれぞれにも家族があり、人生の物語がある訳なんだよな、と。
アレックスやフローの家族が言っていたように、
戦争は男の仕事で、女性は家庭を守るべきというのが当然の時代で、戦地へ赴こうと立ち上がるのにはきっと並々ならぬ背景があると思うんです。
フローのように家族に猛反対されたかもしれない。
大切な人を失った深い悲しみから、誰かを助けようと立ち上がったのかもしれない。
当然尺の問題で1人ずつ「彼女はこんな経緯で看護団に参加しました」と紹介は出来ないし、そもそも名前すら呼ばれない看護師たちも居るわけなんですが、
そんな名もなき看護師にもきっと物語があり、こんな大変な覚悟のいる任務に赴いているのだなと思うといつも泣けます。
看護師ひとりひとりの表情にも、頑張るぞ!!という意気込んだ表情の人と、不安げな表情の人がいるので、非常に細かい表現です。
そのひとりひとりの細かい表情、表現や、
観る側も誰を中心に見るかによって、この曲の[決意みなぎる感:戦場への不安感]の割合がほんの少しですが毎回違くて、同じ曲なんですが曲の印象が日により変わるような気がします。
そしてここでもう1人のオリジナルキャラ、エイミーも登場。
ハーバート戦時大臣、レディエリザベスの姪。
フローと同じく、もしくはそれ以上のお嬢様。
エイミーは出発時も笑顔で、「頑張るぞ!!」と気合い充分。
船に乗り込む際も不安そうに後ろの方にいたシスターに声をかけて励ますまでの余裕があります。
この後、看護の勤めがうまくこなせず非常に思い悩む彼女ですが、きっと誰かを励ます、元気づけるというのは彼女の得意分野なんだろうな、といつも見ていて思います。
もちろんどの職業においても、まずは仕事がきちんとこなせるかどうかが重要ではあるのですが、
彼女のように明るくみんなを励ますことが出来るっていうのも絶対に組織には必要で素敵な才能ですよね。
ここからは完全に個人的な推測、想像の粋なんですが、出てこないエイミーの両親について。
エイミーを連れてきて見送るのは叔母のレディエリザベス。両親は一切登場しません。
ボンネットと言っていいんでしょうか、帽子のリボンも自分でやらずに結んで貰うお嬢様のエイミーなんですが、それもレディエリザベスがやります。
歌詞でも「愛する家族に別れを告げて」と出てくるのですが、両親ではなくレディエリザベスがそれを担っている理由。
もちろん舞台の都合上、尺とか、人員的な問題で、不要な部分は削った、といえばもうそこまでなんですが。
もしかしたら、エイミーの両親、もしくはどちらかの親だけでも、同じように病気か怪我で療養していた経験があるのではないかな、と想像したり。
現代でも、自分や家族が入院して、非常にお世話になった看護師さんや医師に憧れて目指すという話も珍しくない訳ですし。
そんな背景を色々想像出来る、素敵な1曲です。
話は戻りますが、歌い出し、いわゆるAメロは不安に揺れる心情を現すように繊細に動くメロディーラインですが、サビはシンプルなメロディー、一拍ごとの縦ラインを強調して、
逆に力強く歩みを進めるようなリズムを刻みます。
ロングスカートをぎゅっと掴み、裾を持ち上げ、慎重に、そして力強く一歩ずつ。
見る度に、あぁ、なんて格好いいんだろうと惚れ惚れするシーンです。
さて、長くなってしまいましたので続きはまた。