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劇団四季『ゴースト&レディ』にのめり込んだ話②

こちらの続き。
劇団四季『ゴースト&レディ』にのめり込んだ話②
ようやく本編に入ります。
引き続きネタバレしまくり個人の主観好み入りまくりなので悪しからず。

ロビーに注意書きまでされる急な爆音と暗闇の中で物語が始まります。
優しくどこか物悲しい旋律と共に上手側から男性が街灯のようなライトを押しながら歩いて登場。
そのまま特に何も言わず、ライトを置いてすぐに退場します。
ハイ、ここで一旦ストップ。語らせてください。
このライト、ロンドンの古い街並みにある街灯とかかなと思っていたのですが、
最近知りました。ゴーストライトと言うのだそうです。
誰もいなくなった真っ暗な劇場で、
現実的に言えば最小限の灯りとして。
それっぽく言えば幽霊避けとして。
ライトをひとつだけつけておく、という古い慣習があるのだそう。
恐らくここは、四季劇場秋ではなくドルーリーレーン劇場。
芝居に携わる人が皆帰って、最後に彼が幽霊避けのゴーストライトを点灯させて帰っていくところなのでしょう。
深い…ゴーストライトを知っただけで冒頭ほんの数秒のシーンの解像度が一気に上がる…。

そしてそのゴースト避けのライトの火が消えると同時に登場する、シアターゴーストのグレイ。
グレイの登場は何度観てもカラクリがわかりません。
きっとランプの炎に目を奪わせておいて…という視線誘導のトリックだろうとわかっているのに、
わかった上で何度かは炎を追うのをやめてグレイが出てくる場所を凝視しているのに、
未だ謎が解けません。

♪奇跡の夜に
1曲目、グレイの寂しげな独唱から始まります。
この歌の「ときめきの欠片」という言葉がなんともまあ素敵で大好きなんです。
演劇を観た後って、素晴らしかった!ここが素敵だった!あれが好き!っていうキラキラした気持ちをたっくさん、溢れんばかりに抱えて劇場を後にするじゃないですか。
もちろんこの『ゴースト&レディ』観劇後も然り。
例えば形のないそれを、わかりやすく宝石で例えるなら、
ダイヤモンド、サファイア、ルビー、ペリドット…大小様々、色んな色の宝石を両手いっぱい抱えきれないほど貰って、観客たちはそれぞれ自分の世界に帰っていく。
そしてそれを宝石箱に綺麗に並べて、毎日のように眺め愛しんだり、
一番気に入ったものをぎゅっと大切に握っていたり、
少し時間が経ってふとした瞬間にカバンの中から、ポケットの中から、コロンと出てきて見つめたり…
観劇の思い出って本当にそんな宝石のようなものだと思っているのですが、
それを「ときめきの欠片」と言い表すこの歌詞、それだけでもうグレイがどれだけ舞台を愛しているかが伝わってくるんですね。

余談ですが、劇団四季さんだと必ず観劇の際に貰えるのが「本日のキャスト」という紙。
ロビー内にご自由にお取りください形式で置かれている演目もあるし、
ゴスレは手渡し方式で入場の際にスタッフさんから1枚ずつ頂けます。
私はこれをクリアポケットに、(紙チケ派なので)その日のチケットと一緒にファイリングして、
ステッカー等で少し装飾してコレクションしているのですが、
ゴスレ観劇以降、これも「ときめきの欠片」ファイルと呼んでいます。
その日どんなキャストさんでどの席から観劇したか、思い返しながら見たり、
今日の仕事ちょっと大変だなーって日にはお守り代わりに仕事のバッグに入れて持って行ったり。

さて、歌に戻ります。
歌い始めてすぐ、グレイが客席に気付いて「もしかして俺が見えんのか?見えてんなら拍手を」と観客を物語に引き摺り込みます。
これ、めちゃくちゃ良い演出だと思いませんか!!!
冒頭のこのやりとりで観客一体型の舞台になっていくんです。

そうしてグレイの合図で幕が開き、そこは満席大熱狂のドルーリーレーン劇場。
観客たちは拍手喝采、興奮気味に感想を語り合いながら帰っていく中、上手側には口角を一切あげず強張った顔のフロー。
初日に現れると大ヒットするという灰色の男を見た、と噂する観客たちを見送りながら、客席にグレイを見つけてロックオンする演技が細かい。
誰もいなくなった劇場で、グレイに声をかけます。
ここ、最初の頃は声をかけられたグレイが割とすぐに「見えんのか?」と答えていたんですが、
最近の萩原さんグレイはたっぷり間をとって、後ろを色々見て「あれ、まだ誰か残ってたっけ?こっちにも、あっちにも人居ねえな。あれ?」って充分周りを見てからようやく、あ!俺か!!ってなってるの、こちらも演技が細かくて良い。拍手。
こうしてグレイとフローが出会い、物語の歯車が回り始めます。

そしてフローの♪カゴの鳥の願い/私の使命
「どうかお願い 私を殺して」
物語のヒロインの1曲目の歌い出しとは到底思えない物騒なフレーズから始まります。
舞台版だとごっそりカットされているんですが、原作には生霊設定があって、人間にはみんな生霊が取り憑いていて、他人の生霊を攻撃したりされたりするはずの生霊が、このグレイとの出会いのシーン、
フローの生霊はフロー自身を攻撃しているんですよね。
その設定は舞台版では割愛されているはずなのですが、フロー自身をグサグサと刺す生霊が見えてきそうなほど、フローの必死な表情が恐ろしいです。
カットされた、無くした、というより
生霊設定は語られていないだけで、たぶんまだ生きてる。
ここでフローが看護の道を目指すきっかけとなるエピソードが語られるのですが、その演出もなかなか面白くて。
まだ場面は劇場客席のままなのですが、それと回想シーンの融合がすごい。
男の子を亡くした農村の婦人と娘がよろよろと登場して、客席を一列だけ退けるとそこには簡素なお墓。
先日『オペラ座の怪人』でクリスティーヌの父のお墓の大きさに驚きましたが、こちらは本当にそこに埋めて十字架だけ立てたような簡素なお墓。
それと共に後ろの客席の背もたれに十字架がプロジェクションマッピングで映し出されると、
一気に劇場の一角だけが墓地になるという、空間の使い方が巧みすぎる演出。

フローの身の上話を、グレイはまるで演劇を見るかのように楽しみながら聞きます。
先日の泰潤グレイ、「お嬢ちゃんが親に反抗して、負けたから死にてぇってのか」のあたりで結構豪快に笑い飛ばすんですよね。萩原グレイにはない表現だったのでびっくり。めちゃくちゃバカにしてるのが伝わります。
しかし、フローの視線に負けてまずは家に着いていく事になるグレイ。
グレイの心が動く瞬間に♪不思議な絆 のメロディーが流れるのが良いですよね。
縁はここから始まった、不思議な絆はここでもう既に生まれていた、というのが音楽で表現されてる感じ。
まさに起承転結の「起」。
ここから物語が動きますという感じがしていつもワクワクする導入です。

さて、というところでキリよく今回はここまで。
③に続きます。

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