おっかぁ…ゴメン。
「お袋」
「お母さん」
「ママ」
「母ちゃん」
呼び方は人それぞれ。
気付いた時から家では「おっかぁ」
「兄弟仲良くやってけろ…」
「たった2人っこしかねぇ兄弟、なんで仲良く出来ねんだかなぁ…」
遺言みたい。
いや、もしかしたら遺言だったのかなぁ。。。
小学6年の時、1つ上の兄弟からアルミパイプで襲われた事がある。
右足の膝横に刺さり流血した。
原因はきっとつまらない事。
それ以来、高校終わるまでの6年ちょい、1度も口を利かなかった。
自分の徹底力には自分でも舌を巻く。
うちのご長男さん(兄)は、人の神経を逆撫でするのが実に上手い!
私が独立してからも、2度3度(いやもっと、、、)と逆撫でされ、今ではほとんど付き合いがない。
年1回程度、必ず顔を合わせなきゃならない時以外はね。
いつも挨拶程度で終わらす。
おっかぁが50を越えたあたりで糖尿病を発症した。
コツコツ働くおっかぁに冷たい仕打ち。
「病院代もったいねぁな…」
自分の体より家族を心配する人。
甲斐性なしの父親の稼ぎだけでは苦しかったのか、働くのが好きだったのか。。。
中学終わると、貰われっ子に出されたおっかぁは、昔からコツコツ働く人。
貰われっ子だから、給与はない。
それでもコツコツ貯めたお小遣いは、家を買えるくらい貯まってた、と後から聞いた。
そのお金は、全て父親の酒代に代わった。
だから父親は大嫌い!
理由はそれだけじゃないけどね。
ある日突然病院通いを止めた。
「お金ないなら、俺出すから病院行こ!」
そう言っても首を縦に振らない。
「病気さ利く水あるから、病院行けない」
ん?「行けない」…?
「行かない」…ではない。
うちのご長男さんが「万病に利く水」を手に入れたから、それを飲むので病院はいらないと言って聞かない。
「おい、マジかよ〜!そんなんで病気治ってたら医者いらねぇべな!」
ツッコミ所満載の「お水様」登場。
「いいぃの!わぁの為に用意した水だすけ、わぁこれ飲むすけ」
決めたら誰が言っても聞かない性格。
見事に私に引き継がれているから間違いない!
だから私もそれ以上言わない事にする。
しばらくして、奇妙な事に気が付く。
ご長男さんが用意した「お水様」
いつの間にか、おっかぁが貰って来てる!
「明日、水貰いさ行かねばねぇすけ『よー』乗っけてってけない?」
「あぁ、いいよ〜!」
おっかぁの頼みは断れない。
断る理由がない、小さい頃から。
きっとマザコンだから。。。
いつもおっかぁを乗せて歩く、、、それはそれで嫌ではないが腹が立つ。
「長男さんが始めた『お水様』なんでわぁが乗せて歩かねぇばなんねぇんだ?」
「長男乗せて歩くのが筋なんじゃねぇのが?」
「あれはアテになんねぇの!なんが頼むんだば『よー』が1番!」
自分の中の葛藤…腹が立つけど嬉しい。。
マザコンだからね。
程なく緑内障を併発。
左目が薄緑に濁っていた。
急いで病院に行くも、
「左目はもう見えません」
今まで頑張ってきたおっかぁに次なる仕打ち。
そうしてる内に今度は狭心症。
糖尿病が原因かどうかは分からないが、緊急入院…そして「カテーテル手術」
病室で、お風呂に入れないおっかぁの足を洗いながら、漏れた心の声。
「だすけちゃんと病院さ行ってれば良かったのさょ……」
「なんも、わぁは後悔してねぇよ。こうなったのも運命なんだべなぁ」
ニコニコ話すおっかぁ。
意味が分からん!!!!!
今から19年前の1月8日、おっかぁは眠ったまま息を引き取った。
享年63歳。
「ビューティフルライフ」ってドラマを思い出して死化粧をしたっけ。
「死ぬ時は苦しまねぇで死にてぇなぁ…」
神様は最後だけ願いを叶えてくれたみたい。
(ヤバッ、書きながら涙が込み上げてくる)
命日、春彼岸、盆、秋彼岸…墓前で手を合わせる度に心の中で呟く…。
「おっかぁ…ゴメン。わぁやっぱり長男とは仲良く出来ねぇわ。良い年こいて親不孝して申し訳ねぇなぁ、けど勘弁してけろ!どうしても許せねぇんだょ。。。。。」