ファムに君臨する嬢王フォレリング
ここ数年、女子ロードレースが本当に熱い。特に2024年はその傾向が顕著で、グランツールであるブエルタ男子よりも、ファムの方がはるかにエキサイティングで見どころが多く、感動的だった。そして、その中心にいるのが推し選手のデミ・フォレリング(Demi Vollering)である。彼女のライディングは美しく、今年は特にチャレンジングで積極的な攻めのスタイルが際立っていた。一方で、2023年シーズンからすると期待以上の結果が出ず悔しい思いをしているものの、何度でも挑戦するその姿勢は本当にかっこいい。
男子エリートのポガチャルのような圧倒的な選手が全てのレース展開を支配するわけではなく、女子エリート選手の力量が拮抗しているため、チーム戦略や駆け引きがみれて、非常に見どころが多いのがファム(女子レース)ですね。
デミ・フォレリングの経歴と魅力
オランダが誇る世界トップクラスの女子ロードレーサー
デミ・フォレリング(Demi Vollering)は、オランダ出身の女子ロードレーサーであり、世界の舞台で急速にその存在感を増している選手です。1996年11月15日生まれの彼女は、現在UCIワールドチーム「SDワークス」に所属し、様々なレースで好成績のこしています。ちなみに「SDワークス」から移籍予定(後述します)。それにしてもオランダはまるで登坂環境のないフラットなエリアなのにとにかく男女ともに強い自転車強豪国ですね。風が強いからオランダエリアでのレースは難易度が高く横風分断が起こりやすいなどテクニカルです(走ったことないけどw)。やっぱり環境が選手を育てますね。文化が大切というところですね。日本がロードレースで強くなれない理由はこの文化的な問題が大きいです。
NIKEがスポンサード
NIKEがスポンサードしている数少ないロードレイサーでもあります。他ではマーク・カヴェンディッシュなど自転車選手では数名しかいません。そもそもNIKEはロードバイクのプロダクトをほぼ出してませんから。。。(ロードシューズは過去にだしてましたが)※私も履いてました。
Demi VolleringとNikeは個人契約は彼女の実績と影響力がNikeにとって非常に大きな価値を持っていることの証明でもあります。Specializedとも個人でスポンサードされていますね。
経歴: 急成長を遂げた才能
2019年にプロとしてのキャリアをスタートしました。プロデビューからわずか数年で、彼女は目覚ましい成績を積み重ね、クライミング力とスプリント力を武器に世界のトップ選手へと成長しました。基本的にTTも強くハイレベルなオールラウンダーですね。もともとスピードスケート選手であることもベースがあった理由です。基礎のある強い体であったわけですね。
2019年~2022年
2019年にジロ・デル・エミリア: イタリアで行われるこのクラシックレースで優勝し、彼女の名が広く知られるきっかけとなり、その後すぐにヴォルタ・リンブルク・クラシック: オランダのクラシックレースでも勝利を収め、国内外でその才能を示すことになります。
2021年リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ・ファム: 初のモニュメントレースでの勝利を勝ち取り、ワンデイレースでもトップクラスのパフォーマンスを発揮できることを証明しいっきにトップレイサーとなったわけです。
2023年 世代交代
ツール・ド・フランス・ファム 総合優勝: 世界最大の女性向けステージレースで総合優勝を果たし、その総合力と持久力の高さを示し頂点となったわけです。
この年のツールでの戦いは慎重でクイーンステージ1発の登坂で優勝総合優勝を確定するような戦いでした。正しい戦略に沿ってしっかり実行し勝ち切ったという感じです。安定して高出力シッティングからダンシングフォームも美しく。「とにかくかっこいいフォーム」でみとれます。
その翌月にSpecializedSL8の発表のプロモーションはレムコとフォレリングでしたね。とてもかっこよかった。
UCIワールドツアー総合優勝: シーズンを通じて安定した成績を収め、ツアー総合優勝という大きなタイトルも手にした完璧なシーズンだったと言えます。
2023年シーズン:嬢王への道
2023年は、デミ・フォレリングにとって「夢のシーズン」とも言えるほどの成功を収めた年でした。彼女はアルデンヌ三冠(アムステル・ゴールドレース、フレーシュ・ワロンヌ、リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ)を制し、これにより世界中のファンにその名を轟かせます。さらに、ツール・ド・フランス・ファムでは総合優勝を果たし、その圧倒的なクライミング力と総合力を証明し、嬢王となったわけです。とにかく2023年は他を寄せ付けない圧倒的に強さを全てのレースで証明した年でした。
2023年の主な成績:
ストラーデ・ビアンケ優勝
アムステル・ゴールドレース優勝
フレーシュ・ワロンヌ優勝
リエージュ〜バストーニュ〜リエージュ優勝
ツール・ド・フランス・ファム総合優勝
ヴェロドール受賞(年間最優秀選手賞)
ブエルタ・ブルゴス総合優勝
2024年シーズン:さらなる飛躍
圧倒的な力を示した2023年をへて2024年の挑戦が始まるわけですが、好調を維持しており、ステージレースで強さを発揮しますが、勝ちきれないレース展開でが続きます。最終まで残るが2位を連発するなど、悔し涙を流す展開が序盤から続きます。
それでもラ・ブエルタ・フェミニナで総合優勝を果たし、その後もイツリア・ウィメンやブエルタ・ブルゴスでも総合優勝を飾っています。
2024年の主な成績:
ラ・ブエルタ・フェミニナ総合優勝
イツリア・ウィメン総合優勝
ブエルタ・ブルゴス総合優勝
ツール・ド・スイス総合優勝
ツール・ド・フランス・ファム 2024 の激闘
2024年のツール・ド・フランス・ファムは、総合優勝は不運にも逃しましたが現役最強女子ライダーであることをその精神的なタフとあわせて世界に示したと思います。速いとか上手いとかではなく!強いライダーであることを印象付けましたね。
序盤の活躍
フォレリングは第3ステージの個人タイムトライアルで素晴らしい走りを見せ、7分25秒14のタイムでステージ優勝。この勝利により、彼女は早々にイエロージャージを獲得し、総合首位に立ち、これは2023年とことなり圧倒的な力を序盤から示してきました。無敵感すら感じました。
中盤の攻防
第4ステージでは、フォレリングがイエロージャージを保持したまま、他の有力選手との攻防を繰り広げましたが危なげない安定の走りで。彼女は22秒のリードを築き、総合首位キープ。
第5ステージ 衝撃の転倒
第5ステージの終盤、ゴール前約6km地点で大規模な集団落車が起きました
。この落車にデミ・フォレリングも巻き込まれたという衝撃。
結果として総合順位に大きく影響し「1分19秒」という絶望的なタイム差で首位から9位まで順位をダウンすることになります。しかしここから彼女の resilience(回復力)と競争心の強さ、精神力を目の当たりにすることになります。
最終ステージの激闘
大会最終日となる第8ステージは、ル・グラン・ボルナンからアルプ・デュエズまでの149.9kmの山岳ステージでした。フォレリングは何度もアタックを仕掛け、残り25km地点でパウリーナ・ローイヤッケルスと共に先頭に立ちました。
アルプ・デュエズの登りが始まると、フォレリングは加速して差を広げましたが、最後まで緊張感のある展開となりました。フォレリングは見事にステージ優勝を果たし、大会2勝目を挙げました。
総合結果
総合優勝を狙っていたフォレリングは、わずか4秒差でカタジナ・ニエウィアドマ(Canyon-SRAM)に敗れ、総合2位となりました。フォレリングは最後まで諦めず、アグレッシブな走りを見せ、敢闘賞も獲得しています。
2024年のツール・ド・フランス・ファムは、フォレリングの活躍を中心に、非常に接戦の展開となりました。彼女は2つのステージ優勝と敢闘賞を獲得し、最後まで総合優勝を争う素晴らしいパフォーマンスを見せました。総合優勝ではなかったが圧倒的な強さを世界に示した感じですね。
そしてわずか4秒差での2位という結果は男女ともに歴代最小差で総合優勝を逃したという…
フォレリングの魅力
多才なレース対応力
ワンデイレースからステージレースまで幅広いレースで結果を残すことができるオールラウンダー。特にクライミングにおいては他の追随を許さない強さを誇り、スプリント力も兼ね備えています。TTについてはまだフォーム改善余地がありながらも2024年世界選手権TTでは2位という結果をだしているポテンシャル。
圧倒的なクライミング力
2023年のツール・ド・フランス・ファムでは、象徴的な山岳ステージ「コル・デュ・トゥールマレー」での勝利が印象的でし。2024年の最終ステージにおいてもそのクライミング力を示しています。彼女のクライミングスペシャリストとしての実力を確固たるものにしていますね。
オールラウンダーとしての強み
フォレリングはクライマーであるだけでなく、平坦ステージでもスプリントで勝負できるため、どんなレースでも安定した強さを見せることができます。また、彼女のパフォーマンスは、個人タイムトライアル(TT)でも高く評価されています。しかし世界選手権ロードレースではまたも優勝を逃す。みずからレースを展開できる力のあるコペッキー選手に敗れるというところで、最終局面における集団駆け引きのなかでのイラだちなど自滅展開がみられるのも伸びしろか
2025年にむけて
移籍
主な理由は予算の制約のようですね。SD Worx-Protimeのチーム代表ダニー・スタムは次のようにコメントしている。
「これは予算の問題です。選択をしなければならず、ある時点で何かを手放す必要がありますが、私たちのチームにそのレベルの選手を2人抱えることはできないのは明らかです。」
この決定は、チームがロッテ・コペッキーとの契約を2028年まで延長した後に下されました。チームは明らかに両方のスター選手を維持する余裕がありませんでした。コペッキーをエースとして選んだということですね。
契約交渉
SD Worx-Protimeのチームマネージャー、アーウィン・ヤンセンは、フォレリングに「寛大なオファー」を提示し、回答期限を設けたと明かしました。しかし、フォレリングのマネジメントが指定された日までに返答しなかったため、チームは彼女が退団する意向だと結論付けました。
移籍先の可能性
フォレリングの移籍先として、いくつかのチームが挙げられています:
1. FDJ-スエズ: 現在、最有力候補と考えられています。スペシャライズドが個人スポンサーとしてフォレリングの獲得資金の一部を提供する可能性があるという噂もあります。
2. UAEチームADQ: 当初、フォレリングに100万ユーロ程度の大型契約を提示したという噂がありましたが、最近の報道では候補から外れた可能性があります。
女子ロードレースがさらに注目
プレヴォ(prevot)のロード復帰
MTBクロスカントリーで圧倒的な強さを示し続けたきた彼女がロードに復帰することはさらに女子ロードレースを激熱な展開にしていくれること間違いない。彼女は2024年パリオリンピック金メダリストでもありますね。ちなみに2014年世界選手権ロードレースで優勝経験もあるなど。。。
ファンデルブレッヘン(van der Breggen)の復帰
2度の世界嬢王に輝いた当時圧倒的な強さを誇った選手で現在はSD Worx-Protimの監督を務めているわけですが、2025年から現役選手として復帰します。フォレリングと同じオランダ出身で同じチームというところで、事実上の師弟関係であったわけですが、フォレリングのライバルとして復帰することになります。フォレリングのSD Worxからの移籍は実はこれが最も影響しているのだろうと思います。