東京ムカデ 第32話
第32話
母と訪れている箱根の温泉宿。
リクライニングシートが並ぶ、くつろげるリフレッシュルームというスペースで景色を眺めながら館内着の浴衣姿でリラックスしていた寄子。
大きな大きな窓から景色を楽しむ。綺麗な木々のみどり。青空をゆっくり白い雲が流れる。
(国やぶれて サンガリア・・・)
うとうと、、としかけて、パッと顔を左に向けると様々な人が自分と同じように横になってリラックスしている光景が広がる。
老夫婦、若い女の子同士、親子、
そしてー。同じ列の1番反対側の席でくつろぐ若い男性の横顔が目に入った瞬間、心臓が止まりそうになった。
(えっ??森育三郎に似た子がいる! 似ている、まさか、ないない)
慌てて一旦顔を正面にもどす。
もう一度なるべく顔は正面に向けたまま、目だけギョロッとさせて確認を試みる。
🎵チャチャチャ 〜〜 チャチャチャ〜〜ッ
チャッチャッチャッチャッ チャッチャッチャッチャッ スッチャッ🎵
火曜サスペンス劇場のあのメロディが脳内に流れる。
自分をパッとみると、火サスにありがちな浴衣をたまたま着ていることに自分で笑う。 いやそんなことはどうでもよい。
変な汗が出てきて、鼓動が一気に速くなる。
(落ち着け、落ち着くんだ寄子、とうとう幻覚でも見るようになったか。)
つづく
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