島 絵奈
あらすじ: 大学で事務員をしている寄子。淡々と平凡な毎日を送っていたが、ある1人の大学院生の男の子に惹かれる
平凡な主婦、頂(いただき) 菊子は優しい夫、マスオと2人暮らし。菊子のみた不思議な夢や家族の回想、幼いころの回想、母の回想、父の回想、ふと菊子が思い出した思い出や何でもない日常のお話を綴った小説。
第1話☆ ポカポカと太陽が暖かいある春の日曜日。 百足(ももたり)寄子は、自宅ベランダでお気に入りの多肉植物に水をあげていた最中、その場にへたり込んでしまった。 植木鉢のかげに何か動く物の気配がして、鉢をずらしたそこには、小さいムカデがいたのだ。 「ハッ」 驚きの声ともため息ともつかない声が思わずこぼれ、寄子は甘酸っぱい初々しい恋ごころの思い出があたまをよぎった。 数年前の寄子41歳の夏。 大阪から東京に出て来て早10年、大学の事務員として働いていた寄子は、 「パッとしない
少し前から、宇宙に興味を持って少しずつ調べたりしていたところに、世界初!巨大ブラックホールの撮影に成功!のニュース。 「巨体ブラックホールの謎」という本を読んでいます。 そもそも物理や難しいことはいっさい苦手。 でも日常の生活で当たり前と思っていたことが、読んでいるうちに不思議に思えたり奇跡に思えたりしてきました。 普通に地面に立ったり寝ていることも地表に引っ張られているからなんて、なかなか考えないですもんね、、 巨体ブラックホール、、1つの銀河に必ず1つ。光速より
第40話 ・・月日は流れ数年後の春。 寄子は、ベランダで鉢植えに水をやっていたとき小さなムカデを見つけ、一気に色々なことを思い出していた。 「ちょっと、長い時間ベランダで何してるの⁇」と、寄子に話しかけるものがいた。 あまりにベランダから出てこない寄子に声の主が覗きに来たのだ。 呼びかけに、ハッと我に帰る寄子。 「ムカデいた!ヤスデ?ムカデ!なんでいるのよ!」 「春先から夏にかけてはしょうがないでしょ!」 ニコニコして寄子の方をみているのは森育三郎だ。 山あ
第39話 育三郎が留学⁇ とにかく何も確認せずに気がついたら駅まで全速力で走り、電車に飛び乗り、空港方面へ向かった。 とりあえずゼーゼー言いながら、少し落ち着きを取り戻したところで(あれ?飛行機はどこ行きで何時なのかもわからないじゃない)と気づいた。なにをしているのだ?自分は。 そして寄子は、自分が思っていた以上に育三郎が大きな存在になっていたことを思い知ったのだった。 しばらくして息を整えてから、思い切って育三郎に電話をかけてみた。 ワンコール ツーコール
第38話 まだ夏休みが続く大学の事務室。 仕事もそれほど忙しくなく、寄子やるり子、上司の富田は普段は時間がなくて出来ない資料作りや資料整理をしていた。 学生もほとんど事務室に訪れることもなく、るり子の合コンへ行ってきた話や富田のどこの激辛ラーメンが美味しかったとかいう話題で盛り上がり、和やかに時間がすぎていた。 育三郎はどうしているだろうか、、と寄子は時々考えたが、もうこの夏休み期間に色々あったこともだんだんフェードアウトしていった方が楽かな?とも思っていた。 午後
第37話 温泉旅行から戻った寄子。 夏休みのため、まだゆっくりと過ごしていた。偶然と言うにはあまりにもありえなさすぎる育三郎との遭遇に、混乱がしばらく続いていた。 (誕生日は9月か、、) 育三郎の誕生日を、聞いてしまった寄子。 例えば何かプレゼントを考えて、渡したところで何になるのだろう。 しかし、(ブローチのお礼にと何か渡すのも、別に変じゃないよね・・・ )と、色々ああでもないこうでもない、と考えを巡らせる寄子。 いったい自分はどうしたいんだろうか⁈ (い
第36話 温泉宿で、偶然にも育三郎とバッタリ会った寄子。 育三郎は、海外から観光に来ていた友人達と来ていた。 話の流れで、皆で館内のレストランでお茶を飲むことになり、その夜は和気藹々と楽しく過ごしたのだった。 「明日も、観光?」と聞くと育三郎たちはもうしばらく箱根を楽しむのだという。 「今日はありがとうございます!みなさん箱根を楽しんで下さいネ!」 「百足さんは、お母さんと⁈もう明日お帰りですか?」 「そうそう。大阪から来てるからね! 森くんは夏休みまだこれから
第35話 ポンポンっと肩をたたかれ、恐る恐る振り向くと、そこには、、。 「えー? やっぱ百足さんだ! なんでなんで? なんでいるんですか?」 そこにはビックリした表情の森育三郎がいた! 「ヒィ〜〜」 寄子は軽くパニックになったが、瞬時に、育三郎がもし恋人と温泉に来ていた場合、腹をくくらねば!と色々な事を考えた。 「母と来ているのよ〜! すごい偶然ね」 と育三郎の方をちゃんとみると、育三郎の横に外国人らしき男性が2人、ニコニコして立っている。 「そうなんですか?
第34話 育三郎らしき人影を追って、壁から宿のロビーあたりを覗き込む寄子。 たくさんの人が、ソファでくつろいだりカウンターで手続きをしたり売店を見たりしている。 キョロキョロする寄子。 (やはり、幻だったか! 疲れているのか) それらしき人物がいない・・。 そういえば母親をほったらかしにしている。 ちょっと落ち着こう、ソファに腰をよっこらしょと下ろしてボーっと人の行き交う姿をしばらく眺めた。 その時、うしろからポンポンと誰かが寄子の肩を叩いた。 ⁉︎ ひ
第33話 温泉宿のくつろぎスペースで、育三郎らしき人物を見かけた寄子。 (いや〜 そんな、たまたまにしても同じ時期に同じ宿にいるなんて偶然あるわけない! ドラマじゃないんだから!) ありとあらゆる妄想が寄子を襲う。 (はっ。 もしそうだったら誰と来てる? え? 1人でこんなところ来ないでしょ) 🎵チャチャチャ〜〜 チャチャチャ〜〜〜 ティラリラティラリラ ティラリラティラリラ ズンズンズンズン ズンズンズンズン チャチャ!🎵
私は、無宗教ですがなくなった父は仏教の信仰心が強くて 滝修行やお加持もしていました。 でも全く私は関心がなく、14歳のときに一度だけ私の名前をある観音様からつけたと父が言っていたのをはっきり覚えています。 ちなみに兄の名前にも観音様の漢字がついています。 そのとき、熱心に名前の由来を語っていたのですが、なんと言っていたのか全く思い出せない。。漢字と観音様で検索したら、これかな?っていう仏さまは見つかったんですが、とんでもない秘仏様で!あまりにもパワーが強力で、ご住職様も
菊子は、黄色い色が好きだった。 名前に菊がつくからというわけではないが、職場なんかでも「黄色が似合う」と言われ、派遣期間がおわり職場を去るときなどは、黄色をベースにした花束をもらったり、黄色いハンドタオルをもらったりした。 黄色。 黄色は幸せの色なんだろうか?? 幸せの黄色いハンカチっていうけれど! 黄色い色で思い出すのは母のことだった。母は、とにかく洋服が大好きで、鮮やかな花柄のワンピースドレスを買ってきたときには皆驚いた。 年よりもずーっと若く見えたし、またフ
第32話 母と訪れている箱根の温泉宿。 リクライニングシートが並ぶ、くつろげるリフレッシュルームというスペースで景色を眺めながら館内着の浴衣姿でリラックスしていた寄子。 大きな大きな窓から景色を楽しむ。綺麗な木々のみどり。青空をゆっくり白い雲が流れる。 (国やぶれて サンガリア・・・) うとうと、、としかけて、パッと顔を左に向けると様々な人が自分と同じように横になってリラックスしている光景が広がる。 老夫婦、若い女の子同士、親子、 そしてー。同じ列の1番反対側の
第31話 久しぶりに母とゆっくり時間を過ごした寄子。 母はポジティブであっけらかんとした性格で、今回将来のことを色々言われるかと思っていたのだが、ほぼそんな話は出ず、今ハマっているドラマの話題や寄子の2つ年上の姉、みきの家族の話題を楽しそうに話すのだった。 寄子の姉、みきは寄子とは正反対で社交的な性格。これまたポジティブが服を着て歩いているような人で、エアロビクスやズンバなどのインストラクターとして色々な国をまわり、今はモルディブで出会った男性と結婚し15歳になる息子がい
第30話 「あー癒されるね〜!」 寄子は母春子と箱根の温泉に来ていた。 腰が痛い痛いという母のために人気の温泉宿、「天恵園」を予約した。 ここの浴場は露天風呂もかなり広く、綺麗な山並みを見ながらゆっくりお風呂につかれて快適であった。 食事処も美味しく、リフレッシュルームといって景色をみながら読書をしたり、イヤホンで音楽を聴いたりできるリクライニングシートが並ぶ部屋があった。 夕食のあと、母春子がもう一度温泉に入ってくるというので寄子は 「じゃあ私、下のロビー行っ
それからしばらくして、大学は夏休みに入り寄子たちは出勤はするものの交代で休みを取ったりし、学内もグッとしずかになった。 どうしているかな、、と寄子は育三郎のことが時々気になったが、考えてみれば付き合っているわけでもなく、友達というには年も離れている。 でも、ちょっとしたきっかけがあり生まれたこの奇跡のような交流は当然寄子の人生においては大事件だった。 来週は寄子の母が上京し、温泉でも行きたいというので箱根に一緒に行くことになっていた。 (また、いい人いないの?とかそん