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東京ムカデ 第16話

第16話

るり子と学食で昼食を取る寄子。

フッと顔を上げて広い食堂の端の方に目をやった先に、育三郎に似た学生が座っているのが見えた。向かいには男子学生、育三郎らしき子の横には、女子生徒が座っていて、何やら皆で楽しそうに盛り上がっておしゃべりしていた。


寄子は、急に電気が消えたように真っ暗な気持ちになり、(なに、これかっこ悪い。1人で思って、1人で落ち込んで)(また、いつもと同じよ!心惹かれる人ができたって、結局何もなかったかのように忘れ去って・・・。ましてや、あんなに年下の、私、疲れてるのよ!)と思い沈んだのだった。早く何事もなかったように、日常に戻りたいとも思った。

るり子が寄子とは真逆の明るい様子で、「アイス食べようかなぁ」なんて話している。

☆☆☆
育三郎の方は、相変わらずアルバイトやレポート、仲間との付き合いに忙しい毎日を過ごしていた。
時々は寄子の家で食べた肉じゃがを思い出して、(あれ本当に美味しかったな)、なんて思い起こしたりもしていた。
そして、彼も彼で(なんでわざわざ、家まで行ってみたんだろう?)
(そもそも、事務室のカウンターのところで、防虫剤置いとくといいですよ、って口で言えばよかった話じゃない?)
と、思い返せば不思議な行動をした自分に戸惑いも覚えているのだった。
(あの人、おっちょこちょいそうだし、なんか助けてあげなきゃいけないような雰囲気だもんな)(もしかして、気に、、いやいやだってずいぶんと年上でしょ?)


もちろん、育三郎には恋人がいたこともあるし、穏やかでいてサバサバしたところもある性格。モテなくはなかった。しかし、最近は男友達といたり、1人でいる方が気楽だ、なんて考えていたのだ。

育三郎は自分の心もよくわからないまま、確かめることもないまま、またこの出来事をとくに友達にも話さないまま、、(仲の良い友人には話しかけたのだが)

ずるずるっとまた日常の中に引っ張られて戻っていった。

つづく

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