東京ムカデ 第8話
第8話
森育三郎は、長身で爽やかなルックス、ペチャクチャ喋るタイプではなかったが、それなりに人気のある学生だった。
女の子と楽しく話したり、合コンに行ったりするよりは、研究書を読んだりする方が好きだった。
(ほんとに変わった名前だな、しかも家にムカデが出るって 笑)
特に寄子に興味を持ったわけではなかったのだが、インパクトにある名字と、人の良さそうで純粋そうな寄子には好感を持てだのだった。
いきなり、電話番号の書いた紙を渡されて確かに戸惑ったのだが、素直に(ああ、相当ムカデで困っているんだな)という風に解釈したのであった。
(時間があるときに見に行ってあげてもいいな)と思って、それ以上深く考えることもなかった。
とくに、深い意図もなく、シンプルに物事をとらえてしまう、 そういうあっけらかんとしたある意味ピュアな一面も育三郎の魅力の一つであった。
しかしある意味、こんな性格が女性にとってはやっかいなのかもしれない。女性は、こういういたってシンプルな男性側からしてみると単純な理由からくる行動を、(これは何か深い意味があるのでは?) なんて、ついストーリー仕立てにしてしまったりする事もあるのだ。まあ、その人それぞれの性格にもよるかもしれないのだが。
とにかく、育三郎はとてもシンプルな思考の持ち主であったのだ。
いや、特に若い女の子からは「それ考えなしに動き過ぎでしょ」なんてダメ出しがきてしまいそうな性格とでも言おうか。
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