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惑星ホタル 3

菊子の育ったところは、のんびりとした田舎のほうで、家は村の自治会館だった。自治会館といっても当時は木造平屋建て、半分が自宅で半分が村の集まりや、三味線や書道、詩吟教室につかわれる会場であった。

平屋の建物に添うように大きな火の見櫓がそびえ立ち、そこからひょいっと屋根に飛びのれたので、菊子はよく屋根に上って叱られた。

ちょっと高台になっている家の真ん前には菊子も通った小学校があり、家の前から校庭が見渡せた。

庭には、お地蔵様、愛宕さまがまつられていて灯篭、狛犬もあった。そんな環境だから、小さい頃からとにかく神様にお祈りする習慣はついていた。すぐ隣はそろばん教室で、同じく木造の家から夕方になると「願いましては・・」という声やそろばんが弾かれる音が聞こえてきた。そろばん教室の帰りに生徒達が勝手に庭で遊んでいたりしたし、なにより目の前は小学校。色々な学年の友達がたくさんできたのだった。

小さい時は、こんな変わったところにいるのが嫌だと思っていたのだが、今思い返してみると、毎日色々あって楽しかったなぁと思う菊子であった。

村の会場なのだから、常に人の出入りがあったし、夏は地蔵盆、秋は山車をひいて村を練り歩くお祭りの拠点になっていた。とにかく人とのコミニュケーションが盛んな環境だったのが、今思うとありがたかったなぁとも思えるのだった。

ときが経ちすぎると、思い出というのは細かいところまで記憶が曖昧になっていってしまうものだが、カフェで1人ボーっとしたりしていると、最近はどんどんそんな昔の思い出の中に潜っていってしまったりするのであった。


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