東京ムカデ 第15話
第15話
あれから数日経って、とくにそれから何事もなく、いつものありきたりな毎日を寄子は過ごしていたのだった。
もちろん、寄子にとっては奇跡の大イベントともいえる育三郎の訪問はずっと頭の中から消えるはずもなく、時々あれは現実だったのだろうか?としばらく考えこんだりしたのだった。
仕事中も、気づくと事務室に入ってくる学生が、彼ではないかと思ってしまったり、妙に自己嫌悪に陥ってふさぎ込んでしまったり。
そんな時は、やたら明るい職場仲間の富田の「カカカカ・・」という笑い声や、伊坂るり子の『どのコンビニのおやつが美味しい、新商品のあれが美味しい』などというたわいもない世間話が、救いになったりした。
その日、いつも昼食は自分でお弁当を作ってきていた寄子だったが、朝少し寝坊したので用意がなく、学食に行こうとしたところ、「百足さーん、待って!珍しい!食堂?一緒に行きましょう」るり子が追いかけて来たので一緒に行くことにした。
そこそこ混雑している学食。1人が好きな寄子には苦手だった。
伊坂るり子はカレーライス大盛りに、まだおやつを用意するくらいの食欲。
寄子は卵とじうどんを注文した。
つづく
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