真の豊かさに氣付け
(中学生向け極意塾:今の私が中学生だった私にアドバイスするというシリーズを掲載しています。)
大事な話だから、丁寧に書く。
私は少年の頃、自分の家は学校一貧しい最低の家だと思っていた。
もともと8畳と6畳の二間だけの、馬小屋に使われていた材木を使った小さなあばら屋に小屋を少しずつ付け足したような粗末な家で、電気も無く、灯りは石油ランプで、そこに多いときは親子7人に老夫婦2人の9人が住んでいた。
水道も無く、井戸から水を汲み、薪で風呂を湧かすのは子どもの仕事だった。
私はこの田舎の貧乏な暮らしが嫌で嫌で、裕福な家、都会の洒落た生活に劣等感を感じ続けていた。
ところが、今は真逆の感じ方をしている。
近所に周囲を壁で囲った都会の大豪邸(?)を見てしみじみ思ったよ。
「柿の木があるな。でもわが家には柿の木は8本あったなぁ……。梅の木もキンモクセイもスモモもあったなあ、それもこんなに狭い所にではなく、広々とした所に……」
「広くて20メートル四方くらいあるかな。わが家は垣根なんて必要なかったなあ、東に250メートル、西に250メートル、南に400メートル、北に100メートル、このエリアは自由に遊べたし、その中には道もあったし、田んぼがあって冬には野球をやったりしていたし、フナ釣りもしたし、ドジョウ取りもしたし、蛍が何百匹となく飛んでいたし……」
「外灯があるなあ……わが家には電気が無かったから(笑)、外灯なんてあるわけがない。周囲に家もなかった。だから夜ともなれば真っ暗になった。月がものすごく明るかった! そして星! 天の川が綺麗に見えた! 目がことのほかよかったから七等星までくっきりと見えた! 百万ドルの夜景なんてよく言うけど、あの星空に匹敵するものなんて有るの?……」
「そう言えば、イギリスのケンブリッジに行ったとき、C博士の自宅にお邪魔した。その時、裏のイングリッシュガーデンを見せてもらったなあ。野菜とか花とか栽培していた。井戸もあった……わが家には畑があった。野菜も花も作っていた。どっちが広い?……断然わが家のほうが広いじゃん! 離れていたけど田んぼだってあった! それに、自分の家の所有ではなかったけれど、東西500メートル、南北500メートルの空間で、わが家同然に自由に動き回っていたじゃないの! 持ってないけど有る! その豊かさを享受しまくっていた!……」
「まてよ、家が狭いと思っていたけれど、あのスペースで飲食も寝るのも十分だった。火を炊いて鍋など沸かしていたから、あれなら狭い方が熱効率がいい! 家族が何をしているか全部わかっていた。」
「まてよ、畑があったから、食べていたものといえば、土地の物、季節の物、採りたての物、添加物皆無の物、それか漬物で、買っていたのは納豆とか豆腐とか、そんなものばかりだった……これって、とてつもなく豊かな健康的な食生活じゃん! 水もナチュラル・ミネラルウォーターだったし(笑)」
子どもの時、嫌で嫌でたまらなかった貧乏暮らしが、実はとんでもなく豊かな、都会のセレブが泣いて喜ぶような贅沢な暮らしだったのだと、意識が大逆転した。
まさしく、ひとりパラレルワールドだ(笑)。
ただ、私は氣付くのに時間がかかりすぎた。
もっと早く氣付けなかったか、中学生のうちにそのようにとらえることはできなかったか!……そう思うのだよ(笑)。