事前対策:「生き直し」ゲームの実際(21)「事前対策の達人」
(事前対策の達人がいたとしたら……、物語の続きです。)
この事前対策達人のおじさんに、中学生のわたくしは冬のマラソン大会でいい成績を収めたいと相談しました。
すると、おじさんはしばらくじっと考えていましたが、
「それは本氣か?」
と聞いてきました。
「本氣だよ!」
と答えると、
「俺は走ることは素人だが」
と言いつつ、おもむろに紙に何か書き出しました。
それには、5か月先のマラソン大会に向けたトレーニングメニューが記されていました。
・そのコースを1週間に1回歩く。これを3回行う。走ってはいけない。
・次にこれ以上遅くは走れないスピードで1週間に1回走る。これを2回行う。
・次にそのスピードでそのコースを2往復走る(16㎞。中学生にはきついぞ)。
・次にコースを四つに区切って、一箇所だけ全力で走り、あとは軽く流す。これを4回やる。
・次に前半全力、後半流し。その次前半流し、後半全力で走る。これを2回やる。
・次に、上り坂、下り坂のところを集中して走る。……
こんなメニューが書かれていて、さらに、
「お前、陸上部の先輩がいるだろう。その先輩のうち、尊敬している先輩で今も陸上をやっている人にこの方法がいいか訊いてみろ。」
「レースの走り方の作戦は俺は知らん。そういうのはその先輩に訊くんだな。」
「あっ、それから、このメニュー、何かひとつでもできなかったら、それはお前が本氣じゃないということだから、その時点でやめろ。そうしないと故障するぞ。」
と言われたのでした。
なるほど、ほとんどが砂利道の8㎞のコースを走るのに、まずは土台を作り、徐々にスピード練習を入れる……家を建てるのに似た感覚だなあと恐れ入ったのでした。
わたくしは、この「事前対策おじさん」に多大な影響を受け、この人を凌ぐ「事前対策の達人」になろうと志したのでした。
※※※
(物語終わり)(極意塾投稿No.468)
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