誹謗中傷に打ち克つ極意:うちやっておけ理論(2)
【勝海舟は誹謗中傷に対してどうしたか】
誹謗中傷にどう対処するとよいのか、その実例でほとほと感心するのは勝海舟のそれです。
福沢諭吉が、勝海舟の幕末の行動を徹底的に誹謗した『痩我慢の説』なる小論を書いて、公にしてよいかと勝海舟に尋ねています。
それに答えて、勝海舟は福澤諭吉宛に、あっさりした書簡を送っています。
その中に、「行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与(あずか)らず我に関せずと存じ候。」との有名な句があります。
「自分がやったことは自分のこと、それを他人様がけなそうが誉めようが、それは他人様の主張で、自分に
はどうしようもないし、自分には関係のないことだと思っております。」とまあ、こんな意味でしょうか。
要するに、勝海舟風に言えば「うちやつておく」、すなわち、抱え込むことなく、自分は何にもしない。
自分は何にもしなくても、誹謗中傷する人だってたちまち別の人からの誹謗中傷に晒されます。
それを高みの見物と洒落込む、いや、それすらもせず、あとは天地に任せて何にもしないでうちやつておく……これが誹謗中傷への一番賢い対処法のようです(笑)。
※ 勝海舟から福澤諭吉宛の書簡の全文です。
いにしえより当路者(とうろしゃ)、古今一世の人物にあらざれば、衆賢の批評に当たる者あらず。計らずも拙老先年の行為において御議論数百言、御指摘、実に慙愧(ざんき)に堪えず、御深志かたじけなく存じ候。
行蔵は我に存す、毀誉は他人の主張、我に与(あずか)らず我に関せずと存じ候。各人へお示しござ候とも毛頭異存これなく候。おん差し越しの御草稿は拝受いたしたく、御許容下さるべく候なり。
二月六日 安芳
福沢先生
(極意塾投稿No.256)