わかりやすく話す(6):大事なことを語る
大事なことを語れば話はわかりやすくなるという話です。
例えば、「◯◯さんの講話の感想を短時間でシェアする」というときに、言葉数は多いのに大事なことが少しも語られず、印象の薄いスピーチを聞くことがあります。
例えば、
「今日は▲▲さんから◯◯さんの講話だと聞いて参加しました。こちらの会に参加するのは初めてです。□□に住んでいますので結構時間がかかって大変でしたが、みなさまどうぞよろしくお願いいたします。」(……それはご苦労様で。)
「僕は、▲▲さんとは、学生の頃からの友人で、別の会で長らく一緒に勉強しています。」(▲▲さんとの関係? それって今日の話と関係ないけど……)
「僕が◯◯さんの講話を聴くのは、2回目ですが、あっ、3回目かな?」(何回だろうとかまいませんけど……。)
「前に聴いたときもそうでしたが、いつ聴いても素晴らしいですねぇ。感動しました。」(どの点に?)
「今日も素敵なコーディネイトで目の保養にもなりました(笑)。」(ほめるなら話の中身について言ってくれよ……。)
「今度はぜひ△△のほうにも来ていただきたいと思いました。どうぞよろしくお願いいたします。」(そういうことは個別に言えば? それで講話の感想は?……)
「本日はありがとうございました。」(感想が語られてませんけど……)
このようなスピーチを多く聞くのですが、感想をシェアしましょうという趣旨なのに、中途半端な自己紹介とピントのずれたコメントばかりで、聴いてよかったという満足感が生じません。
大事なことを語ると、例えばこうなります。
「今日の◯◯さんのお話で私がいちばん感動したのは、そっくりだよと言われていた、大好きだったお婆さんが、実は血の繋がった人ではなかったと最近知ったというところです。戦後の混乱の中で、他人の子を育て上げたお婆さんの深い愛情、そしてそれを受け止めて『血じゃないんだよね、心なんだよね、おばあちゃん』とお墓の前で手を合わせて涙する◯◯さん! 人と人との繋がりを深く考えさせられ、胸が締め付けられました……。こちらへは初めての参加でしたが、来て本当に良かったです。どうもありがとうございました。」
例えばこのように語られると、どういう感想を持ったのか、とてもわかりやすくなりますし、語った人についての興味が湧きます。
両者の違いはさまざまあるでしょうが、その核心は、大事なこと、すなわちここでは講話の感想を語っているかどうかの一点でしょう。(極意塾投稿No.400)