✉️それはまるで漂う真っ白の雲のような
こちらの流れをお借りしています。
▼お借りしました!
とわさん宅:フラノメリィさん
フラノメリィ。
快晴の日の雲みたいに真っ白な少女は、静かにそう名乗った。人に慣れていないのか、少し震えているようにも、しかしどこか、何かを決意しているようにも見える。
それが何なのかイゼットには分からなかったが、彼女のその態度に不機嫌になるわけもなく。
「フラノメリィ……じゃあ、メリィだな!」
「え、あ……」
にかっと笑ってさも簡単に愛称呼びをするイゼットに、フラノメリィは少し困惑しているようだった。しかし否定の言葉が返ってこない様子を見て彼はよしっ、と一声し、彼女の視線に合わせて屈めていた背をぐぐっと伸ばした。
その差は、40cmはあるだろう。年齢も身長も、ちょうど妹と同じくらいだろうか。なんとなくそんな風に思って、なんとなく、放ってはおけなかったのだ。
それにこの手紙を、フラノメリィは『出さないことにした』と言った。こんなに丁寧で、思いがこもっているのに。それが、イゼットには少し寂しく思えた。
届かなくてもいい手紙なんて、存在しないと思っているから。
「メリィ。これから少し時間あるか?」
「……えと、ある……けど……」
「じゃあ、少しオレに付き合ってくれ」
伸ばし掛けた手は慌てて引っ込めて、そのまま頭上へ。ぽんぽんと被っていた帽子を叩くと、頭上にいたピピは何かを察したように、やれやれと言わんばかりの様子で空へと飛びあがる。
同時に、パートナーたちが入っているモンスターボールを全て宙に放った。
次々に飛び出すポケモンたちに、フラノメリィはかなり困惑―――否、怯えている様子だった。しかしイゼットがそれをするのは、彼女を怖がらせるためではない。
「ピピ、ナハト、アルバ。これからしばらく遊んできな。ラオはオレのこと手伝ってくれ」
パートナーたちにそう言うと、きょとんとしていたり反論するように一声したりと様々な反応を見せたが、全てまとめてピピが一喝し、彼女と共にナハト、アルバは空へ飛び立っていった。
ラオは伸ばしたイゼットの腕へと留まる。そして後ろのフラノメリィを見つけると、小さくビャッと一声して顔を引っ込めた。
「……あ、あの……?」
後ろからオドオドした様子でフラノメリィが声を掛けてくる。近付いてはこない。ピピに反応していたから、他のポケモンが怖いのか……と思っていたが、やはりその通りだったらしい。
「ごめんごめん。こいつはタイカイデンのラオ。めちゃくちゃ人見知りでさ、人慣れ特訓中!」
腕を振ると、ラオはふわりと飛び上がってイゼットの頭上を滞空し始める。それを見て満足そうに笑うと、またフラノメリィの目線に合わせて姿勢を低くした。
「オレ、これからこの街の人たちに手紙とか荷物とか配達していくんだよ」
「う、うん」
一度彼女から視線を外して、その腕に抱かれているサニーと、近くに座っているルーナに目線を配る。サニーはぱたぱたと尻尾を揺らして楽しそうに、ルーナは少し不機嫌そうにそっぽを向いたままだった。
それでも、イゼットは楽しそうに笑っていた。
「その人のこと探そうとか、手紙届けようとか、やっぱりやめとこうとか、一先ず考えなくていい。だから、オレが配達した人たちの顔を……表情を見てて欲しいんだ」
「それって、どういう……?」
首を傾げるフラノメリィに、イゼットはもう一度、今度はしっかりと手を差し出した。
「メリィ。配達、一緒に手伝ってくれるか?」