✉️なんだか妙に気恥しい
▼お借りしました!
よねこさん宅:シャオロンくん
かなりあさん宅:メイメイさん
「どうもー!お届け物です!」
中に食材諸々が入った大きな段ボールを軽々と抱えて、元気に明るく挨拶をする。営業中の店の扉の先では、届主の一人が客から注文を取っているところだった。
王飯店。イゼットがここにくるのは初めてではない。もちろんバトルレストランだということも知っているし、この光景も見慣れたものだ。
届主———シャオロンは自分の声に気が付いて、人当たりの良い笑顔で振り向き、お疲れ様、と声を掛けてくれる。
「ロンさん!お疲れ様です。荷物は奥でいいっすか?」
「ああ、いや」
店と客の邪魔にならないように出来るだけ隅の方を通って、イゼットは指示された場所へと荷物を運ぶ。店中に美味しそうな匂いが漂っていて、ここに来る前に食事を取っていたにも関わらずお腹が空いてきそうだ。
というのも、空腹の状態で店に訪れた日にはその匂いに誘われ食事を堪能してしまうし、バトル好きなイゼットは周りでそれが行われているのを目にしたら我慢が出来なくなってしまうのだ。
今日はただでさえいつもより少し配達物が多いため、せめて我慢を持続させるためにも腹に食事を入れてきたのだ。
「よっ……と」
膝を折って屈み、荷物を傷付けないようにそっと床へ置く。美味しそうな匂いと楽しそうな声にうずうずするものの、首を小さく横に振って立ち上がろうとした瞬間、背後から声が掛かった。
「配達ご苦労様!今日はちゃんとご飯食べてきたの?」
その声が届主の一人であるメイメイだということはすぐに認識が出来た。彼女は自分が時折食事を疎かにすることを心配してくれているのだろう。
立ち上がるより先に振り返って、
「はい!メイさんの料理も捨てがたいっすけど、今日はちゃんと」
そこまで言って顔をあげれば、自分を覗き込んで優しく微笑むメイメイの姿が目に入った。
ぽんぽん、と、帽子の上からではあったが、まるで甘やかされるように頭を撫でられる。予想外のことに一瞬思考が止まり、きょとん、としたまま動きも停止した。
その行為の理解が及んだ時には、言いようのない気恥しさから顔に熱が溜まっていくのが分かって、慌ててそれを隠すように帽子を下げた。
自分でも驚くほど小さな声でどもったあと、勢いよく立ち上がり、
「ありがとうございました!またいつでも呼んでください!」
決まり文句を置いて、逃げるように店の外に飛び出した。
外で待ってもらっていたパートナーのナハトに飛び乗ってぽんぽんと背中を撫でると、彼女はゆっくりと空に飛びあがる。
「……はーっ……び、っくりした……」
息を吐いて、呟く。
子供扱い、というよりは、弟のように扱ってくれたことは分かっている。実際、彼女の弟であるシャオロンとは年もさほど離れていない。のだが。だからこそ。
「……慣れねぇなあ……」
弟二人妹二人を持つ長男であり、長身であるイゼットは、頭を撫でられることは疎か甘やかされることにとんと慣れていないのだった。